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 内覧会レポート!森美術館「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」

森美術館「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」2008年4月24日、英国・現代美術の祭典「ターナー賞の歩み展」内覧会に行ってきました!
(今日も曇り、時々小雨…。)
現代美術に馴染みの無い方は、???という感じでしょうが、まあ、そういわずに、新たなる価値観の世界へ、しばしお付き合いくださいませ♪

会期:2008年4月25日(金)~7月13日(日)



森美術館館長:南條史生氏、テート館長:ニコラス・セロータ氏、ブリティッシュ・カウンシル美術部門ディレクター:アンドレア・ローズ氏内覧会プレスツアーの前に、本展の記者会見がありました。
左から、森美術館館長:南條史生氏、テート館長:ニコラス・セロータ氏、ブリティッシュ・カウンシル美術部門ディレクター:アンドレア・ローズ氏。
セロータ館長によると、1980年代以前、英国における現代美術の人気はとても低かったそう。それから、いくつかの転換期を経て、現在、テートモダンには年間500万人を超える来館者があるそうです。
現代美術にスポットがようやく当たった背景には、1:ターナー賞候補者には50才以下の人を該当させる、2:TV局をスポンサーに付けた。(受賞式の様子なども放映)、3:YBC(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)と呼ばれる、新世代アーティストが続々登場!などの現代美術史における大きな変化があったのです。

ターナー賞設立の由来となった、ターナーの作品が一点展示 審査員の名前などがまとまって見られます
左:会場入ってすぐ、ターナー賞設立の由来となった、ターナーの作品が一点展示されています。
ターナーの遺言(若いアーティストを育てよう!)を継いで、1984年、この賞が設立されたのです。
右:各展示室は10年ごとに分かれており、入口にその年の候補者各4人や、審査員の名前などがまとまって見られます。
また、本展は、各受賞者の受賞当時の作品を展示しています!

トニー・クラッグの「テリス・ノヴァリス」 1989年 リチャード・ロング「スイス花崗岩の環」 
1980年代
最初の展示室は、ターナー賞設立初期の頃の作品。
左:1988年 トニー・クラッグの「テリス・ノヴァリス」が眼に飛び込んできます。
巨大な天体望遠鏡?に、爬虫類のようなごつい脚が生えています。
右:1989年 リチャード・ロング「スイス花崗岩の環」。

1984年 初代受賞者マルコム・モーリー「アメリカ人女性と文明発祥の地」 トニー・クラッグ「ウェデイング」
左:1984年 初代受賞者マルコム・モーリー「アメリカ人女性と文明発祥の地」という絵画。
右:再びトニー・クラッグ「ウェデイング」。プラスチックの生活用品、おそらく使い捨てであろう素材で作った彫刻。
こういうリサイクル感覚は、当時目新しかったのでしょうね。ちなみに、左(白)は彼の背の高いドイツ人の奥さんで、右(緑)は作家自身。身長差も、忠実に再現!?(かわいらしい!)

1986年 ギルバート&ジョージ「デス・アフター・ライフ」 黄色のスーツの二人がギルバート&ジョージご本人
左:出ました!1986年 ギルバート&ジョージ「デス・アフター・ライフ」。横幅なんと11メートル!巨大です。写真に着色。社会、世相を色濃く反映した作品を制作しています。本作は、80年代のイギリスにおいて、深刻な若者の失業問題があり、鬱屈した若者の心情を表しています。
右:画面中央を一部拡大。黄色のスーツの二人がギルバート&ジョージご本人。ロンドンのセント・マーティンズで知り合って以来、二人は制作はもちろん、公私におけるパートナーなのです。

1996年 ダグラス・ゴードン「正当化された罪人の告白」 ジリアン・ウェアリング「60分間の沈黙」
1990年代
左:1996年 ダグラス・ゴードン「正当化された罪人の告白」。既存の映像作品を使って作品をつくっています。本作は映画『ジキル氏とハイド氏』から。
右:ジリアン・ウェアリング「60分間の沈黙」。たくさんの警察官が、60分間じっとしている映像作品です。写真じゃないですよ!よく見ていると、たま~に動きます。さらによく見ていると、中でもよく動く人を発見します。(笑)そして、なんと60分に一回、「わぁ~!」っと歓声が上がります。(驚)!沈黙の60分を終えた瞬間の皆さんの歓喜?の声なのです。私はたまたま運よく、聞くことができました!

1995年 デミアン・ハースト「母と子、分断されて」 1995年 デミアン・ハースト「母と子、分断されて」 1995年 デミアン・ハースト「母と子、分断されて」
1995年 デミアン・ハースト「母と子、分断されて」の登場です。現代美術館に一大センセーションを巻き起こした、この作品は、本物の牛の親子を真っ二つに分断し、ホルマリン漬けにしています。これが科学室にあれば単なる標本ですが、美術館にあることでアート作品となるのです。美術作品のおかれる状況に新しい解釈を加えることも現代美術の面白さであり、難解なところでもあるのです。
また、母牛の方は、断面の隙間に入ることが出来ます。怖いもの見たさでご興味のある方はぜひ!?

1993年 レイチェル・ホワイトリード「ハウス」「無題(床)」。 1993年 レイチェル・ホワイトリード「ハウス」「無題(床)」。 1993年 レイチェル・ホワイトリード「ハウス」「無題(床)」。
1993年 レイチェル・ホワイトリード「ハウス」「無題(床)」。初の女性受賞者です。
イギリスの古典的な家の内部にコンクリートを流し込み、固まってから外壁を取り除いた彫刻作品。通常アート作品があろうはずも無い場所に突如現れた現代美術作品に、住民たちは賛否両論だったのだとか!

1998年 クリス・オフィリ「ノー・ウーマン・ノークライ」。 1998年 クリス・オフィリ「ノー・ウーマン・ノークライ」。
1998年 クリス・オフィリ「ノー・ウーマン・ノークライ」。初の黒人受賞者です。
「ノー・ウーマン・ノークライ」はボブ・マーレィの名曲ですね♪
ナイジェリア移民の二世としてイギリスで育ったオフィリはルーツである黒人文化へのステレオタイプにアートで立ち向かいます。
女性の涙の中には、白人に殺された黒人青年(実際にあった事件)の写真が張り込められています。

1997年「二重のキャプテン・シットと黒人スターの伝説」を支えるもの 制作中のオフィリ
左:なんと作品を下で支えるのは本物の象のフン。(加工してあるので臭いません!念のため。)
このフンは、「ノー・ウーマン・ノークライ」のお隣に展示してある、1997年「二重のキャプテン・シットと黒人スターの伝説」を支えるもの。画面の中にも張り込まれています。ペンダントヘッドの部分など!
右:制作中のオフィリ。

2001年 マーティン・クリード「作品277:ライトが点いたり消えたり」 2001年 マーティン・クリード「作品277:ライトが点いたり消えたり」
2000年代
2001年 マーティン・クリード「作品277:ライトが点いたり消えたり」
物理的なものが何一つ無い展示空間の天井の照明が5秒おきに点いたり消えたりする作品。
本展中、最も難解な作品かもしれません。
「美術館に行けば、何か見られるんでしょ?」という既成概念をさらりとかわされてしまいます。

2003年 グレイソン・ペリーの作品群 授賞式では、そのインパクト且つ信念ある姿で登場 2000年 ウォルフガング・ティルマンスの写真インスタレーション
左:2003年 グレイソン・ペリーの作品群。古典的な壺の形に社会を痛烈に風刺した絵付けをする作家です。
中:彼自身、女装、特に少女の格好をすることを好み(しかし異性愛者。ご家族もおられます。)、授賞式では、そのインパクト且つ信念ある姿で登場し、メディアを席巻しました。
右:2000年 ウォルフガング・ティルマンスの写真インスタレーション(空間を使ってみせるアート)。
何気ない日常の刹那を詩的に切り取る作家です。ドイツ出身。

2007年 マーク・ウォリンジャー「スリーパー」。
2007年 マーク・ウォリンジャー「スリーパー」。本展で一番新しい受賞作品。
熊の着ぐるみを着た作家がベルリン某所でパフォーマンス(といってもうろうろしたり、寝転んだり)する映像作品。熊はベルリン市の象徴で、ガラス張りの場所で外から人に一部始終を見られてしまうことが、旧東ドイツ・ベルリンにおいて、常に誰から監視されていたという状況を風刺したもの。

ここまで、ほんの一部ですが、レポートお送りいたしました。
以前からターナー賞には関心がありましたが、日本で一堂に観られるなんて感激です。すべてイギリス発の作品たちですが、概ね、この時代の現代美術を牽引してきた歴史に残る作品たちであるといっていいでしょう。粋のいい現代美術に触れるまたとない機会、みなさんお見逃し無く!

さらに…!
同時開催のサスキア・オルドウォーバース展の模様です。若手作家を中心に紹介していくMAMプロジェクトの7回目。オランダの作家(1971年生まれ)です。
プラシーボ(偽薬)2002年 プラシーボ(偽薬)2002年 キロワット・ダイナスティー2000年
日本で初めての彼女の個展です。手作りのセットを美しく詩的なストーリーとともに撮影した映像作品。ものすごく手の込んだ作業なため、ぜんぶで9作品しかありません。今回はその中から2作品が観られます。どこだか特定できない不思議空間が出現します。美しくも不穏な液体世界です。
左、中:プラシーボ(偽薬)2002年 
右:キロワット・ダイナスティー2000年

おまけ
白い霧の中に浮かぶ東京タワー。白い霧の中に浮かぶ東京タワー。
森美術館52階からの眺めです。
どうして内覧会の日はいつも雨なんだろう。

[ text by Art inn編集部]

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