ハワイ在住の作家ジェイソン テラオカによる、日本における初個展。新作シリーズの絵画「隣人」を中心に紹介。 |
「ジェイソン テラオカ:隣人たち」
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1,2,3すべて ジェイソン テラオカ《隣人》より (展示風景)
紙にアクリル絵具、インク、低酸性接着剤 各20×16cm(88点組)
2005年‐2006年
本展は、ハワイで活躍する、ジェイソン・テラオカの日本における初の個展です。展示の中心となる作品は、88点組の絵画「隣人」シリーズ。「隣人」は、作家が日常の生活で目にした光景や、テレビや映画や雑誌といったものからインスピレーションを得たひとこまの集積です。絶望の淵に立たされているもの、自らを哀れむもの。
こうした人々を生みだしている社会を風刺する一方で、作家はわけあり顔の登場人物たちを人間味豊かに描いています。笑っているとも怒っているとも嘆いているともみてとれる人物の表情は、われわれに謎解きを仕掛けているかのようです。登場人物が今どのような局面に立たされているのか、これからどのように展開していくのか、予想しがたい意味ありげな舞台設定ゆえに、私たちは好奇心を掻き立てられ、不思議なざわめきを感じずにはいられません。
開催期間
2006年11月3日(金)-2007年1月14日(日)
休館日
毎週月曜日(祝日の場合は、翌日休)、12/28-1/5
入場料
一般1000円/高・大生700円、小中生500円(原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高校生の入館無料、20名以上の団体は1人100円引)
電話
03-3445-0651
開催場所
原美術館
東京都品川区北品川4-7-25
交通案内
JR「品川駅」高輪口より徒歩15分。タクシー5分。
都営バス「反96」番系統「五反田駅」行、
「御殿山」停留所下車、徒歩3分。
駐車スペース有。
Editor's review
ドヨ~ンと薄暗くなんとも不穏だけど、どこかキッチュで憎めない、そして小気味よい胸騒ぎを起させる絵。ジェイソン・テラオカの88点組の絵画「隣人」シリーズを観てそう思った。ハワイ生まれで、同地で制作を続けているというのだが、ハワイという環境要因(開放的な常夏のリゾート地のイメージ)にまるで影響されていない陰鬱さは一体何なのだろう。またそれを助長する絵の表面の大半を覆う、液状の黒い霧のような、猛毒性植物の胞子のようなおどろおどろしいマチエール。(この手法は、作家が低酸性接着剤を絵にかけてしまい偶然発見。)そしてその世界の主人公である、いかにも「ワケアリ」な人々。頭に斧が刺さっているのにいまだ気づいていない人、なぜか血を流す人、片手にはさみやエッフェル塔らしきを持ち静かな狂気を覗かせる人、人生を諦めたかのような不適な薄笑いを浮かべる人、そして何食わぬ顔で登場する本物のモンスターたち。
彼らがなぜ、そのような状況にあるのかの説明は一切無く、単に一場面のみを切り取っている。あとはご想像にお任せしますとばかりに。とにかく、ここに「まとも」な人物は登場しない。そもそも「まとも」の基準自体不確かだが、「まとも」じゃないなりに不健康に病んでいる感じがしないのが不思議だ。その原因が絵面のPOPさからか、はっきりは分からないけど、彼らが見せるせめてもの愛嬌に救われているのかもしれない。
これらの人物は独特な筆致による黒い線で丹念に描き起こされている。“曖昧な背景”から浮かび上がらせるための呪文のように。
制作する上でのインスピレーションは昔のホラーやサスペンス映画(お気に入りはアルフレッド・ヒッチコック)、作家自身が日常の生活で目にした光景やテレビ、雑誌などから得ているとのこと。じっくり観ていくと、作者がどんな場面でどんな人間に興味を抱くのか、また愛着を感じているのか、わかるような気がする。それはきっと社会的にわりと立場が弱くて、何か少し場違いな存在としての座りの悪さのようなものを感じている人々に、そう思っているのかなと私は思う。
作者自身、ハワイとはいえホノルルから離れたカウアイ島出身のまったく日本語を話さない日系4世であること、ホノルルで生活する上ではよそ者であるといった背景も彼の作風に影響しているのかもしれない。
今回は「隣人」シリーズのほか、1995年からの過去の作品も展示。キャリアとしては決して長くは無いが、ジェイソン・テラオカの創作の歴史もぜひこの機会にご覧いただきたい。
[text by Junko Matsuda]

