国立西洋美術館「ボルドー展ー美と陶酔の都へー」

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[text and photo by 中野 昭子] 2015/7/7 UP

 今、国立西洋美術館で開催中の「ボルドー展 ―美と陶酔の都へ―」は、フランス南西部の港町ボルドーを紹介する展覧会であり、25000年前頃から現代に至る歴史を5つの章に分けて分析している。
 ボルドーを首都とするアキテーヌ地方は、考古学的な価値の大きい遺跡を擁する場所である。遺跡の中にはラスコーの壁画も含まれていることから、絵画が栄える素地は古代からあったと推測される。本展は、ボルドーにおいて、どの時代も豊かな芸術が花開いてきたことが分かる内容となっていた。

●公式HP: http://www.tbs.co.jp/bordeaux2015/
●会場:  国立西洋美術館
●会期:  2015年6月23日(火)~9月23日(水・祝)
●時間:   9:30〜17:30(金曜日は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで

 

プロローグ―起源

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 入場してすぐの場所に位置する「角を持つヴィーナス」は、動きに躍動感があり、見る者を惹きつける。数あるヴィーナス像の中でも特に名高いこの像に関し、意味や役割は明確にはわかっていないが、豊満でしなやかな体つきと線は、25000年前のものとは思えないみずみずしさを湛えていた。

I. 古代のボルドー

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 ボルドー市内では現在でも、先住していたアキテーヌ人やガリア人たちの日常生活を示す遺物が発見されるという。エジプト由来の神々の像やワインの輸送用の壺などは、古代都市ボルドーが、交易都市としての役割を果たしていたことを今に伝える。

II . 中世から近世のボルドー

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 11世紀半ばにボルドーはフランスのアキテーヌ公爵領となり、その後イギリス統治時代を経て、英仏間の百年戦争の舞台の場となる。この時代のボルドーは、聖地巡礼路であるととともに重要な輸出港だった。
 教会建築の断片や英王室の紋章をかたどった石材などの中で、モンテーニュの「エセー(随想録)」や、教会改革を行いながらボルドーにバロック美術をもたらした枢機卿スルディスの胸像など、思想や美術を支えたものに関連する史料が並ぶ。

III. 18 世紀、月の港ボルドー

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 交易とワイン産業がピークを迎えた18世紀、ボルドーはフランス第一の港となり栄華を極めた。影には黒人奴隷を輸入して利用する三角貿易が富をもたらしたというからくりがあり、その事実は絵画のモチーフにも表れている。
 この章では、貴族の生活ぶりを伝える史料や新古典主義までの画家の作品の他、また三権分立を説いたモンテスキューの『法の精神』を通し、18世紀の基盤となった啓蒙主義に触れる。

IV . フランス革命からロマン主義へ

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 19世紀のボルドーは、植民地の独立や大陸封鎖令、鉄道網の発展などで港としての勢いを失う。一方でワイン産業は発展を続け、また1801年にボルドー美術館が創設されるなど、 産業・文化において成熟していく。スペインから亡命してきたゴヤの絵やドラクロワの大作、ルドンの模写などは、この地が芸術の集結する場所であり続けることを示している。

V . ボルドーの肖像―都市、芸術家、ワイン

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 ここではワインに関する資料に触れながら、20世紀初頭に花開いたアール・デコ芸術などを通じて、20世紀から21世紀に至るこの都市の肖像を描き出す。
 古典主義に立ち戻るという要素をもつアール・デコの潮流は、古典主義の栄華の面影を残すボルドーにふさわしい。また、ワインの産地にゆかりのあるルドンやロートレック、「ボルドー・ワイン」のカリカチュールを描いたモネの作品は、ボルドーの文化がワインによって広がりをもったことを教えてくれる。

エピローグ 今日のボルドー

 廃墟に絵を描き、それを写真として残すことで、古い建物の記憶を甦らせるジョルジュ・ルースの写真作品が展示されている。当展示は、遠い過去の遺産を受け継ぎ温存しながら発展していく都市・ボルドーの姿で締めくくられていた。

 


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 ボルドー市の儀礼用で使用された「都市の鍵」には、海神ネプトゥスの三又の矛と、商人や旅人の守護神であるメルクリウスの杖、酒神バッコスの象徴であるブドウの房が示されていた。
 豊かな港とブドウが収穫できる土地を持つボルドーは、神々に愛された土地であり、経済的なゆとりが文化の成熟に直結している。そして2007年、ガロンヌ河岸の歴史地区一帯が「月の港ボルドー」として世界遺産に認定された。耳にするだけで美と芳醇な香りを連想させるこの都市は、過去に蓄積された富を現代に活かしながら、今後ますます繁栄していくのだろう。

 

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