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 内覧会レポート!国立新美術館「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」

国立新美術館「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」2008年7月1日、国立新美術館で開催された、内覧会の模様です。

「European Still-Life Painting」と題された本展。17世紀前後、オランダ、フランドル地方から発展していった傑出の静物画の数々。ウィーン美術史美術館所蔵の、日本ではあまり観ることのできない貴重な作品をご堪能頂けます!

会期:2008年7月2日(水)~9月15日(月・祝)



ウィーン美術史美術館の内観写真 第1章:市場・台所・虚栄の静物
左: 会場入ってすぐ、ウィーン美術史美術館の内観写真がお出迎え。重厚且つエレガントな趣は、さぞかし歴史的にも価値ある建物なのでしょう。気持ちは一気に、ウィーンへとトリップします。
右: 第1章:市場・台所・虚栄の静物。
自然の豊かさからもたらされた人々の繁栄、この恵み多き情景を描こうとするところから、風俗の描写が始まったそうです。この章では、都市の反映を象徴する、あらゆる市場を描いた活気溢れる作品郡が眼を引きます。納屋での動物の解体の様子など、おっかなびっくり?と観察することができます。

アントニオ・デ・ペレダ《静物:虚栄(ヴァニタス)》1634年頃 第2章:狩猟・果実・豪華な品々・花の静物
左: 写真左端の作品は、アントニオ・デ・ペレダ《静物:虚栄(ヴァニタス)》1634年頃。 (※写真は、Art inn注目の展覧会情報をご参照ください。)
静物画にはたくさんの含まれた意味があるのだそうです。この作品にも数多くの意味が含まれています。重なり合ったドクロ、火の消えたロウソク、落ちきった砂時計、カール五世の姿が刻まれたカメオ、地球儀、コイン、若い女性たちの絵、トランプ、戦を想起させる銃、テーブルにラテン語で刻まれた「NILOMNE(すべては空)」という文字。それらはすべて儚いもの、虚栄を象徴しています。
右: ここから第2章:狩猟・果実・豪華な品々・花の静物。
狩りの道具や、この手で実際に触れそうなカーテンなど、騙し絵要素のある絵画も観られます。写真の作品は、ヨーハネス・レーマンス周辺の画家作『狩猟道具』1660年頃。トロンプ=ルイユ(騙し絵:仏語)の条件は、実物大であること。暗い部屋の暗い色の壁に掛けると、効果はテキメン!?なようです。

コルネーリス・デ・ヘーム《静物:朝食卓》1660-69年頃 映像コーナー
左: 写真右手の作品、コルネーリス・デ・ヘーム《静物:朝食卓》1660-69年頃。 (※写真は、Art inn注目の展覧会情報をご参照ください。)
素晴らしい、描写テクニックです。何より質感の描き分けが素晴らしい!金属の照り返し、みずみずしいレモンや葡萄、さくらんぼ、メロンなどのフルーツ。そして何より、牡蠣のふっくらとジューシーでおいしそうなこと!見事です。レモン、牡蠣、胡椒の組み合わせは、18世紀まで広く流布していた大衆医学書の中でも推奨された食べ合わせなのだそう。
右: 映像コーナーにて。展示作品を適度なスピードで観られます。

上・右に同じく映像コーナー 写真内の長身の外国人男性は、ウィーン美術史美術館副館長・絵画部長のカール・シュッツ氏
左: 上・右に同じく映像コーナーより。拡大図も観られます。
右: 写真内の長身の外国人男性は、ウィーン美術史美術館副館長・絵画部長のカール・シュッツ氏。内覧会中、シュッツ氏による、ミニ解説会が実施されました。生き生きと澄んだ眼で絵画の魅力を語る様子は、ほんとに美術がお好きなんだな~と。
写真右奥の花の絵は、ヤン・ブリューゲル(父)《青い花瓶の花束》1608年頃。「花のブリューゲルと」と愛称された作家です。そして、言わずと知れた絵画の名門、ブリューゲル一族です。季節を問わず、数え切れないほどの多くの種類の花が、東洋的な青い花瓶に生けられています。ヤン・ブリューゲル(父)は、実際に花を観、スケッチしたものを組み合わせて絵画に仕上げたのだそうです。

続いて、第3章:宗教・季節・自然と静物。
季節の表現としての「四季図」や、暦として一年の12ヶ月をそれぞれに表現した「月歴図」など、季節と万物の根源を表す土・空気・火・水をたたえる様子が、静物とともに表現されていきます。

第4章:風俗・肖像と静物 ティベリオ・ティネッリに帰属《貴婦人の肖像》1620/25年頃
左: そしてラスト、第4章:風俗・肖像と静物。正面の作品は、ペーテル・パウル・ルーベンス《チモーネとエフィジェニア》1617年頃。
ボッカッチョ『デカメロン』の5日目の最初の話をもとに描かれた作品。またこの作品は、ヤン・ウィルデンス、フランス・スネイデルスとの共同制作です。画面右下のフルーツや緑の顔の猿のは、スネイデルスの担当。背景はウィルデンスの担当。よく観るとタッチの違いが分かります。
右: 写真左、ティベリオ・ティネッリに帰属《貴婦人の肖像》1620/25年頃。長いドレスの柄の描写が見事です。

ディエゴ・ベラスケス《薔薇色の衣裳のマルガリータ王女》1653-54年頃本展の目玉、ディエゴ・ベラスケス《薔薇色の衣裳のマルガリータ王女》1653-54年頃。 (※写真は、Art inn注目の展覧会情報をご参照ください。)
薔薇色の衣装に、これまた薔薇色の頬をしたマルガリータ王女、わずか3歳の姿。のちに政略結婚し、若くしてこの世を去った小さな王女の気品に満ち溢れる作品。ベラスケスはこの王女の肖像画を全部で5つ描いており、この作品は中でも最も早い時期のもの。

 「Still-Life」とは、静物画を意味するそうです。 Stillは、”静かで動かないもの”といった意味。Lifeは、”生きる”という意味もありますが、”自然や現実に近いもの”、といった意味なのだそうです。また、ある地域、時代では、全く逆の「死」を意味する言葉を組み合わせて、静物画と表現することもあるのだそうです。

繰り返しになりますが、本展を通して何より感嘆すべきは、細かな質感の描き分けの表現力の素晴らしさです。
そして、これら17世紀前後に発達した静物画は、やがて19世紀印象派のモネやマネたちにも繋がっていくのです。

◆おまけ
おまけ 
国立新から六本木駅に向かう帰り道は、あじさい通り。この日、ちょっと暑かったので、あじさいも日焼けしてしまいそうでした!?雨のほうがやはり似合う花ですね♪それにつけても、あじさいの色はいいな~。

[ text by Art inn編集部] 
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