トップArt inn編集部日記>原美術館「ウィリアム エグルストン: パリ-京都」
 原美術館「ウィリアム エグルストン: パリ-京都」

原美術館「ウィリアム エグルストン: パリ-京都」

※このページの写真はあくまでイメージで、本展とは一切関係ありません。

[ text and photo by msx] 2010/6/7 UP

会 期
2010年6月5日(土)~8月22日(日)


エグルストンの名を聞いて想起される感覚は、静かな胸のときめきである。
私の記憶の中で、温かさを伝えるカラー写真はどこかノスタルジックで、
程よく煮詰められたトマトのような色は、古き良きアメリカに残された素朴な肌合いを伝えていた。

今回原美術館で展示される写真は、標題の「パリ」と「京都」の風景が中心で、
こちらは近年カルティエ現代美術財団の依頼を受けて制作されたものとのこと。
また、初期作品であるエグルストンの故郷の風景写真も数点展示されている。
写真の他にはエグルストンの自由でカラフルなドローイングも紹介されており、文字通り彩り豊かな内容である。

「パリ」「京都」の写真は、一見すると場所を象徴するものがなく、ここはどこなのだろうかという気持ちが沸き起こる。
しかし見ていくにつれ、そこを生活空間にしている人や、その場所に流れる空気を感じ、撮られている場所の名称や位置付けは、二次的なものに過ぎなくなっていく。
それでいてその街の日常性や雰囲気は、正確・緻密に伝わってくるのである。
「パリ」の写真はドローイングとペアになっているものがあり、写真の色彩がドローイングによって引きたっている。

驚くべきは展示されている写真のみずみずしさ。
ふわりとしたシフォンのような布の空気感、鮮やかな色を覗かせる上着の裾、生き物のような鎖。
旅先の日常の中で愛すべきものに出会った喜び、発見がダイレクトに伝わってきて、見ていて嬉しい気持ちになる。
エグルストンは1939年生まれ、写真界の大御所であるのに、ピュアな感性はそのまま残るどころか、いや増しているようにすら思える。
今回の鑑賞は、原美術館という空間で、密かに撮り手の喜びや胸騒ぎを共有できる、素敵な体験だった。



Art inn注目の展覧会情報:原美術館「ウィリアム エグルストン: パリ-京都」はコチラ