トップコラムバックナンバー2007年2月>そもそも「絵を描く」ってこと。
 そもそも「絵を描く」ってこと。
庭園美術館で開催中の「アルフレッド・ウォリス展」。
「絵を描く」ことへの”純粋な気持ち”に会いに行く。

 実際のところ、展覧会の開催を知った当初は、特に気にもしていなかった。聞いたこと無い名前だな~くらいにしか思っていなかった。けれども、身内ながらArt innの特集を読んだのをきっかけに、妙に気になって、何かに呼ばれるようにとうとう私は、庭園美術館に足を運んでしまった。

 実際の作品を眼にしたら、余計なものが一切がっさい、洗われたような気がした。ウォリスの描く、そこらへんにある適当な厚紙等に描かれたと思われるつたない油絵は、どこまでも素朴で、変な構えが一切無い。売れっ子になろうとか、かっこ付けとか、そういう類のものを全く感じさせない。現役の漁師を引退してから、70才を過ぎて、記憶をたどりながら絵を描き始めたウォリス爺さんの描く世界に、邪念など微塵も無いのだ。

 まさに「絵を描く」ってそもそもはこういうことだったんだよね、という感じ。同行した私の学生時代の友人も熱く語っていたが、いつも自分の身近にあって、いつも眼にして愛着を感じ、それを自分の中で反芻し、しっかりと記憶に留めたいから描くという感覚。誰かに見せるためとか、お金のためとか、出世のためとか、そんなんじゃない。ひたすら自分の愛するものを、”描きたいから描くだけ”なのだ。
 だから、灯台が下を向いていようと、馬やめんどりの描写が限りなく曖昧だろうと、船に対して魚の比率が大き過ぎても(海の恵みに対する感謝の意。また漁師たちを港に導く灯台の窓が時に十字架型で表される。)、描く媒体が何であろうと、そんなことは大した問題ではなくて、自分の心底愛する、常にグレーに曇ったセント・アイヴスの港と街、そして船がきちんと描かれていさえすればよいのだから!

 この展覧会を観て、どこからか「力を抜きなよっ!」って言われた気がした。まだまだ私も余計な力みがあったみたい。。。


p.s. ウォリスが著名な元美術館学芸員に書き送り続けた書簡が胸を打つ。たどたどしい筆致と言葉使いで綴られたそれらの文章からは、ウォリスが彼を自分の数少ない理解者と大きな信頼を置いていた様子が伺える。 


[Junko Matsuda]

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Art inn 特集 無名だから新鮮で面白い!
「だれも知らなかった アルフレッド・ウォリス -ある絵描きの物語-」展開催中!は
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