平山郁夫美術館「平山郁夫の原点 瀬戸内とシルクロード ~アフガニスタンを行く~」展

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[text and photo by 水谷 早希] 2015/12/2 UP

はじめに…

 平山郁夫美術館はしまなみ海道の途中に位置している美術館である。門をくぐると両脇に緑が添えられた小道が続き、白い曼珠沙華やヤブランなど季節の花々が咲いていた。
 その先に美術館は存在している。
 館内に入ると大きな窓から日本庭園が望める。ロビーには、地元の方がしまなみにちなんで描いた作品がずらりと展示されており、地元の人に愛されている美術館だということがうかがえた。その奥に展示室は3つあり、それぞれのテーマにわかれて展示されていた。

公式HPhttp://hirayama-museum.or.jp/
会  場平山郁夫美術館
会  期: 2015年6月11日(木)~10月2日(金)
時  間: 9:00~17:00(休館日:不定期)
※入館は閉館30分前まで

 

 

第一展示室 「平山郁夫の原点 歩み」

 1930(昭和5)年に広島県瀬戸田町(現・尾道市)で生まれた平山が、幼少期から1947(昭和22)年に16歳で東京美術大学へ入学するまでの絵が飾られている。
 絵のモチーフは手や軍人さん、昔の絵巻物の模写など、身の回りのものが多い。 広島にて原爆投下を目の当たりにした平山は、それとは裏腹に幼いころ過ごした島での穏やかな暮らしのとても優しい絵を描いていた。

 

 

第二展示室 「平山郁夫の原点 瀬戸内・しまなみ海道」

 1999年(平成11年)に尾道市と今治市を結ぶ「しまなみ海道」が全線開通したことにより制作された素描集「しまなみ海道五十三次」の一部が展示されていた。  平山はスケッチを幼少のころからしており,描線は墨で描き,水彩絵の具で彩色している。
 しまなみ海道と橋が描かれた作品の中で、私は「多々羅大橋 夜景」という作品に心奪われ、その場にしばらく佇んでしまった。空間に吸い込まれるような群青色の中に、ぽつぽつと浮かび上がる星々や街灯の光が美しい。瀬戸内海の静かでひっそりとした空気が存在感を示すように伝わってくる作品だ。青がこんなにも美しい色をするのか。絵と自身が立っている場所との境がわからなくなり、穏やかでいる夜の海の怖さまでも感じられるようであった。

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(同時期訪れた橋の様子)

 

第三展示室 「平山郁夫の原点 シルクロード」

 この展示室では、主に企画展の作品が展示されている。今回は昭和43年にアフガニスタンを訪問し、その年から描かれ始めたシルクロードの絵が展示されていた。
 ここでは、人が描かれている作品が多かった。 「求法高僧東帰図」は僧の佇んでいる姿がいくつも描かれており、平山が人を描くときに、人の佇まいを大切にしていたのだとうかがえた。
  展示室内でもひときわ大きく目を引いたのが「アフガニスタンの砂漠を行く・月」と「アフガニスタンの砂漠を行く・日」だった。両作品はシルクロードを行くキャラバンが、向い合せになるように展示されていた。月夜の静かな強さと、日中の輝く強さが対照的に、それでいて一つの共通した世界観で存在していた。  
 私がとても関心を寄せたのは、「破壊されたバーミアン大石仏」という作品で、画面いっぱいに描かれた、崩壊した巨大な大石仏を前に、人が一人ぽつんと佇んでいる。一緒に旅をしていた平山の奥さんであろうか。どんな顔をして立っているのか、想像がつくようである。ただそこに一人佇んでいるだけなのに、そのことが、なんとも言えぬもの悲しい空気をつくりだしているように思えた。
 最後に見たのは「アンコールワットの月」という作品だった。アンコールワットの遺跡が描かれた作品で、夜の静寂さが「ほぅ」と音を立てて伝わってくるようだった。しばらく眺めていると、群青色に包まれた遺跡と夜との境がわからなくなってきてしまう。しかし、その存在感は生命を持っているかのように確かにあり、静かに月明かりを受けいれているように思えた。


IMG_9204所感

私は、平山作品をみて、絵を描く意味を考えさせられた。平山が描いた「平和」という空気感は、静かに、しずかに歩み寄ってくる。絵一枚の中の世界観が主張せず、それでいて力強く存在を写す。まるで、絵自体が心のようだと感じた。最近の現代美術には、空間演出や体験型の作品が多いと感じるが、平山の絵一枚から伝わってくる力に、私は魅了された。
 私自身も普段からイラストをはじめとする作品制作を行っている。空間を利用した作品を制作したとき、私は感覚の断片を集めて空間に配置し、少しずつ見せることで伝える方法をとっていたが、それは私には絵一枚で伝える力がなかったからなのかもしれないと思うほど、平山の作品からは強さを感じた。絵を描くことで伝えられるものの大きさに改めて気づかされた展示だった。

 

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