
※このページの写真はあくまでイメージで、本展とは一切関係ありません。
[ text and photo by msx] 2010/7/21 UP
会 期
2010年7月14日(水)~ 9月13日(月)
一番最初に出会う作品、少しいびつな青いハート。これが既に謎を隠している。
真ん中からぱっくりと割れていて、中心部分に「man」と記されている。
割れているのは切れ目なのか、それとも光の道筋なのか。
「man」はマン・レイのマンなのか、それとも「人間・男」の意味なのか。
この作品はマン・レイの、そもそもどこか人を食ったような、しかし限りなく魅力的な人間性を予感させる。
彼はアメリカに生まれ、デュシャンに出会い、やがてフランス行きを決意する。
パリはおりしも狂乱の時代、ファッション、文学、映画、音楽、ダンス…芸術を生み出し享受する都市。
この都市は既にダダイストと認められた、奇妙なパリのアメリカ人を軽やかに受け入れる。
マン・レイは着いた当日にシュルレアリストと邂逅を果たし、石炭商・百万長者、その他煙にまくような略歴で紹介される。
石炭商とは黒い色、闇の石を想起させるが、光の男ならば闇を材料として熱を与えることもできよう。
マン・レイは同じアイテムを繰り返し使う。
眼、唇、コイル、チェス、何度も登場する彼らは、再会の懐かしい気持ちすら呼び起こし、過去と未来が曖昧になる。
映像の中の作品で、振り子に眼がついたメトロノームが登場するが、この作品は「破壊されるべきオブジェ」「最後のオブジェ」「破壊できないオブジェ」「不滅のモティーフ」等々、マン・レイの人生に何度も登場する。
最初は受動的な鑑賞者の眼であったオブジェは破壊され、見るものも芸術に参加することを要求しているのだ。
芸術は国・場所・空間を超えると共に、時間も超えて存在し続ける。
彼の作品の魂は、彼が生涯に渡って繰り返し使いつづけるモティーフ「回転扉」のように、くるりくるりと回りつつ、時間軸の中で自由に行き来するのだ。
そして扉の素材は多分ガラスでできていて、中と外はめまぐるしく変わりながらも、互いを認め合う。
彼の頭の中の世界は、外の現実世界と連動しながらそれを超え、羽ばたこうとするのである。
マン・レイ、光の男。掴もうにも逃げ去り、無数に分裂する光。彼こそは永遠の、そして比類なきシュルレアリストである。

