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 内覧会レポート!東京都庭園美術館「舟越桂 夏の邸宅」

 2008年7月18日、東京都庭園美術館で開催された、内覧会の模様です。

舟越桂という名は知らなくても、作品はどこかで眼にしたことがある、という方もいらっしゃるかと思います。天童荒太『永遠の仔』や須賀敦子『コルシカ書店の仲間たち』、五木寛之『人間の関係』など、本の装丁として作品が使われることも多く、はるか遠くを見据えた静かで力強い眼差しは、深く私たちの印象に残ります。 

会期:2008年7月19日(土)-9月23日(火・祝)




 2003年に東京都現代美術館で開催された舟越桂さんの個展から5年。2008年の今年、ここ東京都庭園美術館にて、再び舟越桂さんの個展が開かれます。共に、キュレーションを行ったのは、現在、庭園美術館副館の塩田さん。この5年という月日のなかで、大きくその作風に変化のあった舟越さん。人間を追求する中で、辿り着いたスフィンクスという異形の姿は、私たち人間を映し出す鏡となるのかもしれません。
 また、本展はホワイトキューブ(白い壁、天井に囲まれた空間)とは違った、かつて人が住んでいた生活空間での展示ということで、舟越作品とどんな化学反応を起こすのかも、大きな見所となっています。ここでご紹介できるのは、ほんの一部ですが、舟越桂「夏の邸宅」へようこそ! 

 
左: 門を抜けて、美術館の建物へのアプローチ。左右から青々と茂る木々の陰が濃く、とても涼しげ。
右: 美術館の建物に到着。さあ、これからどんな世界が始まるのでしょう!

 玄関ホール入ってすぐ左、さっそく舟越作品《戦争をみるスフィンクス》2005年、がお出迎えです。凛とした佇まいが、周囲の空気を引き締めます。

  
会場入ってすぐの展示室。正面に堂々と立つ《森に浮くスフィンクス》2006年。迫力です。近年、舟越さんが追い続けている、スフィンクスのシリーズのひとつ。
スフィンクスといえば、両性具有で、半獣半人、ギリシア神話では、通行人になぞなぞを吹っかけ、答えられなかったものを食べてしまうという恐ろしい怪獣ですが、ここでの表情はいたって平静。そして、重力に抗うかのように4点の木の棒で宙に浮いています。

 
本展の見所のひとつ、ドローイングも多く展示されています。彫刻に起こす前に描かれるこれらのドローイングは、なかなか展示されることは無いので、貴重な機会です。

 
左: 写真左、白いジャケットの方が舟越さん。右のスーツ姿の方が、担当学芸員(庭園美術館副館長)の塩田さん。
右: 一階、食堂の展示模様。静謐さの中に、作品たちの心の動きが見えるようです。

  
《遠い手のスフィンクス》2006年。一階、香水塔の奥の部屋での展示。この部屋は、先ごろ改装を終えたばかり。スフィンクスたちの長い耳?は、革で出来ています。

 
《雲の上の影》2002年。舟越さんの作品は楠からつくられます。

 
《肩で眠る月》1996年。舟越さんの作品タイトルはどれも詩的です。

  
《見晴らし台のスフィンクス》2008年。一番右の写真はそのドローイング。
頭の上からひょっこり覗いている人物は、なんと舟越さん自身!私たちの住まうこの世界を、ここから見晴らしているのでしょうか。

  
「顔」のドローイング。1997-2004。どこかで見たことあるような顔、知らない顔、様々な顔が並びます。
この展示室に限り、各ドローイング作品名の対応表を借りることが出来ます。
右の写真、中央は、舟越さんの自画像。よく似ています。

 
《風をためて》1983年。舟越作品は、しばらく着衣が基本でしたが、ヌードが登場したのは近年になってから。《風をためて》がつくられた当時は、ありふれた何の変哲も無い服に身を包んだほうが、ヌードよりも内面を伝えられたのでしょう。そんな時代の空気感が伝わってきます。
作品の顎の下まで、ぐっと近づくと、ギロっとこちらを見るんじゃないかと思わずドキッとします。

 
舟越さんが参加する、名作とされるお話を絵巻にして、世界にアピールするNPO活動の一環として、制作された、ピノキオのドローイングと立体模型。2007年。

 
《夜は夜に》2003年、とそのドローイング。男性器のようにもみえる形状です。

 
《夏のシャワー》1985年。書庫に佇む、知的で落ち着きあるその姿は、まるでこの館の管理人のよう。

 
《森へ行く日》1985年。書斎には番人?が、どっしりと。

  
《遅い振り子》1992年。館内のあちこちの壁にかかる大きな鏡も、効果的に展示に活用されています。

 
 
舟越さんは、版画も手がけています。こちらも見所。
1987年から、3年おきくらいに断続的に制作するのですが、サンフランシスコや東京の版画工房にカンヅメになって集中するそうです。銅版の上に石鹸で描くソープグランドなど、あえて不自由な描法を選択します。版画作品は本展中、20点ほど展示されています。

 
《言葉をつかむ手》2004年。わぁ、すごくきれい!と思わず唸ってしまった作品。洗面所のヒンヤリした空気の中に、すっと立ち上がる綺麗な人、この人は誰なんだろう。

 
 
《戦争をみるスフィンクスⅡ》2006年。こっ、怖い顔…。でもよく観ると哀しんでいるようにも観えます。この地上で繰り返される戦争を憂いているのでしょうか。

 
 
《白い歌をきいた》1984年。一瞬、青木さ○か嬢に似ているような?舟越作品は、誰かに似ているんですよね。

  再び2階から1階に戻り、内覧会終了。ふぅ。ふと開かれた明るい扉の外。でも何かがいつもと違う。やはりこの邸宅には魔術的な何かが住んでいる。そう思わずには居られない、妖しくも美しい、不思議空間。暑い夏にぴったりの避暑地?あなたもぜひ遊びに来てくださいね!

◆おまけ1
舟越作品の目玉は、大理石で出来ています。後頭部に入口があって、アクリル絵の具で彩色された目玉をはめ込むのです。

◆おまけ2
舟越作品とは、どうやっても眼が合いません。焦点を合わせないのには、訳があるのか気になって、舟越さんに直接お伺いしました。すると、「昔から、遠くをみている眼が好きで、遠くをみる時ってどうしても眼が開くでしょ?遠くをみている人が一体何をみているかと言うと、結局自分の内面をみているんだと思うんです。」 …嗚呼、彼らは、自分の内面をみているのですね。人間とは?と考え続ける舟越さんの視線もまた、自分の内面を捉え、それはすなわち、人間を知るということに繋がっていくのでしょう。

◆おまけ3
会期はじめから販売される本展図録は1800円ですが、なんと会期後半から、庭園美術館での展示風景写真を使用したパンフレットも販売されるそうです!


[ text by Art inn編集部] 
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