- 2013-5-3
- 展覧会レポート
- Bunkamuraザ・ミュージアム, アントニオ・ロペス
[text and photo by Art inn編集部] 2013/5/30 UP
現在、Bunkamura ザ・ミュージアム開催中の、現代スペイン・リアリズム絵画の巨匠「アントニオ・ロペス展」へ行ってきました。
実を言うと、私はリアリズム絵画がそれほど好きではありませんでした。なぜかというと、画力だけが先行し、主題そのものの意味や力が弱まってしまっているように感じられたから。作品に奥行が無いというか。。
しかし、アントニオ・ロペスの描く世界は、そういった画力だけの絵(ごめんなさい!)とははっきり違うと実感できたのです。
それは作品を眼にしたとき、まず描く対象への彼の愛情あふれる眼差しが感じられ、その次に卓越したテクニックが見えてくるからです。
会 場: Bunkamura ザ・ミュージアム
会 期: 2013年4月27日(土)~6月16日(日)
時 間: 10:00~19:00 [金・土10:00~21:00まで](会期中無休)
※入館は閉館30分前まで
(会場風景)
巨大な作品が多くありましたが、すべてをきっちり描ききるのではなく、最初に筆で色をざっくりと置く程度で逃がしている部分も随所にあり、観る側も息つぎができるのです。
ロペスは言います。「最初に受ける感触を表現する能力は、現実の世界を正確にコピーする技量や正確さとは別のものなのです。」と。
ロペスは彼の身近にある大切な人やもの、マドリードの風景、時には新しい冷蔵庫の中身まで(!)を気負うことなく、また奇をてらうことなく、ひたすら淡々と描いています。
本展メインビジュアルにもなった《グランピア》は、マドリード一の目抜き通りとのことですが、夏の早朝の冷たい光をを描く為、彼は毎朝地下鉄で、20~30分描くために7年間通ったそうです。
作家の対象への息の長い、安定感のある深い愛情がどの作品からも見て取ることができ、幸せな気分になれました。
(会場風景)
少し乾いたヨーロッパの空気、そこに描かれた時間帯は、早朝や夕暮れが多いでしょうか。日中よりもひんやりとやや湿度を帯び、繊細な大気の様相が刻々と変化するマジックタイム。
(左は記念に購入したポストカード)
すべての色に白い石の粉が含まれている様な柔らかな色調の画面は、日本から遥か遠い国の空気を切り取って私たちに魅せてくれたのでした。
東京での会期は残すところあとわずかですが、このあと長崎県美術館(2013年6月29日(土)~8月25日(日))、岩手県立美術館(2013年9月7日(火)~10月27日(日))へと巡回しますので、どうぞお見逃しなく。