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 展覧会レポート!東京都現代美術館「フセイン・チャラヤン」展

展覧会レポート!東京都現代美術館「フセイン・チャラヤン」展
[ text and photo by Art inn編集部] 2010/4/7 UP


 フセイン・チャラヤンというファッションデザイナーの名が、私の中で強く印象に残ったのは確か1999年、《エアメール・ドレス》というどこかセンチメンタルな感情を喚起させるドレスが発表された時。国境を越え、遠く離れた大切な人に送るエアメール。それはドレスへと展開し、実際に着ることができる。そんなロマンチックなストーリー性のある服作りをする人がいるのかと感心したのでした。
 本展は1994年のデビュー以来、15年に渡るチャラヤンのファッション・コレクションとともに、映像や彫刻なども合わせ、約25の物語空間から構成した展覧会です。

会期:2010年4月3日(土)~6月20日(日)

以下、気になったものをざっとご紹介していきます。


展覧会レポート!東京都現代美術館「フセイン・チャラヤン」展
←↑ 《エアメール・ドレス》1999年

 フセイン・チャラヤンは1970年、北キプロス・トルコ共和国で生まれ。当時、国の状態は安定せず、12歳の時に父親と渡英し、のちにロンドンでファッションを学びます。

 チャラヤンのコレクションには、主に三つのコンセプトが織り込まれています。それは、「遺伝子」「アイデンティティ」「移民」。自身の生い立ちに大きく影響したこれらのテーマは、ファッションの枠組みに留まらず、アートとの間を自由に行き来するものです。

 エアメール・ドレスのコンセプトは、郵送で送ることの出来るこのドレスを相手に送ることが、ある人の不在と存在のしるしとなっているのです。自分宛に誰かから送られてきたドレス、でも送ってくれたその人はここにはいないのです。 

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《アフター・ワーズ》2000年秋冬

 戦時下などの非常時、突然我が家を強制的に去らねばならない難民の苦悩から着想を得た服です。家財道具を持って逃げるか、置いて行くかの選択を余儀なくされた苦しい心理を探ります。

 何気ないリビングにあるコーヒーテーブルはスカートに、椅子カバーはワンピースに、椅子自体はスーツケースに、部屋の小物たちもポケットにすっぽり納まるサイズにデザインされています。

 恐怖が発端のはずの作品ですが、我々の前にはミニマルで茶目っ気ある姿で登場し、恐怖をユーモアへと昇華させるデザインの真の力を、しっかりと見ることができました。

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《不在の存在》2005年

 テロリズム問題にまつわるネガティヴな心理を探った短編映像です。ティルダ・スウィントン演じる生物学者が、非英国人の女性たちから募った服からDNAを採取し、その人物像を推測し、その正確性を検証していくというもの。

 この作品の根底には、テロにより入国管理の厳格化政策が導入されたことによって、外国人に対する不安感情と被害妄想などが高まっていくであろうと予感させる恐怖があるのです。

 あくまてチャラヤンの描いたシナリオなのですが、遠くない未来、現実に起こり得るかもしれないと思え、少し怖くなりました。

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《場から旅路へ》2003年9月

 本展サブタイトルは”ファッションにはじまり、そしてファッションへ戻る旅”。チャラヤンは旅や飛ぶということに大変興味を持っているそうです。

 こちらの作品も短編映像ですが、デジタルデザイナーとのコラボによって、どこともいえない近未来の世界を中性的な女性が、繭型の乗物に乗って高速に移動しています。

 移動というテーマから、物理的移動や心理学的な転移等をいくつものメタファーやシンボルを使って暗示させています。

 高速移動する乗物に乗りながら、彼女は一体何を考えているのでしょうか。見る側にその辺りを知る術は無く、見る側の想像力も掻き立てられるのです。

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左:《リーディングス》2008年春夏/右:《エアボーン》2007年秋冬

 チャラヤンは最新のテクノロジーを積極的にファッションに取り入れます。《リーディングス》は、200本もの可動式レーザーがスワロフスキーのクリスタルと共に埋め込まれたSF的なドレスです。暗闇から四方八方に伸びる赤いレーザー光線が、一種異様な感じもします。

 この技術はチャラヤンが初めて使用したもので、本コレクションのテーマは、太陽崇拝とセレブへの礼讃から着想を得ているのだとか。

 《エアボーン》は、色とりどりのパステルカラーに点灯する1万5600個のLEDとクリスタルを組み合わせたドレスです。生と死を見つめた本作は、世界の様々な気候をメタファーとし、春夏秋冬の4つのパートから構成され、今回は水の中をイメージした夏のドレスを展示。やわらかな光は生の儚さやきらめきを表しているかのようです。
 
 今まで生きてきた過程で、実際に自分が体験したこと、そこで繰り返し考えてきたことに真摯に向き合ったからこそ、人の心に響く作品ができるのだな~と改めて感じました。生い立ちやその後の環境がどうであれ、とらえ方ひとつで如何様にもなる訳だし。

 チャラヤンは単に運命を悲しむよりも、積極的に身にしていった好例だと思いました。ご本人はとてもシャイですが、作品ではしっかりと伝えることは伝える、そうしたアーティストとしての姿勢に大きなエネルギーをもらえました。

 なお、チャラヤンからのメッセージで「映像は時間をかけてゆっくりみて下さい。」とのこと!お時間に余裕を見てお越し下さいネ♪

東京都現代美術館の許可を得て会場撮影をしています。
※無断転用は固くお断りします。 
 

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