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 展覧会レポート!国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展 国立新美術館が、特にテーマを設けることも無く、独自の視点でチョイスした作家を取り上げていく本展。昨年の第1回に引き続き、第2回めの今回はジャンルも世代も様々な、9名の作家が出揃いました。ひとりづつ、個展形式で見せていく、現代美術の多様化を楽しめる展覧会プロジェクトです。

会期:2009年3月4日(水)~5月6日(水)

以下、ひとりづつざっと追っていきます♪


↑大平實 | Minoru Ohira 彫刻
1950年 新潟県生まれ。現在、アメリカ、カリフォルニア州パサデナ在住。

東京藝大大学院卒業後、新婚旅行で世界各地を周り、そのまま海外に住み着いてしまったのだそうです。そして今も、自分の本質を探りながら、南米やインディアンの文化に影響を受けつつ、触感を手がかりに、木や石を素材とした彫刻を作っています。
有機的でユニークな形の彫刻たちは、山や砂漠で拾った木や樹皮、廃材などを利用しています。プリミティブな魅力溢れる作品たち。この形体を通して、魂が出たり入ったりするのを思わず想像。こういうの結構好き。

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展石川直樹 | Naoki Ishikawa 写真
1977年 東京都生まれ。現在、東京都在住

ご存知、冒険家・写真家の石川さん。本展では、近作である、北極で撮影した”POLAR”、洞窟壁画を撮影した”NEW DIMENSION”、世界各国の各土地特有の住居を撮影した”VERNACULAR”、雪の富士山を撮影した”Mt. Fuji”を展示。
ほんとうにあちこち周っていらっしゃるなと。自分じゃなかなか行けない様なところまで撮ってくれているのが、ありがたい。有る意味カタルシスになっているような。いつも思うのですが、この方の眼線は、なんてシンプルなんだろう。変な色眼鏡やクセがないように思う。

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展金田実生 | Mio Kaneda 絵画
1963年 東京都生まれ。現在、東京都在住

ファンタジックでノスタルジックな印象の、かわいらしい絵画たち。油彩やクレヨンで、紙やキャンバスに描いています。絵自体が、呼吸をしているような、生きているような、不思議な感覚。ほのかな発色から体温やいい匂いがしそうにも感じられる。本の装丁などに良いのでは?と思ったりしました。他にももっと観てみたい。

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展 国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展
齋藤芽生 | Meo Saito 絵画
1973年 東京都生まれ。現在、東京都在住

まず、一言、エログロい…かな。小さい頃、団地に住んでいた斎藤さんは、団地の立たずまい、連続する窓などの構造をよく目にしていました。毒気を帯びたモチーフと表現で、大変緻密に、団地や花輪、空想上の植物画などにストーリーを持たせながら描いていきます。
展示室は二つに分かれていて、奥の祭壇のような趣の展示室では、《四畳半みくじ》が楽しめます。何が出るかはお楽しみ~。一回200円也。

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展津上みゆき | Miyuki Tsugami 絵画
1973年 東京都生まれ、大阪府に育つ。現在、神奈川県横浜市在住

大きな画面でたっぷりと自由に色を置く津上さんの作品は、展示室に並ぶと、とても爽快。風景画とのことですが、言われなければ、抽象画のようです。2008年5月に、国立新美術館で開催されたオーストラリア、アボリジニの画家、エミリー・ウングワレーを思い出しました。

本展では、倉敷市の大原美術館で滞在制作した、日本古来の暦に縁深い二十四節気をテーマとした作品や、普段はなかなか観ることのできない、作家のスケッチやドローイングも展示。

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展村井進吾 | Shingo Murai 彫刻
1952年 大分県生まれ。現在、神奈川県川崎市在住

矩形の一見ミニマルなグレーの石の群れが、静かに静かに林立しています。村井さんは、一貫して石の彫刻を作っているそうです。几帳面な仕事ぶりは、言葉少なに、存在感をしっかりと持ち、モダンな禅のような印象を受けました。
石の一部を直線的に穿ち、水をたたえた作品がいくつかありましたが、普遍的な静寂とストイックな美しさを感じます。

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展ペーター・ボーゲルス | Peter Bogers 映像
1956年 オランダ、ドルドレヒト生まれ。現在アムステルダム在住

ボーゲルスさんは、映像を使って、時間や空間、宗教や言語の世界を解体して行きます。
大画面に映し出された怪しげな男性の顔。何かしきりに喋っています。男性の声に続き、会場にたくさんぶら下げられた小さなスピーカーから、歓声のような声がどよめきます。一体何ごと??
どうやら”瞑想”について、脳の話と絡めて語っているようです。スピーカーからのどよめきは作家さん曰く、子守唄のようなイメージだそうですが、私には、教祖と信者のやり取りのように聞こえたのでした…。実際、画面上の男性は、瞑想の方面では有名なアメリカ人男性だそうです。

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展 国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展
宮永愛子 | Aiko Miyanaga インスタレーション
1974年 京都府生まれ。現在、京都府在住

ナフタリンで身の回りのものをかたどり、時間と共に消えていく儚さのある作品で有名な宮永さん。本展では、ナフタリンの作品に加え、貫入という、陶器の釉薬がひび割れる音をテーマに展開しています。会場一杯に聳え立つ古い引き出しや木箱のタワーの中に、まるで記憶の忘れ物のようにナフタリンでできた小物たちが隠れています。時計であったり、ごくごく小さな椅子であったり…。
また、木箱のタワーの間のガラスの棚に、貫入音の元となる陶器が並んでいます。静かに耳を澄まさねば聞くことのできない音たちです。

国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」展
平川滋子 | Shigeko Hirakawa インスタレーション
1953年 福岡県生まれ。現在、フランス、パリ近郊シャトゥネー=マラブリー在住

東京藝大の油絵科を出た後、渡仏し、日本とは環境問題への取り組み方に大きな違いがあることに気づいた平川さん。以降、ランド・アートや環境アートの方面へと向かいます。
本展では、光合成を視覚化できる円盤状の装置を、国立新美術館の外の木に、たわわに実る果実のごとく取り付けました。昼間は太陽の光を浴びて紫色になり、夜になると白く変色していきます。
会場には、取り付け作業の模様が映像で見られます。アートをとおして環境を考えるいい機会となるでしょう。

 ありとあらゆる角度から、自分の本質を探り続ける、世代を超えた作家たちの息遣いが聞こえてくるような展覧会でした。個展形式なので、各作家の作品を掘り下げて観測できるのがよかったです。昨年のアーティストファイルは8人だったので、今年は、9人目からカウントされます。今後も楽しみなプロジェクトとなりそうです。

また、関連イベントも多数有り。ぜひ参加して、より深く、作家の息吹に触れるのも良いでしょう☆

[ text by Art inn編集部] 

関連イベント(予定)

アーティスト・トーク
作家:ペーター・ボーゲルス、平川滋子
日時:3月7日(土) 14:00-16:00
会場:3階研修室A・B

作家:村井進吾、宮永愛子
日時:3月28日(土) 20:00-21:00
会場:2階展示室2E

作家:津上みゆき×佐野みどり(学習院大学教授・日本美術史)
日時:4月4日(土) 14:00-15:00
会場:3階講堂

作家:石川直樹
日時:4月10日(金) 18:00-19:00
会場:3階研修室A・B

作家:齋藤芽生、金田実生
日時:4月18日(土) 14:00-16:00
会場:3階研修室A・B


アーティスト・ワークショップ
作家:大平 實
日時:3月8日(日) 13:30-16:30
題名:「ミニチュア・ムシワールド ~虫からみた世界をつくろう~」

作家:村井進吾
日時:4月5日(日) 13:30-17:00
題名:「石から生み出すいろいろなカタチ」

※各イベントの日時や内容は変更される場合がございます。
※詳細は確定しだい随時更新していきます。


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