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 目黒区美術館「ベルナール・ビュフェ展『木を植えた男』の著者ジャン・ジオノとの出会い」

目黒区美術館『「ベルナール・ビュフェ展『木を植えた男』の著者ジャン・ジオノとの出会い」
[ text and photo by 寅次郎] 2010/3/15 UP


会 期
2010 年2月11日(木・祝)~ 4月11日(日)


「憧れを知る者のみ わが想い(悩み)を知らめ」
『どくとるマンボウ青春期』で北杜夫はゲーテのこの言葉から自分の青春時代を語り始めている。この世代は、第2次大戦下で思春期を迎え、招集される前に敗戦を迎えた世代である。

同世代のビュフェが思春期を過ごしたパリは、1940年にナチスドイツに占領され、
4年後、ノルマンディー上陸作戦が成功し パリ解放となるまで、ドイツの物資供給国となっていた。このため連合軍がフランスに空爆にやってくるという複雑な戦況の下にあった。


内向的な少年ビュフェは 学校でも孤立し、一人で絵を描くようになる。
15歳で高校中退後、名門美術学校へ入学、17歳の時大戦が終結する。(この年最愛の母親を亡くしている。)
孤独の中でひたすら絵に没頭し、それが開花したのが 1947年から1948年(20歳)頃の初期作品群である。

抑えた色調と痛々しく見える表現の裏に 自由や愛へのあこがれ が息づいていることが子ども世代の我々にも伝わってくるのは、それが思春期の永遠のテーマを含むからだろう。

目黒区美術館『「ベルナール・ビュフェ展『木を植えた男』の著者ジャン・ジオノとの出会い」
展示では『コンロのある静物(表)』『アイロンのある静物(裏)』(1948年)にビュフェがビュフェになる瞬間を確認できる。
机の上のコンロとアイロンとフォークとスプーンが同じカンヴァスの表と裏に描かれている。全く同じ構図だが、あとに描いたと思われる裏の方がモチーフがより抽象化され、それまで刺々しく見えていた細い線がすっきりとして、後に引き継がれるビュフェのスタイルとして完成度の高い作品に仕上がっている。

『キリストの十字架からの降架』では、降架を見ているのは現代の服装をした親子であり、降架も展示物のオブジェの取替のように描かれており、考えさせられる。
また、『画家とモデル』では、画家もモデルもビュフェ自身である。

こういった一連のシニカルなテーマが変わってくるのが、副題にある「ジャン・ジオノとの出会い」以後の作品で、プロバンスに移り住み色調も明るくなっている。

ビュフェの作品が大きく変わるのは 1958年にモデルであり作家でもある アナベルとの結婚以降とのことだが、今回の展示では『赤い鳥』(1959年)が展示されている。
畑の上に全裸で横たわるアナベルのそばに 巨大な赤い鳥 のビュフェ自身が 彼女を支配しようとしつつ まわりに目を光らせ守ろうとしている。筆のタッチも大胆で生命力に充ち満ちている。
「憧れを知る者」同志、お互いが「重要な他者(Significant others)」と認め合う関係からうまれた作品群についても 機会があれば足を運んでみたくなった。


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