光の旅 2013

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  昨今の東京では、冬の気温はそれほど下がらない。
 それでも12月になれば、空気が澄み、建物の輪郭がはっきりする。
 師走の景色の中でも、夕方から夜にかけての空の透明な蒼や、夜の紺色の深さなどは、とりわけ鮮烈だ。
 そうした冬の恩恵とも言える背景の中で、最も輝き映えるのはイルミネーションだろう。
 今回は、編集部のある豊洲近辺を巡りながら、写真好きの職場の方々ともども、人工の光の芸術を探索してきた。

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 まずは豊洲のららぽーと。
 ここのイルミネーションは、白と青が基調になっていた。
 一つ一つの作品が、ひどく繊細かつ上品で、特に光が水面に映り込んでいる様子は見応えがある。

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 写真撮影をしている時の、一つの面白い現象として、誰か一人が写真を撮り始めると、周囲の人も撮影を始める、ということがある。
 人が集まり始めると、子供たちも連動してはしゃぎ始める。すると鑑賞されるだけだった光が、見る間に鑑賞者を彩り、鑑賞者も光の芸術に参入させていく。
 屋外型のイベントは、参入する人によって、機能や性質が変わっていくことがままあるが、この時は鑑賞物と人との距離感の変化を、リアルに体感することができた。

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 次に赴いたのは六本木の東京ミッドタウン。
 約28万個のLEDの光が点滅する、ミッドタウン・ガーデンのイルミネーションのテーマは宇宙とのこと。
 無数の瞬きは若い恒星の光と、壮大な銀河を連想させる。また青い光の絨毯の中で、遠くに見える東京タワーのオレンジの光が引き立ち、東京の名所を同時に見られるという贅沢を味わえる。
 ここのダイナミックな世界観を支えているのは、360度全方位で光が確認できる、クロスオーバー・イルミネーションという技術である。人を感動させるものの裏に、最先端のテクノロジーが使されているという良い事例だろう。

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  そして最後は、後楽園の東京ドームシティ。
  光の道「ミルキーウェイ」の色は、ピンクやブルー、グリーンなど。
  ファンタジックで輪郭も柔らかい光に、道行く人の足取りも、心なしか軽いようだ。

 

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 一方で、金色が基調の「クリスタルカスケード」は、もう少し落ち着いた雰囲気。
 通路を歩いていると、金属質の輝きが水面に反射して目の奥に届く。
 幾重にも反射する光の中で、不思議な酩酊感を味わうことができる。

 

 

 

 

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 今回の撮影で感じさせられたのは、同じ場所に行っても、撮られたものは人によって異なり、そして撮影者の味が出ているということだった。
 たとえばミッドタウン・ガーデンの写真を比べてみよう。
 撮影者の中でも一番の技術を持つF氏の写真は、クロスフィルターが駆使され、幻想的な効果を上げている。

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 またイルミネーション撮影経験も豊富なLapin氏の写真は、シャッタースピードが速く、周囲の人間すら青く光るオブジェのように写っていた。

 写真は撮った人の全てを示す、と言う人もいる。
 一瞬ですべてを切り取るという気構えを持って撮影する場合、正しいのかもしれない。
 とはいえ私は、特にデジタルカメラの場合、何も考えずにシャッターを切っていることもあるので、そこに100%賛同するには躊躇してしまうのだ。
 それに何より、そこまで写真を信望するのはためらわれる。
 しかし、同じ風景を切り取っても、特徴が全然違うのであれば、それは撮る人の個性が出ていると言ってもいいのだろう。
 同じ光学機械を用いても、表現されるものは全く異なる。それは恐らく、複数人で撮影を行う際の醍醐味なのだろうし、人の多様性の面白さをそのまま示しているのだと思う。

 

[ text by 中野昭子, photo by F氏+Lapin+中野昭子]

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