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 展覧会レポート!国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」 野村仁(ひとし)は、1945年、兵庫県生まれの現代美術作家です。アートとテクノロジーの間を行き来するような作品を、1960年代末から発表しています。野村氏の作品は、「もの派」(※批評家峯村敏明氏の定義によると、「1970年前後の日本で、芸術表現の舞台に未加工の自然的な物質、物体を、素材としてでなく主役として登場させ、モノの在りようやモノの働きから直かに何らかの芸術表現を引きだそうと試みた」運動)の流れを汲み、「物が今ここに在るということはいかなることか」、「物や時間によって成り立っているこの世界とは何なのか」を、私たちに問い掛けます。
 本展は、約40年に渡る野村氏の活動を振り返る、東京初の大回顧展。「自分が感じているものが『世界』である」という”当たり前の感覚”が、大きく揺さぶられる展覧会です。


会期:2009年5月27日(水)~7月27日(月)

以下、気になった作品をピックアップ♪


↑ 大学の卒業制作として発表した作品のリバイバル。家の軒下で風雨や夜露に晒され、変形し崩れていくダンボール箱の積み重ねを見て、意思とは関係なく変化していくものがあることに衝撃を受け、制作。国立新美術館の高さ8メートルの天井に届かんばかりのダンボールタワーは、会期中、自重による崩れを伴いつつ変形し続けます。

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」
 姿こそ見えないけれど、いつも私たちの身の回りに存在する酸素。こちらの作品、なんと酸素を-183度まで冷やしたもの。ここまで低温になると酸素は液体になるのです。しかもものすごくキレイな水色!よく知っているはずの酸素に、こんな一面が有ったとは!

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」
 野村氏の日常を、様々なものによって記録したものたち。公衆電話から見た光景を即物的な声で伝えるものや、買い物中の店員との会話を録音したもの、伝票類、何かの台本のようなもの等など。野村氏の日々の記録への飽くなき探求が伺えます。

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」
 美しく且つポエティックな作品。野村氏は、見上げた夜空の電線越しに、月が浮かんでいるのを見て発想。電線を五線譜、月を音符に見立て、弦楽器による月の神秘的なメロディが会場に流れます。これはぜひ、実際に会場でお聞きいただきたい。偶然の発見の中に、自然の摂理をぼんやり実感できます。

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」 国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」
 一年間を通して、一日の太陽の運行の様子を魚眼レンズ付きカメラでシャッターを開放し、定点撮影したものを、太陽の描いたカーヴに合わせて並べたもの。実に美しい曲線。予期せぬ自然の持つ美しさにただただ驚かされます。

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」
 本物の隕石が、本物の飛行機の比翼の上にフワリと留っています。はるか彼方の宇宙から地球にやって来た隕石を、「ようこそ!」と迎えているかのよう。また隕石は、地球上の生命の起源に深く関わっているという説もあるそうです。

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」
 化石化した楠木を、現代の楠木に接ぎ木した作品。各細胞も珪素と化し、気の遠くなるような時間を掛けてゆっくりと化石になった楠木に、現代の木によって再び生命力を与えてみようというもの。
 またすぐ隣に、これら化石化した楠木が、今もなお、化石化することなく育っていたらどれだけ大きくなるかの予想地図も展示。(笑)兵庫県からもくもくと広がった同心円状の範囲は、近畿、中国地方をスッポリ覆うほどに!

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」
 ガラスケースの中で、植物たちが、色とりどりの光に照らされています。この作品は《Chromatist Painting》という色彩言語によるコミュニケーションを植物へと発展させたもの。可視光の波長は、400nm~700nmで、それぞれの色によって独自の特性があるという観点から、色には言語があるのでは?という見解に至ったもの。各色の光を浴びた植物たちに、一体どんな反応があるでしょう?

国立新美術館「野村仁 変化する相―時・場・身体」
 ソーラーカーでアメリカ大陸を横断する大プロジェクト。野村氏が彫刻を教える京都市立芸大の仲間らと共に決行しました。野村氏は近年、アートの枠を超え、それぞれの分野の専門家らと協力し、大規模なプロジェクトを試みるようになってきています。
 また、実際にアメリカの公道を、一般車に混じって走る映像も流れます。姿勢を横にして、一人やっと乗ることの出来るこの車。太陽の恩恵を存分に感じながらの大冒険が繰り広げられます。

 私は彼の作品をみたのは今回が2回目。初めてみたのは、東京国立近代美術館「ヴィデオを待ちながら ―映像、60年代から今日へ」展(会期:2009年3月31日(火)~6月7日(日))での《カメラを手に持ち腕を回す:人物、風景》 1972年 という映像作品。ハンディカメラを持った腕をブンブン回転させ撮影された映像は、目まぐるしく変化する周囲の景色を映し出し、同時に腕の軌道のスケール感をも表すという作品。不思議な捕らえ方をする人だな~と思っていたところ、今回の展覧会へと続きました。

 いつも目にしていたはずの世界を角度を変えてみたら、驚くべき美しさや法則を持っていたことに気づかされる本展。フランス生まれで近世初頭の哲学者・自然哲学者(自然学者)・数学者であるデカルトは、「あたりまえとされているものを疑え」と言いましたが、野村氏は、このことをより柔らかくユーモラスに捉え、私たちに提示してくれるかのようです。

[ text by Art inn編集部] 

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