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 さいたま市民医療センター「病院とアート」展

さいたま市民医療センター「病院とアート」展
[ text and photo by Art inn編集部]
2011/10/20 UP

会 期
2011年10月17日(月)~11月12日(土)
※セミナーは10月19日(水)17:30~ ←終了しました。

「病院とアート」。このタイトルにピンと来た方がいらっしゃるかもしれません。私もそのうちの一人です。
私ごとですが、昨年実母が本当に久々の入院をし、私も病院での生活の一部を垣間見る機会があったのです。(現在は完治。元気でもりもり働いています!)

そんな中、知人の美術家・塩崎由美子さんからお知らせを頂き、さいたま市民医療センターで開催中の「病院とアート」展のセミナーに参加してきました。

本イベントの発起人である塩崎さんは、現在スウェーデンと故郷であるさいたま市を中心に活動されていらっしゃいます。
本展は、さいたまにゆかりのある作家を中心に、地元の美術系高校の生徒さんたちや、スウェーデンの作家たちの作品を、病院内の至る所に展示しています。


病院内の作品を観る前に、各界で「病院とアート」に纏わる研究や活動をされている方々の講演を拝聴いたしました。

さいたま市民医療センター「病院とアート」展

【スライド@スウェーデンの病院:壁に可愛らしいオブジェが並びます。】
(※このページ内のスライド写真はすべて塩崎由美子氏による撮影)

この日のセミナーの内容は、以下の通り。

千葉大学大学院教授 中山茂樹氏:「ホスピタルアート~これからの医療の役割」

美術評論家 中村茂樹氏:「自己救済をともにするアート」

アーティスト Gunnel Pettersson氏:「社会的視点から見たスウェーデン公共スペースでの現代美術プロジェクト」

美術家 塩崎由美子氏:「スウェーデンの病院とアート」

さいたま市民医療センター「病院とアート」展

スライド@スウェーデンの病院:患者さんがお一人で横たわって治療を受ける治療室。壁に図書館風壁画が。遊び心溢れる!】

各方面の見識者の方々から、病院の歴史的成り立ち、アートの持つ癒し効果、現在のスウェーデンの病院でのアートプロジェクトに関するお話等がありました。



さいたま市民医療センター「病院とアート」展

スライド@スウェーデンの病院:シンプルな絵画が掛かっています。】

塩崎さんよりコメント「日帰り手術をする前に手術を待つ為の待合室です。その為に気持ちをリラックスさせる必要があります。」

この日はスウェーデンの広報大使の方もお見えで、スウェーデンの病院では、建設費用の約2パーセントをアートに充てる、というお話をされていました。



さいたま市民医療センター「病院とアート」展

スライド@スウェーデンの病院:上とは別の病院の手術室入り口。ガラスに半透明の模様入りシートが貼ってあります。】

塩崎さんよりコメント「病院スタッフの皆さんもとても気に入られているとの事です。」

どうしても閉塞気味になる病院ですから、少しでも気持ちを逸らしたり、外の世界を身近に感じられるようにという工夫が随所に見られます。

さいたま市民医療センター「病院とアート」展

院内のアート作品:1Fエントランスにて、スウェーデン作家Sophi Vejrichによるコスプレ風?作品。】

ここからは、今回の展示作品。壁に可愛らしいオブジェが並びます。

塩崎さんよりコメント「不思議の国のアリス」がお薬を飲んで身体が大きくなりファンタジーの世界へ行った様に、患者さんもいつも飲むお薬である意味回復を期待されると共にとファンタジーの世界へ気持ちを誘ってほしいと言う気持ちをこめた作品です。


さいたま市民医療センター「病院とアート」展

院内のアート作品:1Fエントランスにて、スウェーデン作家Bjorn Stampes によるバンドエイド作品。】

塩崎さんよりコメント「何とデジタル写真の版画でわざと画用紙を破った様な感じに作ってあります。冷たい非人間的で数学的な構成の絵の上に、人間的で暖かい傷を治すバンドエイドを貼ると言うジョークをこめた作品です。」

さいたま市民医療センター「病院とアート」展


院内のアート作品:1F廊下にて、花などの植物の写真作品。】

塩崎さんよりコメント「黒木葉子さんは自分の庭で育てている花を中心に撮り続けています。やわらかく優しい色の写真です。」



さいたま市民医療センター「病院とアート」展

院内のアート作品:3F、塩崎由美子さんの深い森を感じさせる作品。】

塩崎さんよりコメント「スウェーデンの森です。森の中で感じる風のささやきや光の変化、花等を見つけた時の喜び等を布の動きに応じて感じて頂ければと思います。」



さいたま市民医療センター「病院とアート」展

院内のアート作品:4F、雲のような作品も。】

塩崎さんよりコメント「南照子さんの和紙で作られた作品で、影が可愛らしく壁に映っています。」

さいたま市民医療センター「病院とアート」展


院内で見かけたアート?:こどもの病棟の入口でしょうか。人気のキャラクターやハロウィンの装飾に和みます。】

こちらは、本展出品作品ではないですが、視覚的に立派な癒しをもたらしてくれています。すごく大事!



さいたま市民医療センター「病院とアート」展

院内で見かけたアート?:各病室のインターフォンに花の映像が!部屋ごとに違う花です。】

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病院に展示するアートとは、いわゆる美術館で鑑賞するアートや、街中のパブリックアートとも異なる性質のものです。
単に作家の自己表現や何かの宣伝のみでは成り立ちません。
病とたたかう人々に、癒しと更には治療の効果をももたらすことが望まれます。

今回、あえて塩崎さんが声を上げねば、スウェーデンの人々は、病院のアートが特別なものと考えていなかったようです。
それほど自然な存在である、ということです。
この展覧会を機に、日本もスウェーデンに見習って、この伸びしろ多き分野を発展させていけたらと切に思いました。

 

※無断転用は固くお断りします。
さいたま市民医療センターHP:「病院とアート」セミナー ページ