
※このページの写真はあくまでイメージで、本展とは一切関係ありません。
[ text and photo by msx] 2010/6/29 UP
会 期
2010年6月19日(土)~8月8日(日)
道すがらふらりと入った資生堂ギャラリーでは、チェコ共和国の現代写真家が紹介されていた。
何の気なしに立ち寄ったその展示「暗がりのあかり」は、その名の通り、暗色の準宝石のしたたかな輝き、あるいは蛾を引き寄せる灯りのまたたきのような、不思議な魅力を放っていた。
イヴァン・ピンカヴァの作品には、繊細さと静けさが滲み出ている。
ボイスのフェルトのエピソードを想起させる「ヨゼフ・ボイスのための靴」、年輪を感じさせる椅子がなぎ倒された「椅子」など、日常に転がっているモチーフを使っているのに、何故こんなにも荘重で圧倒的なのだろう。
画面の中の空気は静止しているようで、一つ一つの影ですら、見逃せない存在感を醸している。
恐らくこの時代の空気の一部なのだ、ウラジミール・ビルグスの捉えた雰囲気は。
人がいるにも関わらず、どこか空虚で寒々しく、被写体は個人というよりも、事態の中の構成要素としての力しかない。
都会の硬質な風景と青く澄んだ海、晴れやかな空は、手で押しても何の手応えもなく拡散してしまうのだろう。
多くの写真家を魅了してきた「双子」という被写体は、テレザ・ヴルチュコヴァーによって加工され、量産される。
心狂わんばかりに泣く少女と、その傍らで何の気なしに立つ少女や、生活の一場面であるはずなのに、何となく嘘の空気を醸している少女たち。
同じものが二つあるという事態は一瞬、この世界が一つであるという前提を揺るがせる。
この企画は、写真という一つの表現からバラエティを引き出していて、ドキュメンタリーやコマーシャルの性質を感じさせるものもあれば、プライベートな視点や芸術手段の雰囲気が強い作品もある。
写真の持つ機能や歴史を注意深く捉えた上で作品が選択されており、チェコの現代写真の世界を一渡り眺めることが可能になる。
小さな会場ながら、闇より深く、塔より高いチェコ写真を満喫できる見事な構成である。
この展示の吸引力は、ただ通り過ぎるにはあまりにも勿体無い。期間中に是非一度ご覧になっておくことをお勧めしたい。
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