
[ text and photo by Art inn編集部]
2010/2/10 UP
「装飾」をキーワードに、様々なアプローチで美術表現に挑む作家10名による展覧会。近年、”デコ~”というフレーズがよく聞こえてきますが、装飾は過去の長い歴史の中でも、その時代を象徴する様式を築き、精神性をも宿す重要な文化的側面をになって来ました。
本展では、現代の作家たちが、東京都現代美術館の1200㎡という広大な空間において、いかに「装飾」と対峙したかを見届ける、大変興味深い展覧会です。
◎会期:2010年2月6日(土)~2010年4月11日(日)
では一人づつざっとご紹介していきます。
↑ 黒田 潔
美術館の白く高い壁一面に展開された、躍動感溢れる黒の流麗な線画。その線たちの表すカタチを追って行くと、ダイナミックな森の風景が出現します。本展では、昨年、星野道夫の本によって憧れを抱き続けていたアラスカへと取材に赴いた際に得たインスピレーションによって制作しています。

左:青木 克世/中:野老(ところ) 朝雄/右:塩保 朋子
青木 克世/陶による、一見西洋風な過剰とも言える装飾には、オドロオドロしい怖さがあります。それらは、得体の知れない幻想的な世界への畏怖を喚起させるかのようです。
野老 朝雄/建築的な法則性のもと、本来、平面的な存在である紙のパーツを折り組み合わせることによって、文様を立体化し可変性のある形状を生み出します。テクノロジーの分野で何か役立ちそう?
塩保 朋子/唐草文様や、龍、鳳凰など、社寺や浮世絵、障壁画などにみられる文様に強いインスピレーションを受け、紙に切り絵を施した壮大な作品。光を透過し、壁に映る影もまた一段と幻想的。

左:森 淳一/右:山本 基
森 淳一/つげの木をレース状に、透けそうなほど彫り込んだ作品。作品の織り成す光と影は等価であり、繊細ながらも力強い存在です。また作家は、装飾を考える上で、高浜虚子の句『爛々と昼の星見え菌生え』に一つの示唆を得ているのだとか。
山本 基/1000×1725cmという広大な床一面に、塩でひたすら文様を描いた作品。チベットの砂曼荼羅を彷彿とさせるこの作品は、塩という素材と相まって、神聖な美しさを放っています。遠巻きに見ると、まるで地形のようでもあり、ミクロにマクロに視点を移しながらその表情を楽しむことができます。

左:松本 尚/右:小川 敦生
松本 尚/一見、織物か?と思ってしまう絵画作品。作家は、一枚の平面上で様々な物語が時間の流れをも表しながら展開する、ペルシャ絨毯などの織物に惹かれているのだそう。制作自体がとても楽しいと語っておられたのが印象的でした。
小川 敦生/透明石鹸の上に、なんと一筆書きで文様を彫り出した作品。作家曰く、ご自分の手癖によって生み出されたというラインは、太古の昔から永遠に生き続けてきた植物や微生物の化石のような、有機的な威光を放っています。

左:水田 寛/右:横内 賢太郎
水田 寛/作家は、装飾を昆虫や動物が自然の中に溶け込むカモフラージュのようなものと考えます。彼の描く絵画は、延々繰り返されるとろけそうなタッチのパターンの中に、ささやかな変化を付けることによってリズムを変調しています。
横内 賢太郎/サテン地に染料で複雑に色づけした、絵画のようであり、染色作品でもあるような不思議な世界。よく見ると色の中に、西洋風な装飾に用いられそうな事物があれこれ描かれています。美しい悪夢のような、甘い戦慄を覚えます。
時に過剰なほど手を入れた作品たちによって、ずっと奥底に隠していた何かを喚起されるようでした。装飾は、単純に美しい段階を通り超すと、体がゾワっとしてしまうような生理的作用があることも実感。
また、かつて美術の文脈上ネガティヴなイメージもあった「装飾」というテーマを通して、現代の作家たちがそんなイメージを軽々払拭し、個々の表現を全うする力量に、見ごたえ十分な展覧会でした。
※東京都現代美術館の許可を得て会場撮影をしています。
※無断転用は固くお断りします。
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