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 東京都現代美術館「フセイン・チャラヤン」展

東京都現代美術館「フセイン・チャラヤン」展

※このページの写真はあくまでイメージで、本展とは一切関係ありません。

[ text and photo by msx] 2010/5/6 UP

会 期
2010年4月3日(土)~6月20日(日)


フセイン・チャラヤンの名を聞いて連想するのはファッションデザイナーという肩書きであったが、
今回の展示ではそうしたカテゴライズがあまり意味をなさないことを思い知らされる。
会場はファッション・コレクションの他に、映像やインスタレーションがいりまじる形で展示されていたが
映像の豊かな表現力、インスタレーションの集中力が、人間に寄り添う服に彩りと活力を与えていた。
表現手段を選択できるということ、また多彩な表現を見られるのは
この時代に生まれた我々に与えられた機会であり、有難いことといえるだろう。

作品には、人間の存在感の不確実性と、人間の残す痕跡の強靭さがいりまじり、
不思議な磁場を生み出している。
例えばエアメールが服の形に裁断された「エアメール・ドレス」。
届いた時には差出人は書かれた場所にはおらず、
状況がリアルタイムで共有できないことが前提になる。
受取人が手にするのは、差出人の存在のかけらと託された思い。
「リーディングス」の展示されている空間は暗く、光を落とした宇宙船内部を思わせる。
マネキンたちが身に纏っているのは、劇的でどこか淫靡な赤いレーザー光線を撒き散らすドレス。
暗闇が灼熱の光で彫刻される。
「エアボーン」は、様々な色の光が乳白色の中で無限に移ろいゆくドレスである。
その彩り豊かな色彩は、見るものを新天地へと導く虹の橋を思わせる。
立ち昇るのは人間の可能性と多様性、想像と創造のアマルガム。

作品全体に通底するのは人間の不屈のエネルギー、希望であった。
例を挙げれば、紛争で所有物を失うという不幸な出来事は、
家財道具が服になる「アフター・ワーズ」に活かされている。
戦火で味わったであろう心痛は測り知れないし、安易なことは言えないが、
感性を揺り動かす出来事を別の形に昇華する人間の力を見出せるように思う。
1人の人間が味わった悲しみ、怒り、記憶をアートの形で表現しそれを享受するのは、
他の手段では得がたい体験である、負の感情を喚起させずに思いの全てを共有しうるのだから。

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