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 展覧会レポート!東京都美術館「ボルゲーゼ美術館展」

展覧会レポート!東京都美術館「ボルゲーゼ美術館展」
[ text by 明孫浩, photo by Art inn編集部]
2010/1/20 UP


 西洋絵画、古典音楽の愛好者の方々からすれば、バロックと言う言葉は馴染みのある響きかと思います。しかし言葉を耳にする機会は多くても「バロックって何?」と尋ねられて或る程度の意味を答えられる方は少ないかと存じます。

会期: 2010年1月16日(土)~4月4日(日)


↑ 本展ポスター
左:カラヴァッジョ [1571-1610]《洗礼者ヨハネ》1609-10年 油彩、カンヴァス 152×125㎝
右:ラファエロ・サンツィオ [1483-1520]《一角獣を抱く貴婦人》1506年頃 油彩、油彩、カンヴァス、板で裏打ち 67×56㎝
※2点とも日本初公開

展覧会レポート!東京都美術館「ボルゲーゼ美術館展」
左手の作品:カラヴァッジョ [1571-1610]《洗礼者ヨハネ》1609-10年 油彩、カンヴァス 152×125㎝

 バロック(Baroque)とは1580~1720年の間にイタリアで誕生しローマで流行した反抗宗教的な思想を指し、バロック美術とはその思想を様式とした絵画、彫刻、音楽、建築等を指します。

 ルネサンス時代(1400~1520年)では教会に飾る為の絵、即ち教会に相応しい絵が好まれ、聖書の世界観を壊す事なく描ける画家の株が急上昇する事となります。逆にモデルに似過ぎた天使や性的な表現の強い宗教画は異端とされ教会に弾圧されてしまう悲しい時代でもありました。
 よってルネサンスの絵画とはカトリック教会における崇拝の対象であり、民衆に聖書の内容を素早くヴィジュアルとして伝達する手段の一つだった訳です。

 それに対しバロックは同じ宗教画ではありますが、カトリック教会の力が弱まった時代背景も助けて、聖書の場面を躍動感に溢れたドラマティックな表現をしても淘汰される事がなくなり、寧ろ見る者の感性を刺激する作風が好まれる様になった事が特徴です。

 ルネッサンスとバロック。2つの時代を代表する画家の作品がボルゲーゼ美術館展で展示されています。1人はルネッサンス時代に自らの工房で弟子達と多くの注文を捌き、現代でも墓前に花が添えられる美男子ラファエロ。そしてラファエロの死後、西洋絵画史ではそれを超える天才が現れるのに半世紀もの年月を要しました。バロックの先駆者にして代表的な画家である”呪われた天才”カラヴァッジョです。
※カラヴァッジョの本名はミケランジェロ・メリージ。カラヴァッジョとは彼の生まれた村の名前。

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右手の作品:シピオーネ・プルツォーネ[1546-1598]《聖ヨハネと聖アンナのいる聖家族》1588-90年 油彩、カンヴァス 135×105㎝

 当コラムではカラヴァッジョ作《洗礼者聖ヨハネ》に注目してみましょう。

 洗礼者聖ヨハネとは救世主キリストの又従兄弟の関係にある人物です。絵画においては本展にもあるシピオーネ・プルツォーネ作《聖ヨハネと聖アンナのいる聖家族》(※聖アンナは聖母マリアの母親)の様に救世主キリスト、聖母マリアと共に幼児として描かれたり、またはキリストの洗礼の場面や、王妃の結婚を侮辱した事で逮捕された後、王妃の娘サロメがお盆に載せた聖ヨハネの首を持つシーンで描かれたりします。

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本展会場内には、ボルゲーゼ美術館の外観や室内の展示の様子を観ることができる映像コーナーがあります。

 カラヴァッジョの作品には明暗で劇的な演出がされた画面に修行中と思われる聖ヨハネが描かれています。筋肉と布の質感における写実的な表現に、改めてカラヴァッジョの卓越した技術を感じさせられます。
 しかしながら、母エリザベツ(※聖母マリアの従姉妹)の元を離れ修行の為に山篭りし、虫とハチミツだけを食べていた聖ヨハネにしては血色も肉体も良く健康そのものに思われますし、宗教画と呼ぶには余りに官能的過ぎるかなと言った印象は否めません。
 描かれている赤いマントは晩年のカラヴァッジョの特徴との事ですが、私が思うにこれは彼がマルタ島で騎士となった時の象徴であるマントを描いているのではないかと想像しております。

 カラヴァッジョはこの作品をボルゲーゼ枢機卿に贈り、殺人罪の恩赦を乞おうとしたそうです。これも私の勝手な憶測ではありますが、罪の無い主張をして殉教した聖ヨハネと自分自身を無理矢理関連付けて、その慈悲に縋ろうとしていたのではないだろうか?と感じられます。

 当企画展を最後の役目にして東京都美術館はリフォーム期間に入るとの事です。幾度と無く足を運び歩いた床や階段、多くの作品を見せてくれた空間には愛着や思い出があり、その事実には一抹の哀愁が漂っています。2年後、新たな姿でふたたび良い作品を展示して頂ける事を心より楽しみにしております。

東京都美術館の許可を得て会場撮影をしています。
※無断転用は固くお断りします。


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