国立新美術館「マグリット展」

René Magritte aux yeux fermés,1928

[text and photo by 松田 順子(Art inn編集部)] 2015/4/3 UP

会場入り口にはマグリットの大きなポートレートが。
ルネ・マグリット(1898-1967)は、ベルギーワロン地方のレシーヌに生まれ、ブリュッセルに長く暮らしたシュルレアリストの画家です。

 現在もなお高い人気を誇る20世紀美術の巨匠「マグリット展」が、現在、国立新美術館で開催中です。日本では2002年以来、13年ぶりとなる大回顧展。本展では絵画131点(うち3点は京都展のみの出展)、資料55点、計186点が出展され、国内最大規模となっています。
 2009年にブリュッセルにオープンしたマグリット美術館の全面的協力を得ての本展は、質量ともに見応え十分。時間に余裕を持ってお出かけいただければと思います。

●公式HP: http://magritte2015.jp/
●会場:   国立新美術館
●会期:    2015年3月25日(水)~6月29日(月)
●時間:    10:00~18:00。金曜日は20:00まで。4月25日(土)は22:00まで。
        5月23日(土)、24日(日)、30日(土)、31日(日)は20:00まで。
        ※入場は閉館の30分前まで。

 

Ⅰ. 初期作品 Early Works(1920-26)

初期作品

 初期作品のコーナーでは、マグリットが未来派やキュビスムの影響を受けて制作した絵画をはじめ、生活のために生涯にわたり手がけた様々な商業美術の作品が展示されています。

 これらの中には、後にマグリットの絵画作品によく登場するモチーフ、ビルボケ(西洋のけん玉)を思わせるマネキンやカーテンなどが描かれています。

 

 Ⅱ. シュルレアリスム Surrealism(1926-30)

左《一夜の博物館》 1927

左《一夜の博物館》1927  右《嵐の装い》1927

マグリットが属するベルギー・シュルレアリスムは、パリのシュルレアリスムとは大きく違います。

 パリは無意識からイメージを掘り起こすのに対し、ベルギーは目に見えるものに宿る神秘、言葉やイメージ、オブジェなどを組み合し、超現実な世界観を創造していくのが特徴です。

 

Ⅲ. 最初の達成 The First Accomplishment(1930-39)

左《本来の意味》 1929

左《本来の意味》1929  右《ことばの用法》1927-29

 マグリットの作品にはしばしば言葉が書き込まれます。《本来の意味》という作品は、マグリットがパリ滞在時に取り組んだ、言葉とイメージをめぐる問題を扱う作品です。

 これらの「文字絵画」は、1927-29の間に頻繁に制作されました。

 

左《透視》 1936

左《透視》1936   右《心のまなざし》1946

 《透視》という作品は、マグリットの自画像。テーブル上の卵をみながら鳥を描くという不思議な発想の元にはこんなエピソードが。  1936年のある夜、マグリットが鳥が入っている鳥かごのある部屋で目覚めた時、鳥かごの中に消え失せた鳥の代わりに卵を目するという誤認をしたことで、驚くべき詩の新たな秘密を手にしたと1936年マグリット自身が語っています。

 

Ⅳ. 戦時と戦後 War and post-War(1939-48)

左《快楽》 1946

左《快楽》1946右《絵画の中身》1948

 第2次世界大戦時、ベルギーがドイツの占領下となったことは、少なからずマグリットの作品にも影響を及ぼします。この時期、花や女、鳥そして木が楽天的などこかの場所を作り出す作品が登場しますが、それらからは、肯定的な光のもと現実的なものを再建したという欲望が伝わってきます。

 また1948年には、マグリットにとって初めてのパリでの個展が開かれます。この展覧会は、マグリットによる新たなシュルレアリスムの道を示すこと、そしてパリにおける自身の存在アピールという2つの大きな目的が有りました。

 ここでマグリットは「雌牛(ヴァーシュ)」というこれまでと全く異なる技法で絵画を制作しています。アイロニカルな内容で、早描き、粗らしい筆致で派手な色彩の作品は、パリの観衆を驚かせることになります。

06

  休憩室には数本のショートフィルムが流れています。

 主にマグリットの家で撮影されたもので、気の置けないごく身近な人々と実験的な戯れに興じる様子が映し出されています。

 

07 資料のコーナーも充実しています。

 マグリットの絵があしらわれた印刷物をはじめ、プライベートな雰囲気の写真も展示されています。マグリットの絵の構図そのままのものもあり楽しめます。

 

Ⅴ. 回帰 The Return(1948-67)

左《ゴルコンダ》 1953

左《ゴルコンダ》1953   右《ヘーゲルの休日》1958

 「雌牛(ヴァーシュ)」の時代を経て、マグリットは以前のような滑らかな筆致の画風に戻ります。

 《ゴルコンダ》について、本展メインビジュアルとなった作品ですが、ブリュッセルと思しき匿名の街並みに、山高帽を被った大勢の紳士が浮かんでいます。

 マグリット曰く、この紳士たちはそれぞれ違った人物であると。そして群衆の中の個人については考えていないので、みな同じ服装をし、単に群衆を表しているのだとか。


 人は彼の絵に象徴をみようとしますが、そんなものはなく、その種の意味はないとマグリットは言います。意味はないとはいっても、作品には作者自身の要素が少なからず投影されているものと思います。

 本展の図録には、マグリットが14歳の時、彼の母親が川に身投げし自殺したとありました。遺体が引き揚げられたとき、ネグリジェが彼女の顔を覆っていたそうです。マグリットの絵には、しばしば布で顔や体を覆われた人物が登場しますが、これらの作品はその時の情景に由来するものなのでしょうか。

 私たちはマグリットの不穏且つ豊かな世界に触れれば触れるほど、その魅力にかき乱され、あれこれ想像をめぐらせ続けるのでしょう。機会が有ればぜひ、本場ベルギーのマグリット美術館でじっくりマグリットの世界に浸りたいと思います。

関連記事

Art inn Premium [インプレ]

各美術館・展覧会の最新情報をはじめ、様々なアートに関する口コミ情報をお手軽にPC・携帯でチェックできます。
プレゼント応募もこちらから!
[インプレ] のご利用方法はこちら

Art innに関する問い合わせ先

株式会社IHIエスキューブ
Art inn編集部
e-mail:art-inn@iscube.ihi.co.jp
ページ上部へ戻る
error: Content is protected !!