2006年11月10日にBunkamura ザ・ミュージアムで「スーパーエッシャー展」のオープニングレセプションが開かれた。オランダ、ハーグ市立美術館館長、イメージソングを歌う期待のNew Comer、JiLL -Decoy associationも出席した。 |
一枚の紙の中に緻密に思い通りの世界を構築していく男。美術界の異端児と呼ばれながらも多くの支持者をもつ版画家。極度の独自性で、少年たちのヒーローだったスーパー・アーティスト。
これまでの既存のイメージを打ち破り、エッシャーの本質を紐解く。それが・・・ スーパーエッシャー展。
![]() | 「 スーパーエッシャー展」会場出口付近に設置された、今展特製の「ガチャポン」にコインを入れガチャっとまわすと、あのエッシャー作品の登場物がポンッと登場。全6種。左写真は「でんぐりでんぐり」。何が出てくるかはお楽しみ! |
会期
2006年11月11日(土)-2007 年1月13日(土)※1月1日(月)のみ休館
開館時間
10:00-19:00
毎週金・土曜日21:00まで(12月29日(金)・30日(土)は19:00まで)
※入館は各閉館時間の30分前まで
会場
Bunkamuraザ・ミュージアム
交通案内
※詳細はホームページをご覧ください。
お問合せ
TEL 03-6215-4403(スーパーエッシャー展テレフォンサービス)
Edeitor's review
エッシャーの木版画やリトグラフには、職人技的な精緻さがある。
それはダリの絵画の緻密さとも似た、神経症的な技術力を観る者の感覚に刻印する。
ダリの絵の深刻で高尚な生真面目さと異なるのは、エッシャーの一部の作品の中に見える漫画チックな緩みだ。
通俗的とも見えるその弛緩したユーモアが、当時の評論家たちをして、エッシャーの作品を芸術作品と見なそうとさせない起因になっていたのかもしれない。
逆にそのような通俗的センスが、70年代のポップアート時流の中で、エッシャーの作品が多くのデザイナーに喝采されたとも言えよう。
だが以上のような考察は、エッシャー作品の表層を捉えているに過ぎないのかもしれない。
エッシャーの創造性の核心は、「平面の正則分割」と呼ばれる作品の中にあるように思われる。
スペインのグラナダにあり、かつてイベリア半島がムーア人に支配されていたときに建てられた、偶像を刻まないイスラム教独特の幾何学的装飾模様を特徴とするアルハンブラ宮殿。その建築物のタイルのモザイク模様に用いられていた「平面の正則分割」が、エッシャーの創造性をインスパイアしたという。
今回の展覧会の中で「平面の正則分割」を最も端的に表現しているのは、《円の極限 Ⅳ(天国と地獄)》という作品だ。
これは、天使と悪魔というモチーフを使い、この二つの組み合わさった絵が、1/2、1/4、1/8、1/16、1/32…と正則分割され続けていき、縁に行くほど小さくなりながら隙間なく円形を埋めている2色刷りの木版画である。
限られた円形の平面の中に、無限の正則分割が存在し得るのを、この木版画は表現している。
これは一種の曼荼羅でもある。
神仏の図像を描いて神界の無限性を平面上に表現した曼荼羅と同様に、エッシャーの「平面の正則分割」作品は、数学によって捉えられる宇宙の法則性を、平面上の図像によって描き得ることを示したものだと言える。
我々は平面図を視覚で捉えることしかできない。
数学は、視覚では捉えられない宇宙の法則を数式よって抽象化するわけだが、エッシャーはその神秘的な法則性を、平面図像によって視覚化しているのだ。
我々はエッシャーの作品を視覚で捉えることができる。
視覚で捉えた「平面の正則分割」作品を、己の魂に沁み込ませることにより、視覚では捉えられない宇宙の法則性を、魂の中にしっかりと刻むことができるのだと思う。
[text by Junichi Ishikawa]


2006年11月10日に