トップ展覧会レポートバックナンバー2008年5月>内覧会レポート!東京都写真美術館「森山大道展 I. レトロスペクティヴ1965-2005/II. ハワイ」
 内覧会レポート!東京都写真美術館「森山大道展 I. レトロスペクティヴ1965-2005/II. ハワイ」

東京都写真美術館「森山大道展 I. レトロスペクティヴ1965-2005/II. ハワイ」2008年5月12日、東京都写真美術館で開催された、内覧会に行ってきました!

「アレ・ブレ・ボケ」と称される、非常に粒子の粗いモノクロ写真を撮る写真家、森山大道氏。その荒々しくも生々しいモノクロ世界の中心に、今日は一歩近づけるかもしれません。

会期:2008年5月13日(火)~6月29日(日)



写真家 森山大道氏、右は担当学芸員の岡部さん 写真家 森山大道氏、右は担当学芸員の岡部さん
左が、写真家 森山大道氏、右は担当学芸員の岡部さん。
今日は、森山大道氏自らによる、作品解説が聞けるということで、こんな機会ってあるかなと、心躍らせながらの参加でした!
最初は、3F展示室、”I. レトロスペクティヴ1965-2005”からスタートです。

1.1960年代 森山大道の登場
大道氏の写真家としてスタートしたころの作品が展示されています。
並び方こそ整然としていますが、一点一点よく観ていくと、「アングラ」や「エログロ」という言葉をつい想起してしまうような世界が広がっています。

本人曰く、「アレ・ブレ・ボケ」の全盛期で、”うっとうしい”時代であったと。当時の時代もうっとうしいかったのでしょうが、大道氏自身もうっとうしく、且つお金が無い時代であったようです。
そんな中、街を100メートル歩くと、フィルムが一本無くなるくらい、よく撮った時期でもあったと。

また、この頃、多くの著名人(細江英江氏、寺山修司氏、横尾忠則氏…。)に出合った時期でもありました。

当時連載していた雑誌『アサヒグラフ』なども展示 名作『にっぽん劇場』のひとコマ
当時連載していた雑誌『アサヒグラフ』なども展示。右は名作『にっぽん劇場』のひとコマ。


2.1968-1972年 プロヴォーグの時代 
2.1968-1972年 プロヴォーグの時代
中平卓馬、多木浩二らが中心となった伝説の同人誌『プロヴォーグ』。
「写真が言葉を挑発する」といった根源的な問題提起をしたのです。これに大道氏も参加。

当時大道氏はJ.ケルアックの『路上』に触発され、「国道シリーズ」という国道を走る車から、銃弾の様に激写する作品を『カメラ毎日』に連載。ハイコントラストで粗い作風を逆手にとって、写真界に対し挑戦的であった時代です。

1972年『写真よさようなら』の出版を境に
そうこうするうち、1972年『写真よさようなら』の出版を境に、長いスランプの時代に突入するのです。
本人曰く、息切れをしたと。自分と写真の感覚が分からなくなり、肉離れを起こしたようであったと。
撮った写真の中に自分が見えなくなってしまったのです。

3.1970年代 何かへの旅"" 
3.1970年代 何かへの旅
スランプ中、大道氏の心に響いたのが、明治の北海道開拓使たちの写真でした。
それは、大道氏が写真の原点に立ち戻ろうとした、世界最初の写真といわれる、ニセフォール・ニエプスの写真とともに、彼にある啓示を与えます。
そして大道氏は、北海道へと旅立つのです。まだしかし本調子ではありませんでした。

4.1980年代 光と影
1981年『写真時代』の創刊がきっかけが長いスランプからの脱出になります。
神田の中古屋で、一目ぼれし購入した、古い一眼レフで自宅付近を取り始めます。
この『写真時代』にて、コンスタントに日常に写真を撮る感覚が戻っていくのです。

5.1990年代 Daido hysteric/2000年代 新宿、ブエノスアイレス、ハワイ
5.1990年代 Daido hysteric/2000年代 新宿、ブエノスアイレス、ハワイ
90年代に入り、ファッションメーカー「ヒステリックグラマー」発行の『Daido hysteric』で新たな展開が。パワフルな都市を記録し続けます。そして写真は、より物質的なものを捉えるようになっていきます。
また90年代以降、写真サイズが大きくなっているのは、展覧会を想定したから。
それまでは雑誌などに投稿する目的で撮っていたのだそう。
大道氏は、「写真集」にすることを目的として、基本的に写真を撮るのだそうです。

2005年発行『ブエノスアイレス』の作品 
2005年発行『ブエノスアイレス』の作品。ブエノスアイレスという街は、大道氏にとって、パワフルでエロティックな街なのだとか。

自身の作品の前で、語る大道氏  
自身の作品の前で、語る大道氏。当時の心情、状況が手に取るように、丁寧に話されます。
決して饒舌では無いのですが!

2F展示室、ハワイの作品が並びます 3Fは担当学芸員の岡部さんキュレーションですが、<br />
2Fは大道氏自らのキュレーションです。<br />
 
2F展示室、ハワイの作品が並びます。3Fは担当学芸員の岡部さんキュレーションですが、
2Fは大道氏自らのキュレーションです。
「スカッとしてる!」というのが、私の感想です。3Fの過去の作品群は、私には少なからず重苦しいものでしたが、何か突き抜けたような爽快さがあります。

一組のカラー作品がありました!
一組のカラー作品がありました!なぜ??今までカラーの作品なんて無かったのに!
この問いの答えは後ほど。

ハワイでの撮影の模様 ハワイでの撮影の模様 ハワイでの撮影の模様 ハワイでの撮影の模様 ハワイでの撮影の模様
2F展示室奥、ハワイでの撮影の模様が映像として流れています。
こうやって撮っていくんですね~。 

左から、写美 事業企画課長の 笠原さん、真ん中が大道氏、右が岡部さん 
記者会見にて。
一番左の写真、左から、写美 事業企画課長の 笠原さん、真ん中が大道氏、右が岡部さん。
展示を一通り見終えて、質疑応答。
ここぞとばかりに、私は大道氏に2つの質問をさせていただきました。

Q1.「なぜ、モノクロで写真を撮るのですか?」
Q2.「ハワイの写真は、これまでと打って変わって、とてもスカッとして気持ちがいいですね!一点だけ、カラーの組写真がありますが、それはなぜですか?」

1.の回答。
大道氏が写真を撮り始めた頃、カラー写真はすでにあったのですが、写真への導入として、「モノクロ」というものに確かな思い込みがあったからのだとか。モノクロは体質なのだそうです。
また、モノクロのトーンをエロティックに感じるのだそうです。

続いて2.の回答。
本展の展示構成模型を見ながら、展示室最後の映像部屋の入口であるこの場所に、遊びでカラー作品を導入として置いたらどうかと、ごくごく楽な気持ちで配置したそうです。
しかも撮影に使ったのは、そこらの売店(in ハワイ)で購入した「写○ンです」なのだそう!びっくり!
なんてフリーなんだ、健やか~。

ロビーにTV局制作のドキュメンタリー映像
ロビーにTV局制作のドキュメンタリー映像も流れていますよ。

まったく写真をきれいにまとめようとしていない森山大道氏。
私が彼の作品を知ってから、10年経ちますが、「アレ・ブレ・ボケ」の表現は変わらないとしても、
近作は、見ていて楽になった気がしました。
ひところ、私には森山大道写真がどうにも重くて、直視できない時代がありましたが、最後のカラー作品など、未だ持って新しいことに踏み出す作家の心意気に触れ、大満足の展覧会でした。
また、「若い世代の人たちにも、作品を観てもらえることはとてもうれしい!」と大道氏。
みなさんもぜひ!

[ text by Art inn編集部]
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

Art inn注目の展覧会情報:東京都写真美術館「森山大道展 I. レトロスペクティヴ1965-2005/II. ハワイ」はコチラ
Art inn美術館一覧:東京都写真美術館コチラ