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 東京都庭園美術館「アール・デコ・ジュエリー 宝飾デザインの鬼才シャルル・ジャコーと輝ける時代」

◆知的好奇心をくすぐる美の結晶
マハラジャの宝冠
今世紀初頭,、アール・デコ全盛の時代に革新的なデザイナーとして活躍したのが、シャルル・ジャコーだ。
今回は、幾何学的な形と機能美を併せ持った個性豊かな彼の作品を、宝飾類と貴重なデザイン画で紹介。ジュエリーから見たアール・デコとは何か? と考えたくなる内容で、絢爛豪華な宝石類という印象とは一味違う、知的好奇心をくすぐるハイレベルの展覧会である。
シャルル・ジャコー デザイン画 《マハラジャの宝冠》 1928年頃(パリ市立プティ・パレ美術館蔵)photo©PMVP/ Cliché:DEGRACES




◆ジュエリー・デザインのピカソと評された若き天才ジャコー
1885年生まれのジャコーは、若くして才能を開花させ、1909年にカルティエの3代目ルイ・カルティエの目に留まる。以来、2人はさまざまな作品を世に送り出し、現在も続くカルティエ繁栄の礎となったと言われている。繊細な色彩、幾何学的な形を駆使した斬新なデザイン、透明感のある輝きはまさに芸術品といってふさわしく、今もなお見る者を魅了する。
ジュエリー界のピカソと絶賛されながら、1968年に亡くなるまで、生涯“いち職人”の立場を貫いた仕事人ジャコー。そのため、あまり表舞台に立つ機会がなく、日本でもカルティエを知っていてもジャコーの名を知らない人が多いのではないだろうか? カルティエ好きはもちろん、デザインに興味があったり、デザインを志したい人には是非ともお薦めである。

花と果物がそえられた飾り壷2 ペンダント3 ネックレス4

2.シャルル・ジャコー デザイン画 《花と果物がそえられた飾り壺》 1913年頃(パリ市立プティ・パレ美術館蔵)photo©PMVP/ Cliché:DEGRACES
3.シャルル・ジャコー デザイン画 《ペンダント》 1916-19年頃(パリ市立プティ・パレ美術館蔵)photo©PMVP/ Cliché:PIERRAIN
4.シャルル・ジャコー デザイン画 《ネックレス》 1933年頃(パリ市立プティ・パレ美術館蔵)photo©PMVP/ Cliché:BRIANT REMI


◆185点におよぶ作品、中には日本の影響を受けたものも
今回の展覧会は、パリ市立プティ・パレ美術館所蔵のデザイン画185点の他に、同時代のファッション誌『ガゼット・デュ・ボン・トン』などからポショワール(ステンシル版画)58点、宝飾・装身具35点などを展示。ジャコー作品を中心に、ファッション誌や肖像画などで、当時のアート(ファッション)・シーンを多角的に展示しているところは、本展覧会の大きな見所で、中にはパリ万博で紹介された日本の文化(盆栽など)が盛り込まれた版画などもあり、宝飾品の専門知識や予備知識がなくても楽しく観覧できるのが嬉しい。

ブローチ5 ブローチ7

幾何学模様のブローチ6

5.カルティエ 《ブローチ》 1923年頃 (エポック・ファイン・ジュエルズ蔵)photo©BART PEERS
7.アンリ・ヴェルヴェール 《ペンダント》 1910年頃 (ウォルツスキー・コレクション)photo©WARTSKI
6.作者不詳 《幾何学模様のブローチ》 1925年頃 (エポック・ファイン・ジュエルズ蔵)photo©BART PEERS

 

◆思わずため息がもれる機能美。“道具”としての美しさに脱帽!
ティアラやバンドー(当時大流行した頭飾り)、櫛やブローチ、シガレットケースや小物入れなど、“道具”として身につけるものに趣向を凝らした時代。例えば18世紀の化粧道具入れ。蓋の合わせ目の細工や蓋を開けたときに見える収まりの良い道具など、単に飾るのではなく機能を優先し、敢えて見えないところを飾るその洒落っ気は、現代でも通用する高い技術と粋なセンスがある。こうした作品が若きジャコーに大きな影響を及ぼし、彼のその後の活躍に息づいていることがリアルに伝わってくる。
身に着けるものだけに1点の作品は小さいが、そこに凝縮された職人技は、優雅でありながらキチッとした機能美という美しさに集約され、ため息がもれるほどの感動がある。

ブローチ:四匹の魚8 シガレット・ケース9

8.ルネ・ラリック 《ブローチ;四匹の魚》 1902-05年頃 (エポック・ファイン・ジュエルズ蔵)photo©BART PEERS
9.ブシュロン 《シガレット・ケース》 1924年 (ブシュロン・コレクション)photo©BOUCHERON

◆アール・デコとはいったい何だったのか?
芸術・建築・思想・ファッション、あるいは宝飾……さまざまなカテゴリーで検証できるが、本展覧会で、その時代の空気みたいなものを感じ取れたような気がする。
芸術的な会話を楽しむ時など、何気なく漠然とした感覚で「アール・デコ」という言葉を使っていたが、本展覧会を観た後にその言葉を口にすると印象がまるで違っているのに気がついた。あの時代の感触を知っているような……その満足感、充足感を「アール・デコ・ジュエリー」展で感じてほしいものである。

カルティエのショーウィンドーの前11 魔力12 古代廃頽期の真珠と宝飾品のたぐい稀なコレクション展13 
行列14

11.エドゥアール・アルーズ 《カルティエのショーウィンドーの前》 1920年(個人蔵) photo©L.LECAS
12.ジュルジュ・バルビエ 《魔力》 1922年 (パリ市立プティ・パレ美術館蔵)
photo©PMVP/ Cliché:LADET
13. ジュルジュ・バルビエ 《古代頽廃期の真珠と宝飾品のたぐい稀なコレクション展》 1914年(個人蔵) Photo©L.LECAS
14. ジュルジュ・バルビエ 《行列》1924年(パリ市立プティ・パレ美術館蔵)photo©PMVP/Cliché:LADET

◆追記!
もうひとつ、どうしても付け加えたいことが、本展覧会が庭園美術館にぴったりの催し物だという点である。ご存知の通り、1933年に建てられた朝香宮邸をそのまま美術館として公開している。フランス人デザイナーが主要部分を設計し、内装にはフランスをはじめ各国から輸入された調度品が数多く使われ、それだけでも十分鑑賞に値する。そして今回、大小さまざまな部屋に展示された作品と個々の部屋の雰囲気(特にシャンデリアや照明)が、見事に調和し、得もいわれぬ美しさを演出している。作品に注目するのは大切だが、一呼吸おいて部屋全体を視界に入れ、その空間に身を置く幸福感を存分に味わっていただきたい!


[text by:Sakae Ishikawa]

「アール・デコ・ジュエリー 宝飾デザインの鬼才シャルル・ジャコーと輝ける時代」
■会場:東京都庭園美術館
■会期:2007年1月14日(日)まで
■開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
■休館日:第2・第4水曜日、11/8、11/22、12/13、年末年始12/27-1/3、1/10
■入館料:一般1,000(800)円/大学生(専修、各種学校を含む)800(640)円/中・高校生および65歳以:500(400)円 *( )内は20名以上の団体料金
*小学生以下、障害のある方とその介護者1名、教育活動として教師の引率する都内の小・中・高校生および教師は無料です(事前の申請が必要)。
*第3水曜日(10/18、11/15、12/20)は65歳以上の方は無料
【案内】
住所:〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
電話:03-3443-0201 FAX:03-3443-3228
【交通】
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・都営地下鉄三田線・東京メトロ南北線「白金台駅」(1番出口)より徒歩6分
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