『サタンタンゴ』タル・ベーラ監督来日記者会見 時の試練に耐えうる,アート的映画の力

2019年9月13日(金)より、ハンガリーを代表する巨匠・タル・ベーラ監督『サタンタンゴ』(1994)の4Kデジタルレストア版が全国順次上映されている。この度、公開に合わせて監督が8年ぶりに来日、記者会見を行った。

『ヴェルクマイスター・ハーモニー 』(2000)『倫敦から来た男 』(2007)『ニーチェの馬 』(2011)など、比類ない映像美の中で、観る者に根源的な問いを呼び起こすタル・ベーラ監督の作品は、いずれも話題と評判を呼び、映画史に確かな足跡を残してきた。
今回公開される『サタンタンゴ』は7時間18分もの長編大作で、準備に9年、撮影に2年、そして完成までに4年の歳月をかけたもの。欧米やアジア諸国など,多くの国で上映されてきたが、監督は「どんな文化的背景の人でも同じように受け止め、同じことを理解してくださっている。理由は分からないが、根本的な”何か”を感じるからかもしれません」と分析。 『サタンタンゴ』公開から25年という歳月が経っているが、2019年の今も昔と同じように受け止められているという事実は、この作品が「時に耐えられるのか、本当にアート的な作品であるのか」という問いへの判断基準になっているとした。

今回の『サタンタンゴ』のデジタル化にあたっては監督自らが携わっており、フィルムに限りなく近いクオリティのものになったそうだ。
監督は自身をフィルムメーカーだと思っており、「35ミリセルロイドのフィルムが好き」と断言する。一方でデジタルにはフィルムとは違う可能性があるとし、例えばビデオアートの開拓者であるナム・ジュン・パイクの作品を見た時、新しいビジュアル言語が生まれるかもしれないと思ったそうだ。
しかし今の映画の多くは、デジタルカメラをにせもののフィルムカメラのように使って作品を撮っており、「デジタルカメラで撮影する時に、フィルムカメラと同じように撮影しようとすることが問題」だと語った。

タル・ベーラ監督は『ニーチェの馬』を最後に監督業から退いており、会場からは「映画に対する愛情を感じる。なぜ監督を辞めたのか」という質問が出た。
監督はそれに対し「既に映画の言語は習得したので、繰り返すことは必要ないと思った。同じことを繰り返していたら飽きてしまう」と語り、物語性のある長編映画は作らない旨を強調した。しかしクリエイティビティを諦めたわけではなく、現在も世界各地で後輩の育成に取り組んでいるほか、オランダやウィーンでインスタレーションやパフォーマンスを実施しているとのことである。監督のアート作品を見る機会があれば、是非逃さず鑑賞したいところだ。

『サタンタンゴ』(4Kデジタルレストア版)は9月13日(金)よりシアター・イメージフォーラムほかで公開中、全国順次公開。

 

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