PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭に行ってきました♪

00[text and photo by 松田 順子、中野 昭子(IHIエスキューブ Art inn編集部)] 2015/3/31 UP

PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭 に行ってきました♪

PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭 公式WEBサイト:http://www.parasophia.jp
会 期: 2015年3月7日(土)–5月10日(日)

 

 PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭は、古都・京都で現代アートを展示するという企画で、過去に開催された京都ビエンナーレを引き継ぎ、再構築するという意味合いも含む祭典です。  展示場所は複数ありますが、平安神宮が目と鼻の先のメイン会場、京都市美術館に作品が集結しており、他会場も京都の中心に近い場所にあるので、一日でかなりの数を見られるようになっています。

 また一つ一つの作品のスペースが十分にとられているため、集中して鑑賞することができるというのも優れた点の一つです。

 作品は全て、国も歴史も言語も異なるさまざまな問題を垣間見せながら、理知的かつ先鋭的な場を構成していたように思います。以下、メイン会場である京都市美術館を中心に、印象に残った作品をご紹介します。


京都市美術館

01

[★ 【国名/作家名/作品名・制作年】 中国/蔡國強(ツァイ・グオチャン)/《京都ダ・ヴィンチ》 2015

(中) 竹で組まれた塔は京都近郊でとれた竹をつかっており、長安にある大雁塔に似せているそうです。塔にぶら下がっているのは、子供たちがつくったロボットやUFOたち。塔の足元にあるラジコンロボットは、中国の農村でつくられています。それらがアートかと言われれば微妙ですが、発明品をつくるのにも似た好奇心と、つくる喜びが感じられました。ロボットによるペインティングも面白かったですね。

(松) 会場に入ってまず目に飛び込んでくるのがこちら。一番広い中央のメインフロアをダイナミックに使っておりWelcome感満載でw

 傍らのロボットたちが、たっぷり電力チャージしてからコトコト動きだし。聞けば、J.ポロックやD.ハースト、Y.クラインなど美術界の巨匠たちが制作する際の動きを模しているそう。ゆる~い感じで良かったなぁ。

 

02

[★ 【国名/作家名/作品名・制作年】 南アフリカ共和国/ウィリアム・ケントリッジ/《セカンドハンド・リーディング》 2013 

(中) プレイベントの作品『時間の抵抗』では、歴史と国境を意識させる強固な世界を提示したケントリッジ。今回は書物の中で、言葉と人物が浮かび上がる作品で、落ち着きのある会場の雰囲気と合っていたように思います。  作品の中で、最初は書物の文章を読もうとするのですが、人物が動き始めると、目はついついそちらを追ってしまいます。また大きな文字が出てくると意味を考えてしまい、集中すべきよりどころを失って、たびたび迷子になるような気がしました。

(松) 今回の作品は、個の内側に向かうような世界観でしたね。  直接一冊の辞典にドローイングされており、パラパラ漫画の手法で作成された800ページに及ぶ本作では、 作家自身と思しき男が、何かを考えながらひたすら歩き続ける様子が映し出されます。  思考が移り変わる作家のあたまの中を覗いてしまったようでした。

 

03

[★ 【国名/作家名/作品名・制作年】 ノルウェー/アン・リスレゴー/《神託、フクロウ……ある動物は眠らない」「ドゥバド、ドゥバド》 2012-14

(中) 「神託、フクロウ……ある動物は眠らない」は、フィリップ K. ディックの著作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」がモチーフとなっています。フクロウが「易経」の予言や格言を語り、時折目を閉じる姿は、未来を知る智者にも、また意味不明のことしか語らない愚者にも見えました。  「ドゥバド、ドゥバド」は川又千秋の著作「幻詩狩り」を下敷きとした作品です。「幻詩狩り」で語られる、詩が時間を、ひいては世界を変容させる様子が、硬質な映像で再現されていました。(「幻詩狩り」にはフィリップ K. ディックも詩の中毒者として登場します。)  言葉は連なりを切って単語になった時、聞き手や読み手の意識に浸透し、インスピレーションを与えることができます。アン・リスレゴーの作品を見るという行為は、作者が言葉の海の中で拾い上げたイメージを経験し、そこから鑑賞者自身のイメージを広げ、現実の奥のものごとを幻視することでもあるのです。

 

04

[★ 【国名/作家名/作品名・制作年】 アメリカ/ブラント・ジュンソー/《Liebespaar》 2015

(中)冷たいガラスケースに入れられた彫刻は、大型の博物館の地下にある、過去の彫像の一部のような印象です。この二つの像はカップルだということですが、ガラスと空間、そしてケースを隔てた鑑賞者によって、つながりを幾重にも断絶されているように感じました。

(松) 人体のトルソにしては平べったくて大きいので、私は最初、クジラやダイオウイカなど巨大な海洋生物の骨のように見えました。   隣どうしにあるのに、決して空間を一緒にしない様がやるせなく、どこか悲恋のような、更にはサディスティックな印象さえ受けました。


05

[◆ 【国名/作家名/作品名・制作年】 ベトナム/ヤン・ヴォー/《無題》 2015

(中) 床に無造作に置かれ、「ミルク」とプリントされた木箱には、ミルクが凝固してチーズかヨーグルトになったかと錯覚するような白い物体が。私はキャプションを見て、箱の中身が1~2世紀のアポロ像だと知りました。

(松) 説明を読んで初めて、これが大理石像のトルソの断面だと気付くわけです。  正体を知ってしまうと、もうそれにしか見えてこないのはなんだか残念な気もしますが、古の石造をいとも簡単に分断してしまう力技と、古代への憧憬とで多少感傷的な気分になったのは、痛痒いようで楽しかったです。


06

[◆ 【国名/作家名/作品名・制作年】 ブラジル/グシュタヴォ・シュペリジョン/《素晴らしき美術史》 2005-15 

(中) 誰もが目にしたことのある写真に落書きされているのですが、その内容がユーモアと批判精神に満ちています。写真は有名になるにつれ、被写体からも撮影者からも独り歩きし、いつしか権威にもなりえます。そうした写真の与えるイメージがいかに固定化され、また写真史がいかに鑑賞者の感覚を硬直させているかを、軽妙かつ強烈に提示されたような気がしました。

(松) うまい具合に固定化された概念をずらしていて、小気味いい作品でしたね。  誰もが元ネタを知っているからこそ、可笑しさが理解できる。  一見ラフなんだけどほどバランス感覚の良い作品でした。

 

07

[◆ 【国名/作家名/作品名・制作年】 タイ/アリン・ルンジャーン/《Golden Teardrop》 2013 

(中) 映像と電球、真鍮のインスタレーションを組み合わせた作品。真鍮のインスタレーションは、無数の涙が連結されているようで、詩的で美しい作品でした。

(松) こちらの彫刻もたいそう素敵でしたが、私は同時に展示されていた映像作品に見入ってしまいました。  15世紀から21世紀までのタイ・ギリシャ・日本のある特定の人物についての物語で、それらは「蛍」によって紡ぎ合わされています。  ごくパーソナルなエピソードから歴史の大きな流れをも汲みいれたその映像は、淡い水彩画のような印象で、なんども繰り返し見ていられるようでした。


08

[◆ 【国名/作家名/作品名・制作年】 日本/笠原恵実子/《TSR14》 2014,《K1001ʞ》 2015 

(中)K1001ʞは第二次大戦中に制作された陶製手榴弾からインスピレーションを得た作品。K1001ʞの 1001という数字は、千人針の千人と、それに対抗しうる1人を示しているそうです。K1001ʞとナンバリングされた陶器たちは、武器の形状を呈しながら、戦地に向かわず生活を支える1000と1人の念を反映しているように感じました。

 


09

[◆ 【国名/作家名/作品名・制作年】 ドイツ/ローズマリー・トロッケル/《カモフラージュ》 2006, 《ランバー》 2007, 《スクエア・エネミー》 2006 

(中) 遠目で絵画に見える作品は、近寄るとニットの大きな布。編み物の制作機械でなされているとのことで、工業という男性的な要素と、編みという女性的な要素が組み合わされています。

(松) 機械織りとのことで、表面的には単調さが否めない作品ではあります。  しかしその整然と連なったガーター編みの編み目を見るにつけ、編み物初心者としてはじめて覚えた懐かしさがよみがえり…。  さらに飛躍して、私たちの中に連綿と継がれているDNAのようなものにもみえてきたのでした。


10

[◆ 【国名/作家名/作品名・制作年】 日本/田中功起/一時的なスタディ:ワークショップ#1《1946年~52年占領期と1970年人間と物質》 

(中) 第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展での特別表彰が記憶に新しい田中功起。今回の作品は、京都市美術館が過去に占領軍に兵舎として利用された過去と、1970年に美術批評家の中原佑介が企画した「人間と物質」展を実施したことを踏まえ、高校生らと共に実施した5つのワークショップの映像。美術館の過去が、戦時中であれば徴兵されるであろう高校生と共に、これから戦争に向かう可能性のある日本の状況へとつながっていきます。

(松) 部室もしくは舞台裏のような雑然とした展示室の中で、モニターの中に映った高校生たちの眼差しは本当に真剣でした。  普段なら考えつくこともないようなテーマをこうした機会によって与えられ深く掘り下げた経験は、大人になっても消えない貴重な経験になったことと思います。

 

京都芸術センター

11

[★ 【国名/作家名/作品名・制作年】 オランダ/アーノウト・ミック/《異言》 

(中) 今回の映像作品は大企業の社内行事と現代の宗教儀式の2本で、前者は俳優をつかって撮影されており、後者はブラジルで実際に撮影されたドキュメンタリーになっています。大企業の社内行事の映像は、大規模な研修の様子から次第に狂乱を伴い、フィクショナルな映像になっていくのですが、宗教儀式はドキュメンタリーでありながら、俳優を使った映像と似た様相を呈していきます。

(松) こちらの映像作品には音声が付いておらず、次第に怪しくヒートアップしていく集団を動く絵でしか窺うことができません。  しかしながら無音にすることで、音声による迫真性、または粗・ホツレを無くし、どちらがホンモノでニセモノなのか曖昧にしているのが狙いなのだろうと思い当たりました。

 

 鴨川デルタ

12

[★ 【国名/作家名/作品名・制作年】 イギリス/スーザン・フィリップス/《三つの歌》 

(中) 複数のスピーカーから流れる歌声はハーモニーを奏でますが、川の音や風の強さ、そして聞き手の位置によって微妙にずれが生じ、作品は恒常的なものではなく、時間帯や場所に左右されることを実感させます。曲は出雲阿国らの四条河原での上演を踏まえ、イングランドの舞曲や民謡で構成されているとのこと。歌声は優しくどこか懐かしく、言葉が聞き取れなかったり、内容が理解できなくても、強く心を揺さぶる力を持っていました。

(松) 3月初旬の河岸は寒むかった。。これから暖かくなってくると気持ちいいでしょうね。

 2011年に水戸芸術館現代ギャラリーでの展示「クワイエット・アテンションズ 彼女からの出発」で彼女の作品に触れているのですが、ちょうど大雪の日で周囲が真っ白の中、美術館の外のスピーカーから彼女の静謐な歌声が流れてきて、めちゃくちゃ寒いのに、しばし聴きいってしまったのでした。 

堀川団地

13

[★ 【国名/作家名/作品名・制作年】 スイス/ピピロッティ・リスト/《進化的トレーニング(堀川―不安は消滅する)》 

(中) 天井と布団に映し出されるのは、自然の緑や人体の一部、女性や男性が浮遊する姿。天井に広がる映像は生命力に満ちていて、生まれてはじめて眼が開き、喜びをもって世界を見つめる赤ちゃんの視界はこんな感じだろうかと思いました。布団に映る人々は重力から解き放たれ、柔らかな光の中で泳ぎ渡っているようです。

(松) こちらは京都市美術館から少し離れた商店街の一角(タクシーで約12分ほど)。  ちょっと古い感じの商店の階段をトコトコ昇って畳敷きの小さな部屋へ。するとおもむろに一組の布団が敷いてあり。。  生命の起源とはこんな場所だったのかもしれません。。(?)

 

京都府京都文化博物館 別館

14

[★ 【国名/作家名/作品名・制作年】 日本/森村泰昌/《プラド美術館をテーマにしたシリーズより8点」「エルミタージュ美術館の歴史をテーマにしたシリーズより3点》 

(中) 「プラド美術館をテーマにしたシリーズより8点」は、プラド美術館の「ラス・メニーナス」の中で、森村氏が王女や画家、侍女など絵の登場人物となり、終いに彼らは鑑賞者になって画布から消え去ります。「エルミタージュ美術館の歴史をテーマにしたシリーズより3点」は、第二次大戦中に絵が疎開し、額縁だけになったエルミタージュ美術館がモチーフとなっているそうです。

(松) 単純に楽しめました。  森村さんの惜しげもないサービス精神とおかしみに溢れ。

 この有名な絵画に森村さんがちゃんと登場人物として関わっていて、絵画の中を錯そうする視線がより温かく豊かになっていましたね。


(中) PARASOPHIAは、作品の質が高く、明確なグランドテーマは掲げないながらも、作品間で有機的なつながりが見受けられる場になっていたと思います。  また、無料配布のガイドブックが大変充実しており、PARASOPHIAというイベントを楽しむ手引きとなっていることが、この展示の特徴ともいえるでしょう。ガイドに飽き足りなくなったら分厚いカタログも販売しているのですが、カタログはPARASOPHIAを分かりやすく説明するのではなく、むしろ奥深い迷宮への道案内になっているという仕掛けも魅力的でした。

(松) 私たちは今回3/14,15と、東京から一泊二日の京都旅でした。  一日目は、アサヒビール大山崎山荘美術館 企画展 「志村ふくみ ―源泉をたどる」 を鑑賞し、夕方になってから、鴨川デルタ京都芸術センターを周りその日は終わり。  翌日、京都市美術館堀川団地大垣書店烏丸三条点(ショーウィンドー)京都府京都文化博物館 別館を周りました。(河原町塩小路周辺だけ行けなかった><)  もう少しじっくり観たいものも少なからずありましたが、一日あれば大方の作品は鑑賞することができます。どれも質の高い作品ばかりですので、気になった方はぜひぜひ京都へ足をお運びくださいね!

※無断転用は固くお断りします。

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e-mail:art-inn@iscube.ihi.co.jp
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