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 展覧会レポート!国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」

国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」   19世紀末フランス、「かつて誰も見たことのない」ものを生み出すことを終生のモットーとし、ジュエリーとガラスの分野で頂点を極めたルネ・ラリック(1860~1945)の全貌をご紹介する本展。展示会場面積、なんと2000平米の巨大空間におよそ400点余りを展示。芸術家として、また起業家として辣腕を振るった才人の情熱の宇宙に浸る贅沢なひと時です。


会期:2009年6月24日(水)~9月7日(月)

以下、気になった作品をピックアップ♪


↑ ハット・ピン《ケシ》1897年
 1897年、サロンで国家買い上げとなった、ラリックの出世作。細部まで見事に表現された精巧な作りは、確かな自然観察に裏打ちされた実力の証。白い花びらやめしべの根元部分には、薄っすらと透け感があり、これは省胎(しょうたい)七宝というエナメル技法の一種で、ステンドグラスのような効果を表現できます。細かい金線で縁取られたその表情は、技法の特性をよく理解した上でのデザインとも言えそうです。
 また、このケシは、ラリックが生涯繰り返し用いたモチーフで、当時、妻子有る身でありながら、苦悩の末結ばれた妻アリスのイメージと重なります。彼女はラリックにとって女神であり、さまざまな霊感を与えましたが、二人の子をもうけた後、1909年、若くしてこの世を去ります。

国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」  国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」
左)左:ネックレス《ベリー》1900~1905年頃、右奥:ブローチ《甲虫》1904~1906年頃、右手前:ドッグ・カラー《トラ》1905~1907年頃
右)左:デザイン画-ペンダント《二匹の魚》1905年頃、右:デザイン画-ネックレス《ベリー》1900~1905年頃

 1900年のパリ万博出品以降、ラリックはそれまでの色鮮やかな作風から一転、白を基調とし、ガラスの魅力を引き出すようなシンプルで透明感ある作風へ、そして、アール・ヌーヴォーの特徴である非対称性から離れ、古典的なシンメトリーへと変化していきます。
 そして、実物と合わせてデザイン画の展示があるのも、本展の大きな見所の一つ!

国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」
 1908年、コティ社から香水瓶の発注を機に、ラリックはガラス制作へと移行し、1920年代のアール・デコ時代には、フランスを代表する国際的な工芸ガラス・メーカーへと成長。ガラス時代のラリックは、一貫して透明の美を追求します。光がガラスを透過する時の輝きや、変化する表情の面白さ、造形の力強さが特徴です。

国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」
 さらなる本展の大きな見所として、全世界初公開、ラリックのスケッチ帳も登場。制作の舞台裏が伺えます!

国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」
  1925年のアール・デコ博覧会に出品された、高さ約15メートル、16段から成る巨大なガラス製野外噴水に設置された、16種類、128体のガラス製の女神像のうち、本展ではその一部を展示。それぞれの女神には、「ダフネ」「カリュプソ」「アリアドネ」「カリオペ」などの名前が付いています。
 また、装飾芸術の粋を集めたこの博覧会にて、ラリックは「ガラス部門」の責任者として参加しています。

国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」   国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」
 装いの変遷として、1903年~1927年の衣装が5点、展示されています。フリフリフリルの古典的なレセプション・ドレスから、軽くてプリーツの美しいフォルチュニィのドレス《デルフォス》、さらにシャネルのデイ・スーツまで、スタイルの変遷に伴い、ラリックのデザインも変化していく様がよく分かります。

国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」
左:カーマスコット《クリュセイス》1931年、右:カーマスコット《スピード》1929年
 1920~30年代にかけて、交通手段は飛躍的に発達し、スピードの時代が到来します。ラリックは自動車のボンネットを飾るカーマスコットを始め、ガラスによる新たな装飾製品の可能性に着目しました。
 乳白色のオパールの輝きに似たガラスが本展中よく登場しますが、これらはオパルセント・ガラスといい、反射光では青みに、透過光ではオレンジみを帯びて見えます。1920~30年代にラリックが再び人気を起こしました。

国立新美術館「生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」
 展示会場最後に、テーブルウェアのコーナーがあります。第一次大戦後、中産階級にも手の届く贅沢品として制作されたもので、大変な人気だったそう。そしてそれらのガラス・セットには、《トウキョウ》、《ニッポン》、《コウベ》など、日本に因んだ名前のものもあり、ラリックが日本からインスピレーションを受けたであろうことが嬉しい!

 今回のレポートでは全然書ききれないほど、たくさんの技法や素材、そして卓越したデザインの組み合わせにより生まれた名品の数々。それらの多くは、当時の富豪たちの生活を彩っていた為、庶民には縁遠い品々だったのでしょうが、現代の私たちは、美術館という空間において、この眼で直接観ることができるのです。本展は、生涯を「かつて誰も見たことのない」輝きと透明の美に費やしたラリックの魂に触れる良い機会となるでしょう。

[ text by Art inn編集部] 2009/6/25

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