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 日常をアートにする「田中功起」の面白さ
日常をアートにする「田中功起」の面白さ
上野の森美術館ギャラリーで、第一回 田中功起ショー「いままでのこと、さいきんのこと、これからのこと」開催中!


上野の森美術館ギャラリーは入り口を入って右手。500円の入館料で同時開催の「VOCA展」も見られます。


田中功起さんのビデオアートって面白いかも

 上野の森美術館のギャラリーで開催中の展覧会・第一回 田中功起ショー「いままでのこと、さいきんのこと、これからのこと」(以下「田中功起ショー」)をオススメします!
 田中功起さんは1975年生まれの31歳。パリを中心に海外での活動が高く評価されている、日本では“知る人ぞ知る”アーティスト。今年に入って、森美術館「笑い展」、国立新美術館「20世紀美術探検」、水戸芸術館「夏への扉」など大規模な展覧会に参加し、現在もっとも注目されている作家の一人です。
 今回の「田中功起ショー」は、規模は小さいながら、これまでの映像作品を通して、タイトル通り自身の活動を振り返り、今後を探るターニングポイントと位置づけられる展覧会。「ショー」と名付けたのは、本展覧会のメインである本人の「トークショー」を示唆しています。作品がビデオアートなので、ここで紹介できる作品の写真はありませんが、以下の独占インタビューから、想像を膨らませて「面白そうかも?」と少しでも感じたら、もう行くっきゃありません!


優しく語り口で気さくに話してくれた田中さん。トークショーでは多くの観客が魅了されることでしょう。

田中功起さんインタビュー(2007.03.16.金.上野の森美術館にて)

「潰しがきかなくなってアーティスト」
 何故こう(アーティストに)なったか? 一番の要因は“流れ”でしょうか。2回浪人して美大に入ったんですけど、僕も真面目だったし、わりと周りにも真面目な友だちがたくさんいて、作品の話をしてるうちにどんどんより真面目に制作に励むようになって、自然と他に道がなくなってしまう。潰しがきかなくなっていくパターンでした(笑)。
 絵の場合は、技術や内容も含め色んなことを知り過ぎてて、しかもものスゴイ数の良い絵が世界中にあります。それに立ち向かうとなるともう(笑)大変なことになっちゃうんです。ビデオアートももうすでに、ほとんどやり尽くされてはいるけど、まだまだ出来るんじゃないかという余地がある気がします。それに僕らは生まれた時からその辺にテレビがあって、そうした映像をずっと観てきたから、あまり考えなくても、感覚で作れるという利点もあったんでしょうね。そういう自分の価値観と美術の文脈が交差してビデオを作るようになったんだと思います。


椅子、テーブル、モニターなどが無秩序に配置されたギャラリーには、作品の音が乱雑に絡み合い、通りかかるとつい入りたくなってしまいます。

「自己表現は自己満足でアートではないと思う」
 僕の作品ではテレビモニターやプロジェクターを使いますけど、とくにそれがすぐにテレビや映画、プロモーションビデオにつながって、そこから影響を受けたというわけではありません。ふつうにブルース・ナウマンとかフィッシュリ・アンド・ヴァイスなどのアーティストから影響を受けました。そういう彼らからいちばん学んだことは、自分のテーマやメッセージを込めることで、作品にするということじゃなくて、何か見つけちゃったり気づいちゃったことから、作品化するということです。アートは表現だと云われるけれども、単なる自己表現はアートではなく、自己満足でしかないので。だから映画でもなんでもそうですけど、芸術性の高いというふうに一般的に云われるような自己満足の表現は好きじゃありません。
 ちょうど今、パリで個展をやっていますが、パレ・ド・トーキョーという大きなアートセンターのなかの小さいプロジェクト・スペースで観せています。この上野の森美術館ギャラリーぐらいの大きさのスペースですね。偶然ですが、真向かいにあるパリ市立近代美術館でフィッシュリ・アンド・ヴァイスが回顧展をやってました。僕の作品の中ではわりと彼らの作品のひとつに近しい内容のものだったので、正直「ヤバイ!」と思いましたね。近いところで、自分が面白いと思っている人たちの、それもベスト・ピースが並んでる展覧会と、ポッと出の僕の小さな展覧会が重なってガチンコになってしまった。規模も違うし完敗でした。圧倒的な量や空間の広さ、キャリアの違い、決して比べられないけど、すごい悔しいなと思って。僕もパレ・ド・トーキョーを全館使って観せられたらどうだったのかなと思いました。いつかリベンジしたいですね。


ギャラリーに入って左手奥のプロジェクターは、なぜか脚立に配置され、壁に作品が映されていました。

「ショーから今の自分を確認し、次のキッカケになればいいなあ」
 以前アルゼンチンへ行って作品を作るコラボレーションのプロジェクトの中で「KOKI TANAKAショー」ってトークショーを任されました。今回のタイトルもそこからきてます。その時、僕はボウズでメガネでヒゲって風貌で、そこに角を付けて、変な英語の毒舌でどんどんツッ込む1時間くらいのプログラムをやったんです。僕は寿司が食べらんないし日本のことを聴かれても良く分かんないので、同じレジデンスのアーティストから「お前は中国のスパイなのか?」とか冗談を云われて面白がられました。で、ヘンなわりには意見をハッキリ云ったりするので、コイツのトークは面白いって思ったから僕にホスト役を頼んだみたいです。
 今回は、30(歳)を過ぎて、今までの作品を出来る限り観せて反省するという内容です。最近の展覧会で、初めて観て興味を持った人たちにも一通り観てもらいたいということでもあります。いままで僕が、どんなことを考えてきて、それが上手くいったりいかなかったりしてきたんだってことを、最初の2回は一人で喋って、後の2回は対談という形で、学芸員と評論家の方と、今やっている展覧会のことやこれからの話が出来たらなと思った企画です。それにトークショーは、喋りながら自分で確認できるじゃないですか。そうやって何気なく喋ったことが自分のコンセプトになったりするので、そこから次のアイデアを見つけだしていけたらいいなと。そうしないと、怠け者だから(笑)、考えないし振り返らない。こういう機会を使って何か、振り返りたいなと思ったんです。何か次のキッカケになればいいなあとも思って。


通りに面した窓は開け放たれています。「ブラインドは全開にして外からも見えるようにしてください」と田中さんが指示していました。

「サービスしなければしないほどサービスになっていく」
 自分の作品ですか? う~ん、訳が分からないことしている(笑)。とにかく訳がわからなのに、観てくれる人はいるんですよ。例えば今回展示している「2006台北ビエンナーレ」で観せた作品は、台北で観せているので、当たり前ですが異国の台北の人が観た訳です。お爺ちゃんとかお婆ちゃんとか子どもとか、ずーっと観てるんですよ。で、笑ってたりしてるんです。こんなに訳が分からないことやってるのに、分かるんだなと思った。意外と若い人とかに限って「分かんない」とか云って素通りしたりする。不思議だなあと思って、伝わる人には伝わるし、伝わらない人には伝わらない。すこし前はもうチョット「これって面白いでしょう?」っていう、いやらしい気持ちの作品もあったんですけど、そういうのを削ってけば削ってくほど、より伝わるようになってきたなと。面白いですねぇ~。自分の中でサービスしなければしないほど、サービスになっていく、それが不思議だなと思ったんです。できるなら、もっともっと普通なものを作っていきたいですね。
 この作品は僕と、アシスタントとギャラリストの3人で台北に行って8日間くらいで撮って後からチョイスしたんですが、結局考えて撮ったものはほとんど排除してしまいました。考えたり話し合って撮ったものは面白くないものが多かった。考えなしにやったものの方が、案外おもしろかったりしますね。世界は広くて面白いんだから、そこから見つけ出してそれを観せるだけでも十分なのかもしれません。



映画を撮りたいと熱っぽく語る田中さん。楽しみなビジョンはトークショーで明らかになるかもしれません。

「映画、撮りたい撮りたい撮りたい!」
 映画作りたいですね。色んな人に取り敢えずそう云っていて、作りたいとか、そういう機会があったらぜひお願いしますみたいな。これも流れで決まりますからね。やらないかって話がくればもちろん出来るし、あるいは自分から云った時にたまたま出来るかもしれないし。例えばラブストーリーとかホラーとか何でもいいんです、アクションでも。何かそういうジャンルがあるものでやりたいと思っています。そこに何か僕にしかできない“ひとアイデア”を差し込むことによって変わっていくようなものが作りたいですね。それが見つかったら多分、もっと「映画が作れるな」って感触がつかめるので、それを探しているところです。
 最近、蜷川実花さんが映画撮りましたねえ。てことは、もうすこしで現代美術の分野にも話が来る可能性があるのかな。だから色んな人に云っとこうと思って。映画撮りたい撮りたい撮りたいってね(笑)。

Art inn カエル

 田中さんのビデオアートは、物が転がったり落ちたりする日常をシンプルに捉え、その動作に付随する音がするだけ。しかも1カットが数十秒と短く一切の説明がありません。説明がないから「訳が分からない」と評されます。あらゆるテレビ番組で台詞にテロップまで付く、過剰とも云えるサービスに慣らされた我々にとって、田中さんの作品はかなり刺激的。何気なく見過ごす日常に改めて目を向け、ありのままに観せるなんて芸当は、凡人にできません。
 例えば、駅の階段を上り下りする時、必ず左足から踏み出すとか、必ず9段ずつ区切って段数を数え、9の倍数で上り(下り)終えると気分がいいとか。そういう、くだらな過ぎて馬鹿にされそうな、日常の密やかな心のより所を覗かれ暴かれたような衝撃を受ける作品があります。それを表現するのがアーティストの宿命であり、正しくアートです。
 普段は開けないパンドラの箱を“合鍵”でスルッと開けられたような痛快さがいい。閉ざしている心を、アート(他人)によって開放されるなんて、なかなか味わえない体験に遭遇するかもしれません。しかもどの作品も下品でないのが素晴らしい。くだらなくって馬鹿馬鹿しいけれど、目を背けたくなるようなエゲツなさがない。それが田中さんの人となりを物語っていてとても微笑ましく感じます。1点でも心に風穴が空くような作品を見つけられたら、それはアートを観る目を養っている自分へのご褒美と思いましょう。

TEXT by Sakae Ishikawa

DATA
●名称/第一回 田中功起ショー「いままでのこと、さいきんのこと、これからのこと」
●会場/上野の森美術館ギャラリー
●会期/2007年3月16日(金)~3月30日(金)
●開館時間/10:00~17:00時(金曜日は19:00まで)、会期中は無休
●入館料/一般・大学生500円(「VOCA展2007」のチケットと共通/高校生以下無料)
●関連イベント田中功起の大反省会「独白と放談」(各回17:00~18:00、申込不要)
 3月21日(水・祝)反省会その二「いままでのこと、その後のビデオのこと、立体やテキストのこと」
 3月23日(金)反省会その三「これからのこと、をかんがえる」山本和弘さん(栃木県立美術館シニア・キュレーター)との対談
 3月25日(日)反省会その四「さいきんのこと、展覧会をふり返る」松井みどりさん(美術評論家)との対談
 3月30日(金)反省会その五「さらにそのさきのこと、来場者とお花見をしながらかんがえる」※参加者は飲み物と食べ物を各自お持ちください
●所在地/〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2
●アクセス/JR「上野駅」公園口より徒歩3分 、京成電鉄、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」より徒歩5分
●問い合わせ/03-3833-4191
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