20世紀アートの象徴がここに集結
セザンヌ、ピカソ、マン・レイ、アンセル・アダムス、リキテンスタイン、ウォーホル、梅原龍三郎、岸田劉生、草間彌生……。作品のテーマが20世紀を象徴する“物”なら、参加アーティストも20世紀を代表する錚々たる顔ぶれが集結し、華やかで見応えがある。
絵画、写真、オブジェと表現の違う“点”(作品)を物という“線”(テーマ)で結んでいくと、20世紀という時代がクローズアップされ、時代とアートの関わりが浮き彫りになってくる。
さまざまな作品の中から、自分の記憶にある20世紀とシンクロする“物”が1点でも見つけられると、本展覧会はさらに意義深くなるだろう。
展示会の見どころ
第Ⅰ部 20世紀美術における物とその表現
20世紀の美術の中で「物」がどのように取り入れられ、どう表現されてきたか? 「物を描く」として静物画の解体と変容。「物の提示」として新しい素材に着目した戦後のアート。2つのアプローチで「物」の表現の軌跡をたどる。
第1章 物を描く―静物画の革命
【セクション】1.静物の解体/再構築 2.オブジェの発見 3.日常のまなざし-リアリズムの諸相 4.制度としての静物
20世紀初頭、静物画に起こった絵画空間の革命。セザンヌからピカソへ引き継がれた遠近法的絵画空間の解体と再構築をはじめ、さまざまな側面から静物表現を解析する。

ポール・セザンヌ 《ラム酒の瓶のある静物》 1890年頃 所蔵:ポーラ美術館(ポーラ・コレクション) 写真提供:財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館

速水御舟 《秋茄子と黒茶碗》 1921年 所蔵:京都国立近代美術館
第2章 物の提示―物の美学
【セクション】1.絵画の物質化 2.産業社会の形式 3.もののふるまい 4.自然と文化
ガラス、金属、ゴム、プラスティックなど、それまでなかった物質が美術表現の素材となったのも、20世紀美術の大きな特徴。1960年代以降、芸術の領域を一気に拡大した、これらの素材を使った作品を通して、新しい美意識を探っていく。

李禹煥 《関係項-サイレンス》 1979/2005年 所蔵:神奈川県立近代美術館

ダン・フレイヴィン 《無題(親愛なるマーゴ)》 1986年 所蔵:国立国際美術館Dan Flavin, Untitled (Fondly to Margo), 1986, The National Museum of Art, Osaka ©2006 Stephen Flavin / ARS, New York / SPDA, Tokyo
第Ⅱ部 20世紀美術におけるものと人間の生活
産業革命以降、工業製品は都市を中心に身の回りを取り囲むようになり、生活環境に美意識が再編成されていく。日常的な商品に託された美的センスと、その反発として芽吹いたアヴァンギャルドの波を比較する。
第1章 ものの流入とアヴァンギャルドの出現―20世紀前半の美術
【セクション】0.イントロダクション-デュシャンとシュヴィッタース 1.素材へのまなざし 2.構成と機械 3.機械のイメージと身体 4.生活と「もの」―形態・機能・美― 5.都市の表象
20世紀初頭、ヨーロッパと日本における「アート/ライフ」問題を、5つのパート(上記セクション)の観点から検証。美術、工芸、プロダクト・デザインなどのジャンルを横断した相乗効果を見ていく。

クルト・シュヴィッタース 《無題(ハノーファーとヒルデスハイム)》 1928年 所蔵:クルト&エルンスト・シュヴィッタース財団、ハノーファー Kurt Schwitters, Untitled (Hanover and Hildesheim), 1928, Collage, 11.7×9.1cm, Kurt and Ernst Schwitters Foundation, Hanover photo: Kurt Schwitters Archiv at the Sprengel Museum Hannover photographer: Michael Herling / Aline Gwose

ペーター・ベーレンス 《卓上扇風機》 1908年(デザイン) 所蔵:豊田市美術館 撮影:林達雄

フェルナン・レジェ 《都市》 1919年 所蔵:ニューヨーク近代美術館 Fernand Léger, Tne City, 1919, oil on canvas, 96.8×130.5cm, The Museum of Modern Art, New York. Florene May Schoenborn Bequest. Acc. N.:821.1996. ©2006. Digital image, The Museum of Modern Art, New York / Scala, Florence ©ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2006

マルセル・デュシャン 《自転車の車輪》 1913/64年 所蔵:京都国立近代美術館 ©Succession Marcel Duchamp / ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2006

富本憲吉 《白磁八角コーヒーセット》 1921年 所蔵:富本憲吉記念館 撮影:阿南辰秀 写真提供:小学館

杉浦非水 《銀座三越 四月十日開店》 1930 所蔵:東京国立近代美術館 工芸館
第2章 消費社会における物・商品・欲望―20世紀後半の美術
【セクション】1.物の氾濫 2.消費社会のイメージ 3.物の体系 4.グローバリゼーションのかげで
第二次世界大戦以降、アメリカを中心とする大量生産・大量消費の嵐。1950年代から60年代にかけて芸術の新しいテーマとなった「物質文明」を象徴する作品から、20世紀の人間社会の縮図が見えてくる。

トム・ウェッセルマン 《浴槽コラージュ #2》 1963年 所蔵:東京都現代美術館Tom Wesselmann, Bathtub Collage #2, 1963, Museum of Contemporary Art, Tokyo ©Estate of Tom Wesselmann / VAGA, New York & SPDA, Tokyo, 2006

吉村益信 《豚・pig lib;》 1971年(1983/95年加筆) 所蔵:兵庫県立美術館 山村コレクション

中西夏之 《洗濯バサミは攪拌行動を主張する》 1963年 所蔵:東京都現代美術館
第Ⅲ部 マテリアル・ワールドに生きる
21世紀を迎え、物質文明は飽和状態となり、アートはさらなる次元へシフトしていく。「物」の世界の表現はどうなっていくのか? 注目の作家6名が個展の集合体のような形式で展示。彼らが模索するビジョンから「物」の未来が垣間見られる。

高柳恵里 《古着coordinate (white shirt)》 2005年 撮影:田村和隆 写真提供:ON GALLERY

田中功起 《オレンジをひとつ手に取りなにも考えずに放り投げてみる》 (DVD, created with Le Pavillon, Palais de Tokyo) 2006年

シムリン・ギル 《05/06》(仮題) 2006年 (部分) Simryn Gill, 05/06 (working title), 2006(detail)

コーネリア・パーカー 《ロールシャッハ(ヴェラ)》 2005年 ガレリア・コロン・XVI、ビルバオ Cornelia Parker, Rorschach (Vera), 2005, GALERIA COLON XVI, Bilbao

~歩きやすい靴が必須です!?
最初に述べたが、6000㎡の展示場に600点あまりの作品。とにかく、すごいスケールだ。本展覧会は、国立新美術館がケタ外れの美術館であることをリアルに教えてくれる。見終わった時には足が重くなっていて、「出口」が運動不足をあざ笑うかのように迎えてくれた。この展覧会に来るのなら「歩きなれた疲れにくい靴を履くこと!」と、これだけは伝えておきたい。できれば、疲れたら途中で退場し、お茶して少し休んでから再入場できる、というサービスがあると嬉しいかな、と思ったくらいである。
取材ノートを見ると、冒頭に「明るい」「天井が高い」「作品との距離が近い」と書いてある。美術館で欠かせない3つのポイントに満点をつけたい程、来場者の立場に立って展示され、その行き届いた姿勢は高く評価したい。どの作品も見やすいので個々の解説は避けるが、個人的にはアンセル・アダムスのオリジナルプリント(写真)は、ため息が漏れるくらい美しかった!
いまや新名所として連日大賑わいで、3階にある人気のカフェ「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」をはじめ、地下1階のミュージアムショップなど、どの施設も人・人・人だが、それでも行く価値のある東京でもっともホットなアートスポットである! ぜひともお運びを。
TEXT by Sakae Ishikawa
DATA
●名称/「国立新美術館開館記念展 20世紀美術探検 -アーティストたちの三つの冒険物語-」
●会場/国立新美術館 1階展示室
●会期/1月21日・日~3月19日・月
●開館時間/10時~18時(入館は17時30分まで)、毎週金曜日は20時まで(入館は19時30分まで)、毎週火曜日休館)
●観覧料/1,100円(一般/当日)
●所在地/〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
●アクセス/東京メトロ千代田線・乃木坂駅6出口(美術館直結)、日比谷線・六本木駅4a出口から徒歩5分、都営地下鉄大江戸線・六本木駅7出口から徒歩4分
●問い合わせ/03-5777-8600(ハローダイヤル)、http://www.nact.jp/
|