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 展覧会レポート!国立新美術館「ルノワール~伝統と革新」

国立新美術館「ルノワール~伝統と革新」
[ text by 明孫浩, photo by Art inn編集部]
2010/2/2 UP

 
 「絵画の法王」「幸福の画家」と呼ばれたピエール=オーギュスト・ルノワールの「ルノワール-伝統と革新」が国立新美術館で絶賛開催中です。あまり西洋絵画に詳しくない方でも、その名を聞けば、彼の作品イメージを思い浮かべることが出来るであろう、印象派の中でも最も有名な画家の一人です。そしておそらく連想されるイメージといえば、優しく微笑む女性たちの表情ではないでしょうか?

会期:2010年1月20日(水)~4月5日(月)

 気になった作品を幾つかご紹介します。


↑ 《ブージヴァルのダンス》

 これぞルノワールと言った作品。穏やかな木漏れ日の下、男性とペアを組み、少し恥ずかしそうに、けれども実に幸せそうにダンスする女性。そして観る者の視線はまず彼女の顔から純白のドレスに移って行きます。白いドレスにはルノワール特有の光の効果、幾つもの色彩が白いドレスを構成しています。
 白は単なる白ではなく、自然界のあらゆる色を含んで白となり、ルノワールの光の捉え方や解釈が見て取れます。ルノワールは「スペクトラム・パレット(虹色のパレット)」と呼ばれるものを使ったそうです。これは虹の七色と白のみを置いたパレットで、ルノワールの光の表現には欠かせないツールとなりました。
 ここでトリビアをひとつ、こちらのダンスする女性のモデルは、なんとユトリロのお母さんなのだそうです。

国立新美術館「ルノワール~伝統と革新」
《アンリオ夫人》

 モデルは19歳の女優とのこと。(大人っぽいですね!) 繊細なタッチで描かれた、白を基調とした上品な色使いが印象的です。
 左から差し込む黄色の光から影となる青への変化が、光の移ろいをドラマチックに演出しています。色彩は描かれたと言うより、纏っていると表現した方が適切でしょうか。白に溶け込んだ柔らかな光の中で、凛と佇む穏やかな女性の表情に思わず魅入ってしまいます。

国立新美術館「ルノワール~伝統と革新」
《花瓶の花》

 一見すると所謂ルノワール作品のイメージからは逸脱する作品かと思われます。私が通り掛かった時、このグレイッシュな花瓶に挿した花束の静物画の前には多くの方が集まり魅入っていました。
 それもそのはず。近くでも見ると何が描いてあるか分からない絵の具の塊が、少し離れて見ると立体的になり、柔らかい光を帯びた花束になるのです。まるで巧妙なマジックに掛かったかのような印象を受ける、ルノワールの高度な技術が窺える1枚です。 

 本展を通して、最も心を動かされたこと、それは白の美しさです。様々な色の光が複雑に交じり合うことによって燦然と輝く”白の表現”に、私は釘付けとなりました。実際、人間の網膜を通して認識される色の成り立ちを辿れば、忠実に色の有り方を絵画で持って再現しているのです。
 光と色彩の幸福な出会いが一枚の絵画の中で実現する様を、この眼で味わうことの出来る喜びに打ち震える私がいました。改めて、画家の力量に感服致した次第です。

国立新美術館「ルノワール~伝統と革新」
【鑑賞のお手伝い -印象派-について】

 絵画ファンの方なら一度は耳にする印象派と言う言葉。簡単にその成り立ちについて説明致します。

 それまでの絵画は如何に教えられた通りに描くかを追求する、所謂アカデミック主義が主流でした。1年に1回開催されるパリの官展(サロン)はその象徴であり、官展に入選する事が画家のステータスになっていました。

 アカデミックの環境は確かに伝統的な絵画の技法を合理的に教育出来る利点はありましたが、その代償に画家の個性、新しい事への革新が失われてしまう時代でもあった訳です。現代に至っては「絵画の暗黒時代」と呼んだりすることもあります。

 そして、時代は反アカデミックを唱える画家、クロード・モネを誕生させます。
 モネは同じ志しを持つ親友ルノワール、シスレー、ピサロ、ドガ、マネ、セザンヌ、モリゾらと共に反アカデミックの展覧会を開きました(※1)
 反アカデミックを掲げる若者を嘲笑する様に新聞記者達はモネにある1枚の作品の題名を聞くと「印象、日の出」と答えます(※2)
 翌日、新聞には「反アカデミックを掲げる画家の集団現る、モネ氏の作品名は《印象 日の出》」と言う様な内容が掲載されました。それを読んだパリジャンは「官展に反発する集団か。若い連中は変な事をやりたがるな。あいつらの事は”印象派”と呼ぼう。」と言うことになりました。(※3)
 1874年4月の出来事、印象派の誕生です。
 なお、本展では、ルノワールが描く、モネの肖像画も展示。新聞を読みながらパイプの煙をゆったりと燻らす友を、温かな眼差しで描いた秀作です。こちらもぜひご高覧ください。

※1:「夜の画家」で知られるラトゥールも彼らとの友人だったがその絵画理念には賛同しなかった。
※2:本当は「夕日」と言う題名だが恐らくモネの記者に対する嫌味が込められている。
※3:ルノワールはこの印象派の展覧会前後に官展に入選している。伝統を重んじながらも新しい絵画に取り組む制作姿勢が窺える。


国立新美術館の許可を得て会場撮影をしています。
※無断転用は固くお断りします。 
 

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