アートリゾート「ベネッセアートサイト直島」への旅~第2弾「NAOSHIMASTANDARD2」&「地中美術館」 赤かぼちゃ/草間彌生、撮影:渡邉修 |
今や人気は国際的! アートの楽園・直島
四国・香川県香川郡直島町。面線8.13k㎡(本島のみ)、人口約3500名の直島は高松市の北約13kmの瀬戸内海に浮かぶ島。北側は大正時代から銅の製錬が続いている工業地帯で、南部は瀬戸内海国立公園に含まれ、豊かな自然に恵まれているエリア。漁業はハマチや海苔の養殖が盛んに行われている。
第1回目のリポートでは、島の西側に位置する「本村エリア」(下図参照)で行われている「家プロジェクト」と、南にあるホテルを併設した画期的な美術館「ベネッセハウスミュージアムを紹介した(第一弾リポート「自然とアートで心と身体のリフレッシュ~直島への旅」参照)。
第2弾の今回は、前回お伝えできなかった大規模な企画展「NAOSHIMA STANDARD2」(直島・スタンダード2)と2004年にオープンした「地中美術館」を紹介。どちらも国内はもとより、世界中のアートファンから注目を集めており、海外からの来場者がどんどん増えているという。今や直島は国際的な“アートの楽園”と云っても過言ではない。

ゆっくりと寄せては返す、どこまでも穏やかな波。太平洋や日本海しか知らない者にとって瀬戸内海は、驚愕の静けさ。それだけで気持ちがリフレッシュする。「NAOSHIMA STANDARD2」の作品は、宮ノ浦、本村エリア、南の海岸を中心に点在している。また「地中美術館」は南側の山の中にあり、宮ノ浦からバスで約20分ほどの距離。
詳しくはコチラ(直島町ホームページまで)
直島へのアクセス
直島へのアクセスは海路のみ。岡山県宇野港(JR岡山駅から宇野線で約50分)からと香川県高松港(JR高松駅から徒歩約3分)から入る2つのルートがある。
詳しくはコチラ(四国汽船㈱のホームページまで)
「NAOSHIMA STANDARD2」
「NAOSHIMA STANDARD2」は、2001年に開催された「THE STANDARD」の第2弾で、前回と同様に島全体を舞台にアート活動を展開する大規模な企画展。
「日常生活を支える生活基盤を『文化』と云う視点から見直し、芸術活動によって再構築していく」ということが基本的なテーマとなっている。参加アーティストを中心に、スタッフと島の人々が作品を創造していく過程そのものがアートであり、その画期的な“芸術活動”を見る(体験する)ことが「NAOSHIMA STANDARD2」の魅力である。
詳しくはコチラ( 「NAOSHIMA STANDARD2への道」ホームページまで)
直島の玄関・宮ノ浦港でまずビックリ!~宮ノ浦から南側の海岸
直島へは宇野または高松からフェリーでのアクセスになり、その玄関口が宮ノ浦港である。フェリーが港に近づくと、徐々に大きく見えて来る草間彌生の「赤かぼちゃ」が迎えてくれる。何はともあれ「NAOSHIMA STANDARD2」は、まずはこの「赤かぼちゃ」から始まる。本展覧会への期待を大いに膨らませてくれる強烈な作品だ。
![]() 赤かぼちゃ/草間彌生 撮影:渡邉修 来場者を熱烈歓迎しているような真っ赤なデッカイかぼちゃのオブジェ。島を去る時にはフェリーから何度も振り返り見たくなる強烈な印象を残す。内部は人が入れるほどの空間があり、「こんなものが町の公園にあったらさぞや楽しいだろう」と思った時、本展覧会の「日常とアート」というテーマが少し理解できた気がした。 |
![]() サイン計画/nendo 撮影:渡邉修 近くに寄って見るまでは一体何なのか分からなかった。「まさかカラーコーンとは!」。工事現場で見慣れたカラーコーンも白い色でしかもこれほど大量に並んでいると圧倒的な迫力がある。さらにライトアップされた美しさは他に類を見ない体験で、深く心に刻まれる。「まさかカラーコーンに感動するとは……!」。 |
![]() スラグブッダ88/小沢剛 撮影:渡邉修 小豆島に程近い豊島の産業廃棄物処理後のスラグで作られた88体の仏像は、瀬戸内海国立公園の一部でもある直島南部の倉浦にある。直島では小さな祠に納められた仏像を多く目にするが、その直島の歴史に残る88対の仏像をモチーフに制作された力作。産廃=仏はさまざまなことを考えさせられる。 |
![]() ミルトア海、スーニオン/杉本博司 撮影:渡邉修 南の海岸の「オカメの鼻」。海に向かって左側の桟橋側に展示されている作品。ぽつんと掲げられた額以上に、ごついパイプの足場と自然の岩肌との無秩序の対比が非常に印象的。自然とアートの融合を破壊と見るか再構築と見るのか? 来場者の許容量を試されているような鋭利な作品である。面白い! |
![]() イオニア海、サンタ・チェザーレア/杉本博司 撮影:渡邉修 桟橋と反対側の「オカメの鼻」に展示された作品で、こちらは上記の作品と違い、岩場を登っていけば近くで鑑賞できる。取材中も作品に近寄っていく方を見かけたが、アート鑑賞のために海岸の岩場を歩くという体験は、直島ならではの“芸術体験”である。 |
本村エリア~作品を“聴きながら”のアート散策
「NAOSHIMA STANDARD2」の作品がもっとも多く展示されている本村地区。直島でも古くからある集落で、城跡や寺、神社をはじめ農協などもある中心的な一画
。1998年から開始された「家プロジェクト」(前回のリポートで紹介)もこのエリアを中心に展開しており、多くの来場者が訪れる。
![]() SORA/SANAA 撮影:渡邉修 近所を散策する気持ちで自転車に乗っていて、突然この光景に出くわした時の驚き! 言葉を失ったと同時に湧き上がってくるワクワクする気分で思わず顔がほころんきた。色んなものに見えてくる……円盤、お皿、傘、金属できた林? そんなことより当たり前の町並みに“これが”あるってことが実に刺激的だ! |
![]() 碁会所外観/須田悦弘 撮影:渡邉修 使われなくなった碁会所を素材にした作品。正面に立つと建物全体が人の顔のように見えて愛らしく、室内は四畳半が対を成す形になっている。江戸時代にでも迷い込んだような佇まい。果たして“現代アート”の懐の深さを再認識させてくれるような作品である。 |
![]() 椿/須田悦弘 撮影:渡邉修 上記作品の室内。かつて香川にあった江戸時代の蘭学者の書斎をイメージしたという作品で、畳の上にぽつんと置かれた一輪の椿が、空間の美しさを際立たせている。椿は、作者の須田悦弘が好んで用いるモチーフで、繊細な彫刻による椿は、本物以上に鮮やかで、深く印象に残る。 |
![]() いつかは眠り猫/上原三千代 撮影:渡邉修 現在も島の人々に信仰されている直島八幡神社の随神門は、損傷が激しかったため本格的な修復が行われた。この作品は、門の中に収められている随神像、矢大神の傍らに設置されている。鮮やかな色彩で蘇った神像を崇めるように寄り添う猫の姿に、島の人々の信仰心が重なって見えてくるようだ。 |
![]() 八幡さんへの抜け道/上原三千代 撮影:渡邉修 直島を散策していると、よく猫と出くわすからだろうか、本作は“直島”そのものの雰囲気が重なって何とも微笑ましく感じた。上記・隋神門から石段を上がり、直島八幡神社の拝殿内にもご覧の作品が展示されている。奥に見えるのはもう一つの作品「直島の局」。作者の上原三千代は、直島に生き続けている“主”のような存在をイメージして制作したという。 |
![]() フォーリング・カラーズ/千住博 撮影:渡邉修 直島で最も大きな家のひとつ、石橋家の母屋と、それにつづく内倉、庭から上がる外倉を使い、日本画家・千住博の作品を展示。建物の再建にも重点が置かれ、外観も見どころだが、中に展示された作品は本展覧会屈指の美しさで、写真は母屋に展示された作品。“滝”をイメージした15枚の連作の、シンプルな美に圧倒される。 |
![]() ザ・フォールズ/千住博 撮影:渡邉修 倉に展示された「ザ・フォールズ」は、上記同様“滝”をイメージした作品。高さ3.5メートル、幅15メートルの大作で、磨き上げられた床が作品を反射し、瑞瑞しい迫力で迫ってくる。空間全体で表現された空間に身を置くと、アートの“体感”を身をもって知ることになる。 |
宮ノ浦から北側、生協の辺り
宮ノ浦から北へ向かい、生協のスーパーマーケットがある一画にも、作品が点在している。港から徒歩で10~15分ほどの距離なので、バスも通っているがブラブラ歩きながら作品を発見するのが楽しいと思う。南側の海岸や本村エリアと一味違う、実にありふれた、どこにでもある日常的な直島の風景が、返って新鮮に感じたりもした。
![]() 魚島潮坂蛸峠内観/三宅信太郎 撮影:渡邉修 空き家となった床屋。お店だった場所には約350匹もの蛸のぬいぐるみがひしめき、奥の住居部分では、巨大な蛸が野球中継を聞きながらくつろいでいた。“アート”と云うよりは、自ら蛸の着ぐるみをまといパフォーマンスを披露した作者・三宅信太郎の“芸人魂”を強く感じた。「アートな笑いは蛸に極めり!」といったところか? |
![]() ピンホール 直島/宮本隆司 撮影:渡邉修 <元卓球場の建物の中に展示されていたのは、ピンホールカメラが捉えた幻想的な瀬戸内の光と海と風景。宮本隆司の写真作品「ピンホール直島」である。会場の前の駐車スペースは向かいの生協スーパーの駐車場にもなっていて、お客さんは車を乗り付けると作品を見るでもなく生協へと入っていく。その光景が、直島とアートの関わりを物語っているようでとても印象に残った。 |
その他、見きれなかったプロジェクト
「NAOSHIMA STANDARD2」は、単なる作品展示の枠を遥かに超えたアート・プロジェクトで、今回2日間の取材期間で残念ながら見られなかった2つのプロジェクトを、併せて紹介する。アーティスト、ベネッセアートサイト直島のスタッフ、ボランティア、そして島に住む人々が一体となって作り上げた、このイベントの象徴的プロジェクト「コメプロジェクト」と、本島から船で渡る小さな島の「向島プロジェクト」である。
![]() 向島プロジェクト/川俣正 撮影:渡邉修 本村港から数十メートルの海を隔てた向島(むかいじま)は8世帯18人が暮らす小さな島。ここに作家・川俣正が滞在し、海と島をテーマにた作品作りが進められている。昨年、川俣は住民票を向島に移したことで、向島は40年ぶりに人口が増加したという。現在は、二級船舶免許の取得、船の制作準備、模型制作などに取り掛かっており、今後の展開が大いに注目される。 |
![]() コメプロジェクト 撮影:渡邉修 アーティストや島の人々が参加した「コメプロジェクト」。直島では数十年間行われなかった稲作を再開した画期的なプロジェクトとなった。島に住む人々とともに足元の土地というものを改めて考える機会であり、島の風景そのものを再生するという「NAOSHIMA STANDARD2」のコンセプトを具現化した“作品”である。 |
「地中美術館」
建物は地中にあり外観がほとんど見えない、文字通り“地中”の美術館。安藤忠雄の設計による得意な建物は、一見、塹壕やトーチカを想起させるが、シャープなラインは荘厳で、永久設置されているクロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルらの名品を、一層引き立てている。
地中にいる閉塞感はなく、逆に作品に集中させてくれる脆弱な雰囲気は他に味わったことがない、「地中美術館」の特徴だと思う。

地中美術館の外観
地中美術館
所在地:〒761-3110 香川県香川郡直島町3449-1
電話:087-892-3755
開館時間:10:00~18:00(3月1日~9月30日)
10:00~18:00(10月1日~2月末日)
※入館は閉館時間の1時間前まで
鑑賞料:一般2,000円、15歳以下無料、年間パスポート10,000円
アクセス:町営バス「地中美術館」下車(宮ノ浦港より約20分)
詳しくはコチラ(ホームページまで)

~空っぽになって、身も心も自然とアートにゆだねよう!
「さあ見るぞ!」と気合を入れて作品に対峙するのではなく、チャリンコ(自転車)でゆるゆる走っていると摩訶不思議なものを目の端が捉えます。「ありゃ一体何だ?」と、ハンドルをその方に向け、近づくにつれて物体あるいは建物の全貌が明らかになっていきます。そんな風に緩んだ自分の気持ちに気づいた時、直島の素晴らしさが「なるほど」と分かった気がしました。
都会のハコ(美術館)の中で見ている時の、邪念にも似た感覚がなくなってしまいます。日常生活と地続きの美術館では、作品に集中しているようで、余計な思念に囚われていることが、省かれて初めて気がつくような、清々しい気持ち。
無駄のない、空っぽで無防備な心で作品を見る楽しさは、作品が放つエネルギーだけでなく、“島”というロケーションや瀬戸内海の穏やかな波など、さまざまな要素が重なって初めて生まれる感覚だと思います。
島という隔離された空間や自然によって変化する気持ち。それも計算にいれて、直島をアートの楽園にしたのだとしたら、その発想に拍手を贈ります。他の美術館では絶対ありえない感覚は、自分の身をもって体験してほしいと思います。
直島を訪れた人は「いいよぉ~直島は!」と口を揃えていいます。「何がそんなにいいの?」と聴かないで、その答えは直島でそれぞれ見つけてください。
TEXT by Sakae Ishikawa
※直島のリポートはまだまだ続きます! 最終回は、これまで2回で報告しきれなかったことや直島旅行のアドバイスなどをお伝えします!


















