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 東京都写真美術館「古屋誠一 メモワール.愛の復讐、共に離れて…」

東京都写真美術館「古屋誠一 メモワール.愛の復讐、共に離れて…」

※このページの写真はあくまでイメージで、本展とは一切関係ありません。

[ text and photo by msx] 2010/5/17 UP

会 期
2010年5 月15 日(土)~7 月19 日(月・祝)


会場に満ちているのは撮影者である古屋誠一の妻、クリスティーネの姿である。
古屋はクリスティーネと初めて会った日から彼女の死の前日まで、彼女の姿を撮り続けた。
そして古屋の写真は、クリスティーネが被写体でない作品や、彼女の死後の作品でも、彼女の影を感じさせる。
恐らく古屋にとって死は消滅ではなかったのだ。
むしろクリスティーネは、具体的な姿をとらない事によって、古屋の見るもの聞くもの全てに自身の姿を宿し、あらゆる姿で古屋の意識に偏在するようになったのだろう。
古屋の眼差しの先にクリスティーネがいて、クリスティーネを形どっている姿には古屋自身が投影されているようにも思う。

ゾーン「クリスティーネ」は、彼女の死の直前から、出会って間もない頃へと時系列を遡る形で展示されている。
まず始めに、観る者は虚脱したような表情と出会うことになり、感情移入にはガラスの壁のような障壁が立ちはだかる。
そして進むにつれ、被写体には体温が宿るようになり、しまいには初々しい笑顔を浮かべるクリスティーネに出会うことになる。
多分、古屋の世界には、過去から未来へ流れる数量的な時間と、地図的な空間は存在しない。
そこにあるのは、寄せては返す時間の波と、地理的特性が最低限に抑えられた静かな場所である。
写真の中のタイムレスな場所は全て、古屋とクリスティーネが出会ってからの物語を繰り返し呟いているように感じたー

 古屋はクリスティーネの姿を記憶した。
 彼はそれを忘れなかった。
 彼はそれを覚えたままでいた。
 それから数年経つ。
 それはいまでも保管されている。
 そして彼は今でも何かにつけ、見るもの、聞くもの、触れるものすべてに嘗ての面影を見いだす。
 彼らがいた場所は、今日もなお、二人の共有した、追いかけあう旋律にも似た時間を奏でている。


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