”インドの今”を表現している作家、27組が出揃う、日本においてかつて無い規模で展開する本展。約1年半の、現地訪問を含む調査期間を経て、選定された作家の作品群から、今のインド、これらのインドを探る旅が始まります。
◎会期:2008年11月22日(土)~2009年3月15日(日)
本展タイトルにもなっている”チャロー”とは、”行こうよ!”の意味。
気軽な気持ちで、友だちでも誘うように、インド現代美術の世界へLet's GO!
以下、いくつか掻い摘んでご紹介。
会場に入ってすぐ眼に飛び込んでくるのが、床にドデ~ンと横たわる大きな象。バールティ・ケール《その皮膚は己の言語ではない言葉を語る》
近寄ってみると、表面に何やらびっしりとオタマジャクシのような模様が。
その正体は、…精子のカタチをしたビンディー。
ビンディーとは、既婚のヒンドゥー教徒の女性が額に施す装飾ですが、現在はファッション性を強め、今や様々なカタチのシールが出回っているとか…。
伝統ある物の元来持つ意味と現状。象は立ち上がろうとしているのか寝ようとしているのか。インドはこれからどこへ行くのか。いくつもの暗喩がありそうな作品。

左手に見えるのは、ジジ・スカリアの絵画作品。ここ数年続くデリーの都市問題、過密気味な住居や違法建築、渋滞などへの提案を込めています。
右手の白い立体作品は、クリシュナラージ・チョナト《小舟》。
インドで台頭する富裕層の、経済的勝利の証であるジャグジーをボートに見立て、その上に環境問題の負の副産物を山と積み重ねています。
その片隅にとまった、一匹の黒々とした巨大な蚊は、相変わらず湿度の高いインドを表すかのよう。
ヴィヴァン・スンダラムの作品。
インドには、不浄とされる、清掃を生業とする人々がいます。彼らを支援するNPOの協力を得て制作した本作。デリーにあふれた廃材で出来た、都市のジオラマ。

シルパ・グプタ無題《シャドウ #3》
暗い通路に入ると、一方の壁に、自分の影が投影されます。しばらく、その影を見ながらモゾモゾと動いていると、上方から糸のようなものが降りてきて、ピタッと自分に繋がったかと思うと、矢継ぎ早に様々なものが落っこちて来て、体にくっつきます。不条理なしがらみで、自由の利かなくなった操り人形になった気分!?
同じくグプタの作品《運命と密会の約束(制憲議会演説》が後半に出てきます。一本のスタンドマイクから流れる、インド独立前夜のネルーの演説を、彼女がアカペラで歌う歌声が美しい。

左: ジティッシュ・カッラト《格差の死》
巨大な1ルピー硬貨。その後ろの、テキストボードにはこんなメッセージが。
1ルピーがあれば、インド中どこへでも電話ができる、しかし、たった1ルピーの給食費が払えないために、自殺した少女もいる厳しい現実。
右: トゥクラール&タグラの作品。
成功を夢見るインドの若者を象徴する、POPな部屋が登場。アメリカ製チョコレートシロップの容器に描かれた若者の肖像や、成功の証である豪華な印洋折衷な住宅画、そして、目隠しした若者の剥製風は、見えない未来への不安でしょうか。

トゥシャール・ジョーグの作品。本展中で一番笑えたのがこちらの作品!
左: ”ユニゼル”という架空の団体を想定し、インドの都市の様々な側面に体当たりしています。左手の人物が作家さん。インドの満員電車での有効な動き方シリーズや、架空の運河計画(富裕層が住む都市のど真ん中に運河を建設?)を立ち退き予定とされる家々に、いかにも公文書ふうの手紙を送り、返送されてきた、各々の反応が書かれた手紙を展示…。
右: インドの街中に溢れる違法の屋台群。警察の目を逃れるために、ささっと郵便ポストに早変わりするお茶目な屋台を開発って…(汗)。

ラクス・メディア・コレクティヴというグループの作品。インドの見識者たちに、これからのインドを予想してもらい、寄せ集めたもの。意見が書かれているのは、氷河のような形の立体。
こうしたご意見も、ほんの氷山の一角に過ぎないのか。
一見お気楽なそう作品でも、公の問題に提起する作品が多かった本展。多種多様な皆それぞれの方法で、世の中を少しでも明るい方向に変えていきたい、という気持ちが伝わってきました。
美術を通して、今のインドの片鱗を感じることができるかもしれません。
◎おまけ
監視員の椅子に注目。監視員は展示作品を守るという役割から、各椅子が「守る」をテーマにした作品になっています。全部違うので、バリエーションを楽しんでみてくださいね♪
[ text by Art inn編集部]
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
●Art inn注目の展覧会情報:森美術館「チャロー!インディア:インド美術の新時代」展はコチラ
●Art inn美術館一覧:森美術館はコチラ

