■ 「大竹伸朗 全景 1955-2006」展 大竹伸朗に埋もれろ!
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◆空前絶後の展覧会!! 東京都現代美術館(以下:MOT)の企画展示室の全フロアを使用する個展が行われる。聞けば、その面積は国内最大級で、展示は3から1階、地下2階、屋上にまでも及ぶという。そしてそれを埋めつくす程の作品点数は2千点! もちろん、このような規模での展示は、日本作家の個展としては初めての規模だそうだ。一体、誰の個展が開催されるのだ?! それは、大竹伸朗だ!! |

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◆大竹伸朗とは?! コラージュ絵画、スクラップブック、ガラクタから作り出されたオブジェ、絵本『ジャリおじさん』、ボアダムズのヤマタカEYEとのユニット『パズルパンクス』…、これらはすべて大竹伸朗氏に付随するワードである。 氏は、幼い頃より創作活動を続け、1974年に武蔵野美術大学油絵学科に入学。しかしすぐに休学をして、北海道の牧場で働く。そしてその約2年後にはイギリスに滞在。同地でも北海道同様、様々な情景を撮影またはスケッチする。そして、1982年から個展を開催。「ニューペインティングの旗手」のコピーとともに、世の中に広く知られることとなる。 目に映る世界(時には夢の中までも!)すべてを素材とする。その表現手法は、描くだけでなく、切ったり、貼ったり、撮ったりと、人々のイメージや既存の枠組みを超えて形にしていく。その作品ジャンルは、絵画だけではなく、オブジェや写真、本に絵本、音楽までもと、実に多彩に展開している。 そんな氏の影響力は、現代美術の世界にとどまらず、写真、デザイン、文学、音楽など、世代を超えてあらゆるジャンルに及んでおり、国内外を問わずファンが多い。大竹伸朗とは、もはや現代美術作家だけの枠組みにはカテゴライズできない存在なのである。 ◆全景とは?! 大竹伸朗氏は、5,6歳頃より、ほぼ毎日のように創作活動を続けてきたという。そしてその作品数は、現存するものだけでも、3万点以上に及ぶそうだ。今回の展示数「2千点」も圧巻だが、氏が世の中に生み出してきた作品数と比べたら、この数字がかわいいものに思えてくる。 氏にとって創作活動とは、ライフワークの1つであり、自分がわからないものを理解するプロセスの1つなのだという。例えば、描くことを例にあげると、キャンバスは外の世界とつながっている窓のようなもの。氏はそこに、内側から出てくる衝動をそのままぶつけたり、見たものを何かに置き換えたりして、この世に形として表していく。そのような外の世界との関わりは、必ずしもいつも楽しいこととは限らない。しかしそうすることが、自分の中で整理し、理解する手段なのだという。 今回の展覧会を「人体実験のようなもの」と氏は語る。実験されたことは、「人間は、幼い頃からノンストップで創作活動を続けたら、50歳を超えた時に世界はどんな風に見えるのか?」 本展覧会はその結果をみせる場でもあるのだという。そんな氏のことば通り、展示は時間軸で納められており、氏の少年時代から現在までの作品を順を追って見ることができる。 例えば少年時代のスケッチ、牧場にいた頃の写真、64冊にも及ぶ「スクラップブック」、コラージュ、絵画、オブジェ、そして本展のために制作された新作まで。会場は、選りすぐりの2千余点の作品群で埋めつくされている。ゆとりのあるスペースの定位置に絵画がかけられているのではない。巨大な敷地の隅から隅まで、1点1点が見応えのある作品で埋め尽くされているのだ。だから、すべてを十分に見尽くすのにも、少々体力が要りそうだ。 ◆展覧会という実験空間 「作品群の中に身を置いた時、どんな感情が生まれるのか?」 これは、本展覧会こと“人体実験”の空間で、氏が知りたかったことの1つである。そしてこの実験の結果は、観覧者自身も身をもって知ることができる。 氏は最後の一点を展示した後の記者会見にて、「まだ展示は終わっていないような、今後も作業が続くような感覚だ」と、語った。氏は、つい2時間ほど前に描き終えたばかりという最後の一点を展示する瞬間を非常に楽しみにしていた。子供の頃から、毎日自分の手で作ってきたものが、この空間に一挙に存在するのだ。その瞬間は、さぞかし感慨が深いものだろう…と。しかし、実際は非常にあっさりとしたものだったいう。そして氏は、「あと5,6回は繰り返して見ていかないとな」と、続けた。時間をかけて、この実験の結果を理解していくつもりなのである。 この実験は、お金をかけただけでは成立しない。素材・タイミング・スペース・人間…すべての要素が合致しないと実現し得ないことなのである。氏自身も「僕の一生の中で今後このような機会は、もうないと思う」と、語るほどの。これだけの規模で、これだけの点数が展示されるのは非常に稀なことである。そんな“稀な空間”が、約2ヶ月間MOTに出現する。またとないこの機会! 是非、本展覧会(実験)に参加して欲しい。 氏は語る・・・・ 「この展覧会のどの作品を見て欲しいか?」とよく聞かれるが、その答えは存在しない。ただ、一人の人間が、子供の頃から毎日手で作ってきたものの中に身を置いて欲しい。そこからどんな感情が生まれて、観た人のその後の生活に、どのようにリンクしていくのか楽しみだし、僕自身もこの作品群の中でどのような感情が生まれていくのか楽しみだ・・・・・と。
Text: Shinobu Sasaki
※この記事は以下の取材を参考としています。 10/4 日本初の美術館ラジオ「Mot the Radio」収録時 10/13 「大竹伸朗 全景 1955-2006」記者会見時 |
《スクラップブック#32》Photo:(c)平野晋子 ![]() 《死産》 1974年 ![]() 《ストラト》 1975年 作家蔵 《ミスターピーナッツ》 1978-1981年 個人蔵![]() ![]() 《日本景/東京ll》 1997年 作家蔵 ![]() ![]() 《ダブ平&ニューシャネル》 1999年(ステージ部)作家蔵 Photo:中野正貴 ![]() |
◆所感:「大竹伸朗に埋もれてみて…」 Text: テンちゃん ※プロフィール参照
圧巻! まさに圧巻! そんなに動いていないはずなのに、体力を消耗したような、そんな感覚になりました。力強く、とてもパワフル! もちろん、作品1点1点の印象は異なり、和やかなものや、おもろいものまでさまざまですが、後日この展覧会のことを思い返すと、そんな印象が浮かぶのです。
思い起こせば、私が大竹さんの名前を知ったのは、ボアダムズのヤマタカEYEさんとのユニット『パズルパンクス』から。しかし当時は、その音楽だけに満足してしまい、大竹さんについての知識は、「現代美術作家」という肩書きを知るのみでした。
そしてあれから約10年。当時高校生だった私は社会人となり、幸いにもこのような大回顧展に出会うことができました。そして、1階展示室「網膜」シリーズを鑑賞中にふと聴こえてきた、地下2階の遠隔演奏ノイズバンド「ダブ平&ニューシャネル」のミュージック! この瞬間は、実に幸せな瞬間でした。
大竹さんが“脳みそで見る絵”と語る「網膜」シリーズは、なにをなんに例えて伝えればいいのか、適切なことばすら見当たらない絵。フィルムを露光して作ったという不思議な色と、その上からかけられた透明な樹脂が、キラキラ反射して、なんとも言えない不思議な心地よさを感じさせます。そんな絵を鑑賞中に聴く、ダブ平の音楽は実に心地良い! そして次の瞬間、ある記憶が引き出されました。
「そうだ、私は高校時代にも大竹さんの作品を見ていた」
実は先に述べました大竹さん作品との出会いの記憶は、この瞬間に引き出されたのです。そして、テレビでも大竹さん作品を見たことがあることなども。「網膜」シリーズもダブ平も、私の高校時代も、すべて時間軸が異なるのですが、なぜかこの瞬間にすべてがリンクしたような気がしたのです。
「大竹伸朗に埋もれてみて…」、私の埋もれた記憶がよみがえりました。うまいことを言うコーナーではないのですが、そんなサプライズも起こったのです。この瞬間は、実は2度目となる大竹さんとの出会いから、ずっとつかえていた何かがやっと取れたような、そんな幸せな瞬間でした。
「大竹伸朗 全景 1955-2006」
■会期:12月24日(日)まで
■開館時間:10:00-18:00(入場は閉館の30分前まで)
■休館日:月曜
■会場:東京都現代美術館企画展示室 全フロア
■観覧料:当日 一般1400円/学生1100円/中高校生・65歳以上700円
【案内】
住所:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
電話:03-5245-4111(大代表)
【交通】
・東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2出口から徒歩約9分
・東京メトロ東西線「木場駅」3番出口より徒歩15分
・都営地下鉄・大江戸線 「清澄白河駅」A3出口から徒歩約13分
・都営新宿線「菊川駅」A4番出口より徒歩15分
東京都現代美術館のホームページ




《ミスターピーナッツ》 1978-1981年 個人蔵




Illust: Shiro