日本が世界に誇るマンガの神様、手塚治虫氏の大展覧会。長年の大ファンの方も、これから読んでみようかなという方も、手塚氏が何を生涯追い求め、表現し続けたのか、創作の源泉に触れることの出来る貴重な機会となるでしょう。
◎会期:2009年4月18日(土)~6月21日(日)
以下、ざっと追っていきます♪
第1章 黎明
1928(昭和3年)、大阪府豊中市で生まれた手塚治虫氏の生い立ちから、マンガへの目覚めを辿ります。
↑昆虫標本 甲虫 1941(昭和16)年
子ども時代の自作の昆虫標本です。昆虫が大好きだった治少年は、「オサムシ」という甲虫の存在を知り、自らのペンネームを「治虫」とします。驚くべき画力で、緻密且つ丹念にしたためられた昆虫手帳も展示。研究熱心で凝り性な性格が伺えます。
また、小学校5、6年で描いたマンガも展示。実妹のお絵かきからヒントを得て生まれたキャラクター、ヒョウタンツギも初登場!
テーマ展示A 「鉄腕アトム」
十万馬力で正義の味方、子どもたちの絶大なるヒーローの登場です。手塚氏はここで、単なる科学礼讃ではなく、科学技術への過信が引き起こす様々な危険性について問題提起しています。
会場には、ラボで目を閉じ、横たわる等身大?のアトムも展示。今にも目をパッチリ開けて、起き出しそう!
第2章 革命
マンガ家デビューから赤本時代を経て、長編大河マンガ、少女マンガなど、現在のマンガ制作の基礎を作った流れを辿ります。
トキワ荘 天井板 1982(昭和57)年12月1日 (※初出品)
漫画家たちの伝説の聖地、トキワ荘の取り壊しが決まり、手塚氏は、同行した警視庁第5方面記者クラブの記者たちと、自分の住んでいた部屋の天井板を取り外し、自画像とリボンの騎士を描き、同クラブに寄贈したもの。今もクラブ内に飾られているのだとか!
画面左:『リボンの騎士』(少女クラブ版)直筆原稿 「リボンの騎士」第1巻 表紙絵 1954(昭和29)年12月20日発行
「リボンの騎士」などの作品は、少女漫画に本格的なストーリーを持たせた先駆けであったといわれています。宝塚ファンだった手塚氏の母上の影響も伺えます。また、少女漫画といえば、キラッキラのお目めですが、瞳の中に初めて”星”を入れたのは、手塚氏なのだそうです!
第3章 開拓
アニメーション制作に力を注いだ「虫プロ」時代の作品が登場。
ちなみに、このスタジオ名には、治虫の「虫」という以外に、「マンガの虫」、「アニメの虫」という意味が!国産初の本格テレビアニメシリーズ『鉄腕アトム』から、『ジャングル大帝』、実写とアニメの合成作品である『バンパイヤ』等のセル画、素材も展示。
第4章 円熟
1968(昭和43)年、マンガ制作のため、株式会社手塚プロダクション設立、そして、1973(昭和48)年の虫プロ倒産騒ぎの中、青年コミックの制作にも注力し始め、手塚治虫、第二の黄金期が始まります。
「COM」創刊号 1967(昭和42)年1月号
”まんがエリートのためのまんが専門誌”と銘打った月刊コミック・マガジン「COM」が、1967(昭和42)年創刊します。新人の登竜門的な雑誌を目指し、あだち充や大友克洋、奇才・諸星大二郎(第7回手塚賞入選(「生物都市」)、第4回手塚治虫文化賞マンガ大賞(『西遊妖猿伝』))ら、数多くの作家が誕生しました。
自宅作業机 (※初出品)
東京都東久留米市の自宅2階の仕事部屋にある作業机は、ごく普通のグレーの事務机で、意外と地味?です。没後20年経った今も、作家の息吹が感じられます。
テーマ展示B 「ブラック・ジャック」
『ブラック・ジャック』直筆原稿
「週刊少年チャンピオン」 1973(昭和48)年11月19日号-1983(昭和58)年10月14日号
写真は、1976年(昭和51)年3月10日増刊号 ジャンボポスター原画。
ご存知、『ブラック・ジャック』の登場です。1973(昭和48)年、青年コミック誌に連載を開始し、大変な人気を呼びます。
手塚氏自身も医師であり、「生命の尊厳」について、自問自答を繰り返した彼の哲学が語られます。
また、曽祖父・手塚良庵(りょうあん)氏も医師で、『陽だまりの樹』のモデルにもなりました。
本展では、手塚氏の医師免許や自宅の仕事机の中にあった聴診器等も展示。さらに、医大生時代の緻密にまとめられたノート類は、丁寧なイラスト入りで、アートピースさながらの美しさ!
テーマ展示C 「火の鳥」
映画『火の鳥』ポスター用直筆原稿 1978(昭和53)年8月19日公開
宇宙的な壮大なスケールで、人間の生と死をテーマに描かれた火の鳥。「人間とは何ですか?」という手塚氏の問いかけが聞こえてくるようです。
火の鳥とは、”鳥”そのものではなく、宇宙にある生命エネルギーが具現化した存在なのだそう!
第5章 再生
1989(平成元)年、2月9日。胃がんのため、享年60歳で、手塚治虫氏は他界します。
約15万枚という膨大なマンガ原稿に込められた手塚氏の精神は、後世の作家たちに脈々と受け継がれています。
このコーナーでは、マンガ家、浦澤直樹氏による、『PLUTO(プルートウ)』(アトム)のオリジナル原稿をはじめ、多くの手塚作品に影響を受けた作家たちの作品を展示しています。
私は昭和50年代前半生まれですが、手塚作品は、親しみある存在です。『リボンの騎士』、『ジャングル大帝』はテレビの再放送で、『ブラック・ジャック』、『アドルフに告ぐ』は高校時代にマンガ本で読みました。
世代も性別も超えて、これほどまでに愛される、普遍的で壮大なテーマを扱ったマンガ家は、本当に稀有な存在なのでしょう。
会場を出たところに、生前の手塚氏のインタヴュー映像が流れています。手塚氏は言います。私は「命」を描きたいのだと。戦争で、多くの悲惨な現場を目撃したがゆえ、生きていること、動いていることに、多大なる魅力、エロティシズムを感じるのだと言います。それは、幼い頃から愛してやまない小さな昆虫にしてもそうです。
ここに、偉大なるマンガ家手塚治虫の制作の根源が見えた展覧会でした!
※ちなみに音声ガイドは、手塚氏のご子息・手塚眞氏と鉄腕アトム(声優:清水マリさん)、ブラック・ジャック(声優:大塚明夫氏)の3名による楽しい内容となっています。
※また、ミュージアム・ショップでは、手塚マンガも多数販売中!これを機に、どっぷり読み返してみるのも良いでしょう。
※手塚の”塚”の字は、ブラウザで表示可能な文字にて代用しております。
[ text by Art inn編集部]
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