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 内覧会レポート!原美術館「米田知子展―終わりは始まり」

 2008年9月11日、原美術館で開催された、内覧会の模様です。

 米田さんは、現在、ロンドンを拠点に活動されている写真家です。
シリアスなドキュメンタリータッチの作品を撮り続けており、様々なシリーズを並行してすすめています。

会期:2008年9月12日(金)~11月30日(日)



 
初期の頃の作品。めくれ上がった壁紙や、ヒーターの熱の痕など、無名の住人たちの歴史が写し出されます。かつての住人たちのポートレートです。(写真: 「トポグラフィカル・アナロジー」から)

 
今も制作し続けているシリーズの主なものとして、その昔、戦争や歴史的事件などが起こった場所の現在の様子を撮るシリーズや、偉人のメガネ越しに、その人に関わりのある、これまた偉人の書物や手紙を覗くシリーズなどがあります。

前者は、一見何気ない日常風景をとらえた写真に過ぎませんが、その実、”北アイルランド紛争の激戦地”や”韓国の地雷原””ノルマンディー上陸作戦のビーチ”の現在など、タイトルを見て初めて、ほのぼのとした現在の風景とのギャップにギョッとさせられます。
(写真左: 「雪解けのあとに」より  写真右: 「ワン・プラス・ワン」から)

 
そして後者は、レンズ越しに、まるで自分が偉人その人になって覗いているような気分になれます。
写真左右: 「見えるものと見えないもののあいだ」から。
写真右: 「谷崎潤一郎の眼鏡―松子夫人への手紙を見る」1999年
谷崎潤一郎のメガネ越しに、谷崎氏が松子夫人宛に書いた手紙を見る。「私をいやしいものだと思わないでください。」と達筆な文字の一部分が。

 
また本展では、未発表の新作も展示されており、これがまたキナ臭い?いや失礼、ミステリアスな香りのする逸品。
スパイ・ゾルゲの国際諜報団密会場所の現在を、古~いカメラで撮影した、とても小さなサイズの作品シリーズ。

上野公園(パンダの檻)や平安神宮、帝国ホテル、都美館や神戸港、六甲山、はたまた中国の瀋陽まで、モノクロームの写真が妙に艶かしくてリアル。スパイをスパイしているみたい!
(ちなみに、ボケ、キズは、カメラの古さによるもので加工は一切無し。)
(写真: 「パラレル・ライフ―ゾルゲを中心とする国際諜報団密会場所」から)


米田さんは、どうやら20世紀の検証をしている模様。
ジャーナリスティックな視点ではありますが、ご本人は造形的な興味に基づいて撮影しており、あくまでアーティストとして表現活動を行っています。
写真は断片的に撮られたものだけど、歴史は繋がっている。それらは途切れること無く、様々な因果関係の連続によって、この世界は回っているのですね。そう、「終わりは始まり」なのです。

p.s.米田さんは明るい!ご本人を目の前にして、作品とのギャップがいい意味で拍子抜けというか、微笑ましい!

おまけ。

原美術館の表門から館入口までの歩道がライトアップされていて、とてもキレイ♪
品川駅までのちょっと遠い帰り道、暮れかけた秋空を見上げてたら、これまたキレイ♪♪
ふいにキレイなものを見かけると、妙に嬉しい。今日はもうすぐ終わって、また明日が始まるのです。

[ text by Art inn編集部] 


   

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