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 展覧会レポート!東京都写真美術館 日本の新進作家展vol.8 「出発―6人のアーティストによる旅」

展覧会レポート!東京都写真美術館 日本の新進作家展vol.8 「出発―6人のアーティストによる旅」
[ text and photo by Art inn編集部] 2009/12/25 UP


 「出発」、英語ではVoyageというタイトルの本展。この展示を観れば、どこか素敵な場所へと旅立つことができるだろうか。そんな淡い期待を胸に冬空の下、東京都写真美術館を訪れました。
 本展では、若手から中堅まで個性光る6人の写真家たちが各々の旅の記録を写し出しています。この旅とは、物理的な移動を伴う旅のみならず、架空の地への旅も含まれ、旅人のあり方によって旅の概念も様々です。ではそんな旅の記録、記憶のお裾分けを貰いに一人づつ、簡単にご紹介して行こうと思います。

会期:2009年12 月19 日(土)~2010 年2 月7 日(日) 


↑ ■尾仲浩二さん
 尾仲さんは1960年福岡生まれ。ご自身のお住まいになられる東京を拠点に、電車でフラッと旅をしながら写真を撮っています。観光地は敢えて避け、誰しもかつて見たことのあるような、懐かしい日本の原風景を写し出します。それらの風景は、華やかさとは無縁でどこか物悲しく、記憶の名残のような町という印象です。

 尾仲さんの写真は、皆サイズが小さめで、ご自身でプリントできるサイズだそうですが、旅のスタイルといい写真のサイズといい、身の丈を熟知した大人の余裕を感じます。
 また図録には、尾仲さんの”旅の手帖”からの抜粋があり、日付、天気、場所、その日食べたり飲んだりしたものなどが記載され、静かで淡々としたスタンスの中にも充実感が窺え、微笑ましくなります。

展覧会レポート!東京都写真美術館 日本の新進作家展vol.8 「出発―6人のアーティストによる旅」■百瀬俊哉さん
 百瀬さんは1968年東京生まれ。現在、九州の大学で教鞭を撮りながら、纏まった時間を見つけては海外へ旅しています。本展では、百瀬さん念願の地、インドを写し出します。
 インドというと、街の喧騒や急速に発達する都市の圧倒的な勢いを想起しがちですが、百瀬さんの撮るインドは全く逆の静寂です。
 メインストリートから1本入った裏通りには、表通りからは想像つかないほどの静寂が有るのだそうです。人が誰も居なくなったところを根気良く待ってシャッターを切るので、日に数カット撮れるかどうかだとか。

 また、百瀬さんの写真で印象的なのは、空気の青さ。静寂に良く合った青い空気がそこには静かに存在しています。夕方4時頃、わずか10~15分くらいの青い時間を逃さず捉えるのです。百瀬さんの旅は通過する旅ではなく、土地の空気を捉えるまで滞在する旅なのでしょう。

展覧会レポート!東京都写真美術館 日本の新進作家展vol.8 「出発―6人のアーティストによる旅」■石川直樹さん
 石川さんは1977年東京生まれ。ご存知、世界中を旅しながら制作を続ける写真家の方ですが、本展では写真集『Mt.Fuji』(2008年)から出展。本展はパリ日本文化会館でも同時開催しているため、日本の心、富士山の写真は海外の方には伝えやすいモチーフであることからチョイス。
 
 石川さん曰く、今回は世の中のステレオタイプな富士山写真のイメージを引っぺがしたかったとのこと。一般人にはなかなか踏み込めない領域を貪欲に写し出します。石川さんの、もっと観たい、もっと経験したいという素直な欲求が爽快で、淀みの無いまっさらなエナジーを貰えます。
 
 また石川さんのコーナーに入ってまず目に飛び込んでくる形体に、思わずニヤリ。小さめサイズの富士山写真をまさに富士山型に壁にディスプレイ!遊び心満載のこのアイデアは石川さんご本人によるもの。うう、可愛らしい。

展覧会レポート!東京都写真美術館 日本の新進作家展vol.8 「出発―6人のアーティストによる旅」■百々 武さん
 百々さんは1977年大阪生まれ。これまで「島」を撮り続けています。
 なぜ島かというと、百々さんが最初に旅した屋久島では、縄文杉が太古の昔から今も悠然と時を重ねながら息づき、一方屋久島から程近い種子島では、宇宙へとロケットが発射するというギャップに驚き、島というものに興味を持ったのだそう。
 島には、日本でありながら、ある種独特の時間の流れが存在し、加速したり、止まったり、島ごとにオリジナリティ溢れる時が流れているのです。

 また百々さんの写し出す島の風景はどこか懐かしく、私には時を感じさせないように見えました。20年後、この風景を写したら、今と変わらない風景が撮れるかもしれないですねと感想を述べると、百々さんはそれが理想だと仰いました。自分はタイムリーな写真は撮れないけれど、タイムレスな写真家を目指しているのだと。百々さんには、これからもずっと、島を撮り続けていって欲しいです。

展覧会レポート!東京都写真美術館 日本の新進作家展vol.8 「出発―6人のアーティストによる旅」■さわひらきさん
 さわさんは1977年石川県生まれ。現在ロンドンを中心に活躍されています。本展では、モノクロの室内に飛行機がゆったりと飛び交い離着陸する映像で一躍世界的に知られることとなったリメイク版を出品。本作品はミュージシャンのデビッド・シルビアンのPVに使用されています。

 オシャレで幻想的、そしてどこかメルヘン。静謐でちょっと薄暗く儚なげな印象の映像は一度見たら忘れられません。この独特のテイストはどこから?の質問に、さわさん曰く、「裏日本出身だから。」とお茶目なご回答が(笑)。出身地の記憶は根深いのですね。

 
展覧会レポート!東京都写真美術館 日本の新進作家展vol.8 「出発―6人のアーティストによる旅」 また本展では、古い木製の小型トランクにモニターを内蔵し、これまたちょっと薄暗く且つメルヘンな映像を移し出します。アンティーク家具がお好みのさわさんご自身のコレクションの木箱なのですが、これが最後の一つだったとか。繊細で可愛らしい音楽と共に、ここにもさわさんのワールドが展開します。



展覧会レポート!東京都写真美術館 日本の新進作家展vol.8 「出発―6人のアーティストによる旅」■内藤さゆりさん
 内藤さんは1978年広島生まれ。本展では、2009年に出たばかりの写真集『4月25日橋』より出展。この気になるタイトルは、ポルトガルの橋の名前で、革命の日付に因んだもの。なぜポルトガルかというと、歴史の上では良く耳にする国だけど、実際行ったらどんな感じなのかと気になり旅をされたそう。
 
 内藤さんの写真は、まず透明感溢れる柔らかで可愛らしい色使いが印象的。なんとこちらの写真、インクジェット・プリントなのだとか。写真はツルッツルの印画紙にプリントされることが多いのですが、目を近づけてじっと画面を見つめると、照り返しが少なく柔らかな風合いの紙肌が、内藤さんの写し出す穏やかな世界観とよくマッチしています。

 また内藤さんは人を抜きにして風景を捉えることにもこだわりました。人の不在によって、よりその国の雰囲気、空気感を味わいたいから、とのこと。しっかりと伝わってきますよ。

  6人6様の旅の有り方は、当初思っていたよりも様々で楽しめました。いつか私も旅に出て、それは心の旅かもしれませんが、その時の心の有様で見えてくる景色、感じることが変化するのだろうと想像するだけで楽しくなって来ます。今回もいい旅でした。皆様もぜひ本展にて良い旅を♪
 ☆おまけ:お気づきになられた方もいらっしゃるかもしれませんが、石川さん、さわさん、百々さん、内藤さんの4名はなんと同級生に当たります。今後が楽しみですね!

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