レポート|東京都美術館「大英博物館展」

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[text and photo by 空丹 久美] 2015/4/24 UP

 地球の反対側に位置するイギリス,はるか遠くのその地に大英博物館がある。海を渡り,大英博物館に貯蔵されているモノが東京都美術館にやってきた。歴史的なモノ100個,そして各美術館にて101個目として選ばれたモノが展示される。
 人類たちがどんな思いをこめ,どんな文化があったのか。何を考え,何を作ったのか。そんな人類の歴史が凝縮された「大英博物館展」の一部を紹介していこう。

公式HP: http://history100.jp/
会  場東京都美術館
会  期: 2015年4月18日(土)~6月28日(日)
時  間: 9時30分~17時30分 ※金曜日9時30分~20時 ※入館は閉館30分前まで

 

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古代エジプトの棺,紀元前600年頃,エジプト,大英博物館蔵

 会場に入ると目が惹かれるモノがある。古代エジプトの棺だ。表面には隙間がないように細やかな絵が描かれており,とても華やかな印象だ。旅立つ死者に寂しさを感じさせないように作ったのではないかと想像した。

 また,棺と対象的に置かれているのが,21世紀に造られたライオンの棺桶だ。凛々しいライオンをかたどったこの棺桶は2003年にガーナで作られた。

 時も場所もはるかに違うのにもかかわらず,死者を尊ぶ気持ちがどちらからも伝わってくる。時代を超えても変わらないモノがあるということを実感した。

 

2

カルパトス島の女性像,紀元前4500-前3200,ギリシャ・カルパトス島,大英博物館蔵

 「カルパトス島の女性像」では別段複雑な構造をしていないが,フォルムから女性だと判別できる。最古のギリシャ彫刻であるこの像は,女性であること以外はわかっていない。当時の時代の人が何を考えて作ったのか,想像するほど興味がわいてくる。

 そのほかにも各地の古代の人が作成した日常の道具が展示されていて,その当時の暮らしぶりがどことなく感じられるようだ。

 

3

アウグストゥス帝の胸像,1-40年,イタリア,大英博物館蔵

 真ん中にたたずむ凛々しい顔立ちの男の像は,ローマ帝国初代皇帝のアウグストゥス帝の胸像である。整った顔と若々しさを感じさせる表情で,威厳がある。大理石でつくられており,髪の毛の細かい彫やライトアップされたときの陰影のつき方がとても生き生きしている。胸像の精巧さに皇帝が当時いかに力があったのか理解できる。

 

4

ロゼッタ・ストーン,紀元前196年,エジプト,大英博物館蔵

 かの有名なロゼッタ・ストーンが展示されている。巨大な岩の表面には線を境目にして,細かい文字が3種類記載されている。上段はヒエログリフ,中段はデモティック,下段にはギリシャ語が記されている。立場によって読める部分が違っていたようだ。

 

 

5

ミトラス神像,100-200年,イタリア,大英博物館蔵

 歴代の宗教や信仰にまつわるモノも飾られている。「ミトラス神像」というキリストが栄える前にローマ帝国に広がっていたミトラス教のシンボルとなる像である。雄牛の首にナイフを突きつける勇ましい男性がミトラスである。雄牛を殺す行為は光と生命の再生を意味するそうだ。

 世界各地の宗教や信仰にまつわるモノを見ることができるので,知らなかった宗教の意味や信仰の意味を理解できて面白い。

 

6

ルイス島のチェス駒,1150-1200年,イギリス,大英博物館蔵

 ルイス島のチェス駒が並べられている。細かく彫刻がされている。顔の表情がコミカルで,全員の顔が一方向を向いていて何を見ているのか気になった。このチェス駒が場所を変え,時間を経るにつれ,現在の一般的な形になったようだ。どことなく面影があるような気がする。

 

 

7

北斎漫画,1814-1878年,日本,大英博物館蔵

 モノがしめす時代は現代に近づいてきている。これらは日本の北斎が作成した漫画本である。北斎漫画は海を越え,ヨーロッパやアメリカで一大ブームを巻き起こした。欧米が日本画に一目置くきっかけがここにあるのかもしれない。日本が世界に誇る漫画の原点がここにあるのだ。

 

 


 エピローグにて101番目のものとして各美術館ごとに選んだものが展示されている。東京都美術館では「今,そして未来を語るモノ」というテーマで展示されている。どういうモノなのかは実際に見てからのお楽しみだ。

 本展示では101個ものモノが展示されていて,相当な見ごたえがある。わかりやすいタイトルと説明がついていて,当時の人々の暮らしぶりや現代につながってきたもの,現代では知られていない物など,あらゆるものを知ることができる展示会だった。はるか遠いイギリスからこんなにたくさんのモノたちが来ることはめずらしい機会なので,ぜひ本展示に足を運んでいただきたい。

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