臨済宗 建仁寺塔頭 両足院 水月亭 特別展「ミヒャエル・ボレマンス」

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[text and photo by 中野昭子] 2014/02/25 UP

 今、原美術館とギャラリー小柳では、世界的に広く認められているアーティスト、ミヒャエル・ボレマンスの展示が行われている。この度京都造形大学が、臨済宗 建仁寺塔頭 両足院で、ボレマンスの墨絵で構成される特別展「ミヒャエル・ボレマンス」を開催するという。ボレマンスは寡作で、作品は世界的にも数が少ない上、個人蔵になっているものが多く、目に触れる機会が少ない。この度の企画も、作家に何度も交渉して叶ったものであるという。それだけに今回は、大変に貴重な機会であると言えるだろう。

 

 

 会場の建仁寺塔頭 両足院は通常非公開で、繁華街に隣接しているとはとても思えない、ゆるやかでひんやりとした時間が流れる場所である。
 ボレマンスは今回、三日間滞在し、制作に費やしたのは実質一日とのこと。忙しいスケジュールにも関わらず、作者は自ら墨を磨ることを希望したという話だった。墨は水に溶けて時間と共に姿を変える。また磨るという反復行為は雑念を取り払う。恐らく作者は、そうした過程の一つ一つを丁寧に味わっていたのだろう。

 

 作品は2点の墨絵で、それぞれ掛軸に仕立てられている。絵のモチーフは庭園にあるくちなしで、タイトルは日本語で「くちなし」である。くちなしはヨーロッパにもある植物で、またボレマンスは、タイトルをつけることは作品制作にあたって大切な過程であるとしているから、絵の中のくちなしは、京都の両足院という場所に、強く根付いたものなのだろう。
 作者がくちなしを見た時、花は咲いておらず、実の状態だったという。盛りの花ではなく、実の形状に惹かれるというのは、ボレマンスの他の油彩を見ても、頷けることである。

 

 茶室の花は、三重県の伊賀焼を代表する窯元「土楽窯」の七代目当主・福森雅武の手によって活けられた木蓮だった。木蓮はボレマンスの他作品のモチーフともなっており、ボレマンスと福森雅武という二人のアーティストの鋭敏な感性が、この場の雰囲気を共有し、調和を生み出したことが伺える。

 

 

 作品が展示されている茶室「水月亭」では、花や花器などの全てが、絵がつくりだす世界の構成要素となっている。それらは絵を引き立てつつ、絵とともにその場に深く息づいていた。
庭園を歩いていると、両足院自体が、ボレマンスの絵をとりまく小宇宙となっていることを感じる。そこで流れる時間はこの上なく豊かで、雑多な日常の中で鈍りがちな感覚が明澄になるようだった。

 

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